セムレ(Sémelay)

2018年9月の旅行四日目、六番目の目的地はSémelay。ジョジュネ(Jaugenay)から東に約60km、車で約54分の道のりです。

Sémelay での目的はサン=ピエール教会(Eglise Saint-Pierre)。

ですがその前に、隣の飲食店に行きました。目的はこの本。

Corsaさんが教えてくださったんです。「教会の脇にあるレストランで、解説本が売られています」って。ぜったい買うでしょ。

15:30頃に教会に着きました。下の写真の、左に写っている緑のひさしの建物がそのレストランです。

店に行き、どきどきしながら若い女性店員さんに「教会の本ありますか?」ときいたんです。すると「ありますよ」といって店内に展示してあったものを見せてくれて。さらに「これ、ください」と言うと、奥から新品の本をとってきてくれました。

やった、買えた!

ちなみに値段は€18.5です。

フランス語で書かれていて(当然ですわなあ)、苦労しましたが、グーグル翻訳の力を借りて英語に訳しながらなんとか読みました。

著者は、地元で妻やお子さん達と農業を営んできた方。学術研究の道を進まれた方ではありません。序文で、本を書くことになるとは思わなかったと書いています。

でも、両親のすすめでベネディクト修道院で学び、半世紀近くにわたって過酷な自然の中で植物を栽培し動物を育てる中で聞こえたお告げの鐘の音、祖父の著書『Semelay, église, prieuré, paroisse, aux diocèses d’Autun et de Nevers』や伯父の著書『Notice historique et archéologique sur Semelay』に背中を押されたというのです。

本は4部構成。
第一部 歴史(11頁〜35頁)
第二部 概要(37頁〜60頁)
第三部 装飾(61頁〜119頁)
第四部 奇跡(121頁〜125頁)

実の多くのページを教会の装飾について書き、丹念に紹介してあります。そして私がこの本を買った理由も正に装飾について情報を得たかったから。

地域の歴史は帝政ローマがガリア(今のフランスと北イタリア)を支配していたガロ・ローマ時代に遡ります。2世紀〜3世紀頃に福音がもたらされ、修道院の建設が盛んに行われた6世紀〜7世紀のフランク王国の時代には、この場所にキリスト教徒のコミュニティがあり、その後、ベネディクト会の小修道院になりました。

ロマネスク聖堂の建設開始は恐らくクリュニー(Cluny)の付属となった1076年、完成したのは80年後の12世紀半ばでした。この頃が、この教会が最も繁栄した時代。その後は衰退し、18世紀〜19世紀に減築、修復されて現在の姿になりました。

教会の南東側は、こんな感じ。

西側の façade は、こうなってます。18世紀に修復されたもの。

外側は、なんてことない印象です。

でも中に入ると、スゴイ。まず、これ。

入ってすぐ右(南側)を見ると、印象的な彫刻があります。

別の角度から。

聖水盤の下にある見事な彫刻。鷲の下に蛇がいます。鷲の翼が力強い。

その奥にある柱礎(base)も美しいです。後から写真を見て気づきました。他にも美しい base がたくさんあったようなんですが、私ときたら、現地にいる間じゅう、上の柱頭にばかり目がいって全然みてなかった。(・・;)

レストランで買った本に載っていたフロアプランがこちら。

上が東、下が西です。

先ほど紹介した聖水盤の下の柱頭は、このフロアプランで45 の場所にあります。本によれば、1782年に減築して梁間(bay)を今のような三つにした時、取り壊された一番目の柱の柱頭だったそうです。

祭壇を背にして西のfaçadeを向くとこんな感じです。

ここからは柱頭スペシャル、行きます。

フロアプランで22の場所にある柱頭がこちら。

角度を変えて。

膝に手を置くアトラスが二人いて、その間にエジプトの農民の格好をした人物。両側にヤシの木があって、三人を挟んでいます。

フロアプランで17の場所にある柱頭がこちら。

中央の花には花びらが8枚。本によれば豊穣、再生、神の兆候を表すそうです。

フロアプランで14の場所にある柱頭がこちら。

別の角度から

人が牛とライオンに囲まれている図ですが、表情は穏やかで調和している印象です。

フロアプランで12の場所にある柱頭がこちら。

別の角度から

さっき見た柱頭14の反対側にあります。同じ柱にあって、柱頭14が祭壇側なのに対して、こちらの柱頭12は façade 側。

植物と動物と人が似たような位置に配置されていますが、こちらの方は、手をつないでいる二人が斜めになっていたり逆さになっていたり、落ち着かない感じです。

本では、新約聖書の聖パウロの言葉(ガラテヤの信徒への手紙5:15)を引用しています。

ガラテヤの信徒への手紙5章 14節
律法全体は、「隣人を自分のように愛しなさい」という一句によって全うされるからです。

ガラテヤの信徒への手紙5章 15節
だが、互いにかみ合い、共食いしているのなら、互いに滅ぼされないように注意しなさい。

フロアプランで6の場所にある柱頭がこちら。

別の角度から

パッと見たところ、私なんて、植物と髪の長い女性と耳の長い犬かな、なんて思っちゃうんですが。

本によれば、なんと、旧約聖書の創世記なんだそうです。光があり、月があり、エデンから流れ出た四つの川(ピション、ギホン、チグリス、ユーフラテス)があり、右側に知識の木、左側に生命の木があるんだとか。

えええ、そ、そうなの? 想像をはるかに超えるスケールです。

最後にこちら。一番有名なやつ。

フロアプランで4の場所にある柱頭です。

別の角度から

正面から

髪を振り乱している女性が蛇に胸を噛まれています。痛そう~。

Sémelay の Eglise Saint-Pierre、印象的な彫刻の宝庫でした。

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