2023年9月23日(土)、四番目に訪れたのはChabrillan、サン=ピエール教会(Église Saint-Pierre)です。
ここは、柱頭彫刻が素晴らしいです。
私は役場(mairie)にemailで連絡し、教会への訪問を予約しました。
目次
1. Chabrillan へ .
2. 概要 .
3. 平面図 .
4. 外観 .
5. 内観(壁画) .
6. 内観(柱頭) .
1. Chabrillan へ
シャブリヤン(Chabrillan)は、フランスのオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏ドローム県にある村で、アヴィニョンの約85km北、ヴァランス(Valence、ドローム県の県庁所在地)の約24km南にあります。
シャブリヤン(Chabrillan)の集落は、ドローム(Drôme)川に近い標高246mの小高い丘の中腹にあります。そして、集落から外れ、丘のふもとにぽつんと建つサン=ピエール教会(Église Saint-Pierre)は、田園の中にあり、墓地と塀に囲まれています。
役場(mairie)は、教会を訪問したいという私に、教会の案内役としてマダム・リオタール(Mme Liotard)を紹介しました。
Mme Liotard と私は教会の前で待ち合わせました。彼女は私に自身の著書をくれました。
2. 概要
教会の内外には案内は見当たりませんでした。
Mme Liotardの著書(Marie-Madeleine Liotard-Savoyard “CHABRILLAN VISITE DU VILLAGE ET DE SA CHAPELLE ROMAN” Loriol, 2001)による概要です。私が一部を抜粋して太字で和訳します。
シャブリヤン(Chabrillan)には先史時代から人が定住しており、竪穴や火打石、磨かれた斧などが発見されている。古代に関しては、多数のガロ・ローマ時代の遺跡がコミューンの数ヶ所に散在している。これらの平野部には、おそらく最初の小教区と思われるキリスト教の祠堂が出現した。
Henry Desaye はこう書いている。サン=ピエール教会(Église Saint-Pierre)の起源はわからないが、古代からの宗教施設であることは確かである。ローマ街道として知られる古代のルートに近く、平野の古い場所にあることから、中世中期にこの村が成立する以前からあったことがわかる。サン=ピエールの司祭が小教区の什分の一を徴収していたという事実は、この教会がこの地域の母教会であったことを示唆している。
現在の建物は、それ以前の建物の上に建っている可能性が高い。Henry Desaye は、後陣の柱頭を10世紀後半から11世紀初頭のものと推定している。彼は、11世紀末に後陣と交差部が建設された際に、それらが再利用されたのではないかと考えている。この仮説は、修復作業中にも検討された。柱頭を調べたところ、現在は3面しか見られないにも関わらず、4面に彫刻が施されていることがわかった。このことは、以前の建物とは異なる方法で配置されていたことを示唆している。
最終的に身廊が完成したのは、12世紀の終わり、あるいは13世紀の初めであった。Henry Desayeは、1140年から1200年の間と推定している。
この後も、Mme Liotardの著書を引用する時に太字で書きます。
3. 平面図
Mme Liotardの著書による平面図です。東が上です。
交差部、翼廊、内陣と後陣は主に11世紀。身廊は主に12世紀。
4. 外観
では、見学しましょう。
南翼廊に古い浮き彫りが再利用されています。
私はちっとも気づかなかったのですが、Mme Liotard に教えてもらいました。
四つ足の動物たちと、鳥たち。
以前の建物にあったもの(10世紀〜11世紀)かもしれません。
後陣は三つあります。
5. 内観(壁画)
教会の中に入ります。
身廊の南壁に壁画の断片が残っています。
壁画の近くにあった案内によると:
建物内には、12世紀後半に描かれた歴史的装飾の跡が残されている。おそらくいくつかの場面の断片であろう。パネルとして制作され、赤と黄土色の二重の帯で縁取られている(1)。読解が困難な場面から、戴冠し髭を生やした王(A)、マントを羽織った人物(B)、その向かいに白いチュニックを着て盆を持った第三の人物(C)など、複数の人物を確認することができる。これは、洗礼者聖ヨハネの斬首であろうか。右上(D)には、碑文の一部が残っている。後に窓(2)が設置され、描かれていた装飾の多くが消えてしまった。同じ時期に、壁に窪みか水盤が掘られたと思われ、礼拝がこの場所で行われていたことを示唆している。窓は、石の上に描かれた白い目地で装飾されていた。装飾は窪みの周囲にも続き、その右側(E)には、白で輪郭を描いただけの紋章の断片がある。
言われてみると、そんな風に見えるような。。。
6. 内観(柱頭)
教会には柱頭が10個あります。
平面図の番号順にご紹介します。
柱頭1
左側には、(羊かもしれない)四つ足の動物が3匹ほど描かれています。正面の中央には、丸い両眼の人間の顔。その下には四つ足の動物が描かれ、さらにその下には3本線がくるくると巻いています。右側には、ブドウをついばむ2羽の鳥が描かれています。アバクス(柱頭の上に置かれてアーチを支える部分)には幾何学模様と様式化された花が描かれています。
人の顔は、目と眉毛と前髪がくっついていて、額がすごく狭いです。この特徴は、トゥルニュ(Tournus)のサン=ミシェル礼拝堂(11世紀初め)にあった、かっこいい彫刻に似ています。
柱頭2
キャピタルNo.2
左側では、たぶん、2頭のヤギが木の両側に立って、葉を食べています。正面では、人の口から植物が出ています。その右隣には鷲が描かれています。
木の両側に動物たちがいる場面は、ロマネスクでよく見るテーマです。この柱頭に描かれている2頭の動物たちは、角の形などから、ヤギかもしれないと思いました。
柱頭3
左側では、ねじれた木の両側で斧をふるう2人の人物が描かれています。正面には、動物の顔が描かれています。鼻や耳の様子からして、牛かもしれません。右側には、犬に追われ蛇をくわえた牡鹿が描かれています。
下部には4本線が交差しています。
柱頭4
左側には、左手に棒のようなものを持つ人物と、四つ足の動物。正面には、シンプルな縦線状の葉があります。アバクス(柱頭の上に置かれてアーチを支える部分)には、四つ足の動物、結び目、動物の子どもが描かれています。右側では、鷹を持つ人物が馬で疾走しています。
この人物の後ろに別の馬の前足がみえますし、狩りの場面かもしれません。
柱頭5
松ぼっくりの両側に翼を広げた鷲が描かれています。
鷲の足が力づよい。
柱頭6
洋式化された葉が描かれています。
なんだか、上品です。
柱頭7
各面には、大きな木が描かれています。正面に描かれた木の幹は、美しくねじれています。この幹の右には、アーチがあり、小さな人物がいます。
彼は、右手をこめかみに、左手を腹部に当てています。
柱頭8
左側には、半分ほど柱に隠れていますが、翼を持つ人物が描かれています。松ぼっくりを挟んで隣には、翼を広げた鷲。さらにその隣には、松ぼっくりと鷲が続きます。
翼を持つ人物は、天使でしょうか。柱に隠れた部分を見てみたいものです。
柱頭9
左側には、四つ足の動物が描かれています。牛かもしれません。
正面には、向かい合う四つ足の動物が描かれています。
柱頭10
向かい合うネコ科動物たちの上に、蔦のように絡み合う植物が描かれています。
植物が十字形や円形を形づくっていて、印象的です。
サン=ピエール教会(Église Saint-Pierre)。柱頭彫刻が素晴らしいです。
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