2024年5月6日(月)、最初に訪れたのはSaint-Savin、サン=サヴァン=シュル=ガルタンプ修道院(Abbaye de Saint-Savin-sur-Gartempe)です。
ここは、壁画群に驚嘆します。
2024年、教会は月曜から土曜の10:00〜12:00と14:00〜18:00、日曜の14:00〜18:00に開いていました。
目次
1. Saint-Savin へ .
2. 概要 .
3. 平面図 .
4. 内観(ポーチ) .
5. 内観(身廊) .
6. 内観(クワイヤ) .
7. 内観(地下聖堂) .
1. Saint-Savin へ
サン=サヴァン(Saint-Savin)は、ヌーヴェル=アキテーヌ地域圏ヴィエンヌ県の村です。同県のあたりは県庁所在地であるポワティエ(Poitiers)を歴史的な中心地とし、ポワトゥー(Poitou)地方と呼ばれます。
サン=サヴァン(Saint-Savin)は、ポワティエ(Poitiers)の約40km東にあります。
教会は、ガルタンプ(Gartempe)川のほとりに建っています。
2. 概要
教会の外に案内板がありました。私が一部を抜粋して太字で和訳します。
歴史の概要
聖サヴァンの墓とされる墓の周辺に修道院が築かれたのは、9世紀に遡る。シャルルマーニュ(カール大帝)とルイ敬虔王(ルートヴィヒ1世)の支援を受け、ベネディクト会大修道院は11世紀初頭まで西フランスの修道院の歴史において重要な役割を果たした。この時代、ポワトゥー伯の保護により、教会は再建され、大規模な壁画装飾(11世紀後半から12世紀初頭)が施された。宗教戦争の後、修道院の建物は17世紀にサン・モール修道会(ordre de Saint-Maur)のベネディクト会修道士たちによって再建された。
建築
建物群は、11世紀に建てられた大修道院教会(現在は教区教会)、17世紀に建てられた修道院建物(bâtiment conventuel)、庭園(jardins)、大修道院宿舎(logis abbatial)で構成されている。教会の内部は身廊と二つの側廊から構成され、細身で明るい身廊は、周歩廊と放射状に広がる祭室のあるクワイヤへと続いている。この聖域には、かつて聖人の遺物が安置されていた地下聖堂がある。西のポーチの塔の上には、19世紀に修復された高さ76メートルの堂々としたゴシック様式の尖塔がそびえ立っている。
壁画
150年以上にわたる数多くの修復作業により、これらの壁画は並外れた質の高さを誇るようになり、この修道院は「フレスコ画の谷」への入り口となった。 黙示録に捧げられたポーチ(玄関廊)に加え、トリビューン(階上廊)の壁と丸天井にはキリストの受難と復活が描かれている。身廊の丸天井には、旧約聖書のエピソードが描かれている。地下聖堂(非公開)には、聖サヴィヌス(Saint-Savin)と聖キプリアヌス(Saint-Cyprien)の殉教のエピソードが描かれている。
この後は、教会の中にあった案内パネルを引用する時に太字で書きます。
3. 平面図
案内板による平面図です。東が上です。
三身廊には、九つ柱間があります。大きい教会です。
4. 内観(ポーチ)
教会の中に入ります。
ポーチ(玄関廊)には、天使に囲まれたイエスと、黙示録の場面が描かれています。
圧倒的な迫力があります。また、11世紀までの複雑な終末図像の系譜を知る意味でも、欠かすことのできない貴重な大作です。
ちなみに、ポーチの上のトリビューン(階上廊)にも壁画があり、キリストの受難と復活が描かれていますが、見学はできないようでした。
5. 内観(身廊)
身廊に行きます。
わお。
これは、すごい。
祭壇にいたる身廊の天井には、旧約聖書の場面が描かれています。祭壇はイエスの場所ですから、壮大な旧約聖書の物語を経て、イエスにいたるのだなと実感します。
案内パネルに従って、11の壁画をご紹介します。
壁画1
「太陽と月の創造」『創世記』1章
14: 神は言われた。「天の大空に光る物があって、昼と夜を分け、季節のしるし、日や年のしるしとなれ。
15: 天の大空に光る物があって、地を照らせ。」そのようになった。
16: 神は二つの大きな光る物と星を造り、大きな方に昼を治めさせ、小さな方に夜を治めさせられた。
17: 神はそれらを天の大空に置いて、地を照らさせ、
18: 昼と夜を治めさせ、光と闇を分けさせられた。神はこれを見て、良しとされた。
19: 夕べがあり、朝があった。第四の日である。
壁画2
「エバの創造」『創世記』2章
21: 主なる神はそこで、人を深い眠りに落とされた。人が眠り込むと、あばら骨の一部を抜き取り、その跡を肉でふさがれた。
22: そして、人から抜き取ったあばら骨で女を造り上げられた。主なる神が彼女を人のところへ連れて来られると、
23: 人は言った。「ついに、これこそ/わたしの骨の骨/わたしの肉の肉。これをこそ、女(イシャー)と呼ぼう/まさに、男(イシュ)から取られたものだから。」
壁画の場面は次に、蛇と女性を描いています。「園の中央に生えている木の果実を食べるエバ」(『創世記』3章)だと思います。もうじき、アダムも木の果実を食べるでしょう。
壁画3
「カインとアベルの献げ物」『創世記』4章
1: さて、アダムは妻エバを知った。彼女は身ごもってカインを産み、「わたしは主によって男子を得た」と言った。
2: 彼女はまたその弟アベルを産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。
3: 時を経て、カインは土の実りを主のもとに献げ物として持って来た。
4: アベルは羊の群れの中から肥えた初子を持って来た。主はアベルとその献げ物に目を留められたが、
5: カインとその献げ物には目を留められなかった。カインは激しく怒って顔を伏せた。
6: 主はカインに言われた。「どうして怒るのか。どうして顔を伏せるのか。
7: もしお前が正しいのなら、顔を上げられるはずではないか。正しくないなら、罪は戸口で待ち伏せており、お前を求める。お前はそれを支配せねばならない。」
神は、あからさまにアベルだけに目を留め、祝福しています。
壁画4
「家族とともに箱舟から出るノア」『創世記』9章
7: あなたたちは産めよ、増えよ/地に群がり、地に増えよ。」
8: 神はノアと彼の息子たちに言われた。
9: 「わたしは、あなたたちと、そして後に続く子孫と、契約を立てる。
10: あなたたちと共にいるすべての生き物、またあなたたちと共にいる鳥や家畜や地のすべての獣など、箱舟から出たすべてのもののみならず、地のすべての獣と契約を立てる。
11: わたしがあなたたちと契約を立てたならば、二度と洪水によって肉なるものがことごとく滅ぼされることはなく、洪水が起こって地を滅ぼすことも決してない。」
12: 更に神は言われた。「あなたたちならびにあなたたちと共にいるすべての生き物と、代々とこしえにわたしが立てる契約のしるしはこれである。
13: すなわち、わたしは雲の中にわたしの虹を置く。これはわたしと大地の間に立てた契約のしるしとなる。
ノアと彼の息子たちの左に描かれている、動物の顔のようなものは、箱舟の舳先です。
壁画5
「バベルの塔の建設」『創世記』11章
4: 彼らは、「さあ、天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。そして、全地に散らされることのないようにしよう」と言った。
5: 主は降って来て、人の子らが建てた、塔のあるこの町を見て、
6: 言われた。「彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているから、このようなことをし始めたのだ。これでは、彼らが何を企てても、妨げることはできない。
7: 我々は降って行って、直ちに彼らの言葉を混乱させ、互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう。」
8: 主は彼らをそこから全地に散らされたので、彼らはこの町の建設をやめた。
9: こういうわけで、この町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を混乱(バラル)させ、また、主がそこから彼らを全地に散らされたからである。
壁画6
「アブラハムの前に現れる神」『創世記』12章
1: 主はアブラムに言われた。「あなたは生まれ故郷/父の家を離れて/わたしが示す地に行きなさい。
2: わたしはあなたを大いなる国民にし/あなたを祝福し、あなたの名を高める/祝福の源となるように。
3: あなたを祝福する人をわたしは祝福し/あなたを呪う者をわたしは呪う。地上の氏族はすべて/あなたによって祝福に入る。」
4: アブラムは、主の言葉に従って旅立った。ロトも共に行った。アブラムは、ハランを出発したとき七十五歳であった。
5: アブラムは妻のサライ、甥のロトを連れ、蓄えた財産をすべて携え、ハランで加わった人々と共にカナン地方へ向かって出発し、カナン地方に入った。
6: アブラムはその地を通り、シケムの聖所、モレの樫の木まで来た。当時、その地方にはカナン人が住んでいた。
7: 主はアブラムに現れて、言われた。「あなたの子孫にこの土地を与える。」アブラムは、彼に現れた主のために、そこに祭壇を築いた。
アブラムは、のちに神から言われてアブラハムと名乗るようになります(『創世記』17章)。
壁画7
「獄中のヨセフ」『創世記』39章
ヨセフはファラオの侍従長に買われ、その家にいました。ヨセフは顔も美しく、体つきも優れていたものですから、主人の妻はヨセフの着物をつかんで言います。「わたしの床に入りなさい。」でも、ヨセフは着物を彼女の手に残して逃げ、主人の妻はヨセフに濡れ衣を着せます。
19:「あなたの奴隷がわたしにこんなことをしたのです」と訴える妻の言葉を聞いて、主人は怒り、
20: ヨセフを捕らえて、王の囚人をつなぐ監獄に入れた。ヨセフはこうして、監獄にいた。
21: しかし、主がヨセフと共におられ、恵みを施し、監守長の目にかなうように導かれたので、
22: 監守長は監獄にいる囚人を皆、ヨセフの手にゆだね、獄中の人のすることはすべてヨセフが取りしきるようになった。
23: 監守長は、ヨセフの手にゆだねたことには、一切目を配らなくてもよかった。主がヨセフと共におられ、ヨセフがすることを主がうまく計らわれたからである。
壁画8
「ファラオの夢について説明するヨセフ」『創世記』41章
25: ヨセフはファラオに言った。「ファラオの夢は、どちらも同じ意味でございます。神がこれからなさろうとしていることを、ファラオにお告げになったのです。
26: 七頭のよく育った雌牛は七年のことです。七つのよく実った穂も七年のことです。どちらの夢も同じ意味でございます。
27: その後から上がって来た七頭のやせた、醜い雌牛も七年のことです。また、やせて、東風で干からびた七つの穂も同じで、これらは七年の飢饉のことです。
28: これは、先程ファラオに申し上げましたように、神がこれからなさろうとしていることを、ファラオにお示しになったのです。
29: 今から七年間、エジプトの国全体に大豊作が訪れます。
30: しかし、その後に七年間、飢饉が続き、エジプトの国に豊作があったことなど、すっかり忘れられてしまうでしょう。飢饉が国を滅ぼしてしまうのです。
31: この国に豊作があったことは、その後に続く飢饉のために全く忘れられてしまうでしょう。飢饉はそれほどひどいのです。
ヨセフはさらに、豊作の七年の間、エジプトの国の産物の五分の一を徴収して保管させることを勧めます。これが七年の飢饉に対する国の備蓄となり、飢饉によって国が滅びることはないからです。かしこい。
壁画9
「ヘブライの民のエジプト脱出」『出エジプト記』14章
19: イスラエルの部隊に先立って進んでいた神の御使いは、移動して彼らの後ろを行き、彼らの前にあった雲の柱も移動して後ろに立ち、
20: エジプトの陣とイスラエルの陣との間に入った。真っ黒な雲が立ちこめ、光が闇夜を貫いた。両軍は、一晩中、互いに近づくことはなかった。
21: モーセが手を海に向かって差し伸べると、主は夜もすがら激しい東風をもって海を押し返されたので、海は乾いた地に変わり、水は分かれた。
22: イスラエルの人々は海の中の乾いた所を進んで行き、水は彼らの右と左に壁のようになった。
23: エジプト軍は彼らを追い、ファラオの馬、戦車、騎兵がことごとく彼らに従って海の中に入って来た。
24: 朝の見張りのころ、主は火と雲の柱からエジプト軍を見下ろし、エジプト軍をかき乱された。
25: 戦車の車輪をはずし、進みにくくされた。エジプト人は言った。「イスラエルの前から退却しよう。主が彼らのためにエジプトと戦っておられる。」
26: 主はモーセに言われた。「海に向かって手を差し伸べなさい。水がエジプト軍の上に、戦車、騎兵の上に流れ返るであろう。」
劇的な場面です。
壁画10
「紅海を渡るモーセとイスラエルの民、ファラオの戦車」『出エジプト記』15章
1: モーセとイスラエルの民は主を賛美してこの歌をうたった。主に向かってわたしは歌おう。主は大いなる威光を現し/馬と乗り手を海に投げ込まれた。
2: 主はわたしの力、わたしの歌/主はわたしの救いとなってくださった。この方こそわたしの神。わたしは彼をたたえる。わたしの父の神、わたしは彼をあがめる。
3: 主こそいくさびと、その名は主。
4: 主はファラオの戦車と軍勢を海に投げ込み/えり抜きの戦士は葦の海に沈んだ。
5: 深淵が彼らを覆い/彼らは深い底に石のように沈んだ。
壁画11
「モーセに掟の板を授ける神」『出エジプト記』 31章
18: 主はシナイ山でモーセと語り終えられたとき、二枚の掟の板、すなわち、神の指で記された石の板をモーセにお授けになった。
主がシナイ山の頂に降りる場面は『出エジプト記』19章、掟の内容は『出エジプト記』20章に詳しいです。
壁画には、聖書の記述に従って、二枚の掟の板が描かれています。
身廊に描かれているのは、主に仕えたイエスの父祖たちです。
6. 内観(クワイヤ)
交差部に行きます。
クワイヤをかこむ柱と柱頭彫刻が美しい。
7. 内観(地下聖堂)
クワイヤの下には、地下聖堂があります。
立入禁止ですが、鉄柵の間から中をうかがうことができました。
地下聖堂には、聖サヴィヌス(Saint-Savin)と聖キプリアヌス(Saint-Cyprien)の殉教のエピソードが描かれています。
サン=サヴァン=シュル=ガルタンプ修道院(Abbaye de Saint-Savin-sur-Gartempe)。壁画群に驚嘆します。
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