レ・クリューズ(Les Cluses)<1>

2018年3月の旅行六日目。二番目に行ったのはレ・クリューズ(Les Cluses)という村でした。

目当ては10世紀〜11世紀頃に建てられた聖マリア教会です。フランス語でÉglise Sainte-Marie de La Cluse-Haute、カタルーニャ語で Església de Santa Maria de la Clusa と言うそうです。

この教会は役場(mairie)で鍵を借りると無料で中を見られるんですが、それが大変でした。

この日最初に行ったアルル・シュル・テク(Arles-sur-Tech)からレ・クリューズ(Les Cluses)への移動は東に25kmの道のりで、車で30分くらい。移動は難しくありません。

問題は、Arles-sur-Tech を出発したのが10時半を過ぎていたこと。入り口を探して時間を使ってしまったのに、つい天使のフレスコ画に見入ってしまいました。ふと気づくと10時半だったんです。

Les Cluses の mairie は月曜~金曜の9時~12時のみ開いています(2018年3月現在)。この時間内に鍵を借りるだけじゃなく、返さないといけません。とにかく、大急ぎで Les Cluses の mairie に向かいました。

着いたとき既に11時過ぎ。mairie の正面に車を停めてもらうと、運転席の夫に「鍵を借りてくるね」と言って車を降りて、走りました。

そして「mairie」という文字の真下のドアを開けようとしましたが、閉まっていました。

がーん。

なんで?営業時間内だよね?臨時休業?頭の中はパニック気味でした。しばらくドアの前にいたように思います。そして夫が来て言いました。「どうしたの?」私は何と答えたか、覚えていません。「こっちじゃない?明かりがついてて人がいるよ?」

何ですと?

私は夫が言うドアに駆け寄って、多分すごい勢いで開けました。「ぼ、ボンジュールマダム!」中には眼鏡をかけた真面目そうな女性が一人で机に向かっていて、驚かせてしまいました。申し訳ない。。。

あわてていた私はその後フランス語がまったく出てこなくて、教会の鍵を貸してくださいと英語でお願いしました。すると女性はフランス語で「確かに鍵はあるけれど、mairie は12時で閉めますから今日はもうお貸しできません。」と言うのです。

ここまで来て、それは、切ない。

何とかならないものかと弱り果て、ふと横を見ると、入り口の横の郵便受けが目に入りました。そうだ、ブログで読んだことがあるぞ!と思い、郵便受けに返しますから鍵を貸してくださいとお願いしました。これまた、英語で。すると、分かってもらえた上に、、、

オッケーでました!

私の身分証明書と連絡先が必要とのことで、パスポートを渡してコピーを撮ってもらい、携帯電話の番号を控えてもらいました。そして、鍵を借りました。

郵便受けに返却という知恵を授けてくれた corsa さんのブログに大感謝しています。そして、正しいドアを教えてくれた夫にも感謝しています。夫が鍵を持って撮った写真には、後ろに返却に使った郵便受けと正しいドアが写っています。

ただ、次回以降も郵便受けに返却で大丈夫か分かりませんし、時間内に mairie に鍵を返却した方が良いように思うので、やはり、朝一番に Les Cluses を見学することを強くオススメします。

鍵について長く語ってしまいました。個人的に強烈に心に残ったもので、つい。。。

さて、宝箱の鍵を手に入れたような気持ちで車に戻り、聖マリア教会に向かいました。聖マリア教会は小高い丘の上にあります。mairie から南東に1km、車で2分の道のりです。

すぐ側に大きい駐車場があるので、車を停めて歩きます。教会が近づいてきました。

なんだか小さいのに、迫力があります。

扉には「13:30~17:00」という表示がありますが、これは情報が古そうです。

鍵を開ける動画をインスタグラムにアップしました。クリックすると見られます。

中に入ってすぐの場所に案内が置いてありました。英語は無くて、フランス語とカタルーニャ語だけでした。同じ内容が書いてあるわけじゃなくて、フランス語の案内とカタルーニャ語の案内とでは、言及する内容が違います。苦労しながら、何とか両方を読みました。

教会の概要を書きます。

この場所は戦略的に重要な立地だったため、古代ローマ時代に要塞が築かれました。聖マリア教会についての一番古い記録は1198年ですが、初期ロマネスク様式の教会の起源は10世紀終わりから11世紀初めに遡ります。

古代ローマ時代の要塞跡を生かした城が築かれた際、教会は城の北翼部分に礼拝所として造られたようです。その後、改修の工事が行われましたが、オリジナルの初期ロマネスクの遺構がいくつか残っています。

長方形の教会は、高い身廊(central nave)の両側に低い側廊(lateral nave)がある三廊式です。central nave に内陣(presbytery)があり、三つの nave の東端は半円形の後陣(apse)になっています。この辺りの初期ロマネスク様式の建築物にみられる造りだそうです。

三つの後陣は、外側から見ると平たい壁になっていて、全体を囲む城壁と一体化しています。(グーグルマップのストリートビューの画像です)

また、古い遺構として目を引くのがファサード(façade)の前にあるポーチ(porch)です。壁やアーチの一部が残っていて、粗く切り出された平板が素朴に積まれています。防護機能を持たせていた可能性があるそうです。現在、porch の片側は階段の支持壁になっていて、階段は14世紀頃に造られた bell tower に続いています。

階段をのぼっちゃいました。

鉄格子の向こう側に行きます。

屋根を背にして porch 側を向くと、鐘の向こうに雪山が見えます。良いわあ。

急な階段なので、気をつけて降りました。

扉口(portal)の上に、開口部が二つの窓があり、台形の柱頭があってカロリング朝のモチーフの装飾があります。

扉口(portal)を含め、沢山の改修が14世紀に行われました。その頃、聖ナザリウスの庇護の下に置かれたため、聖マリア教会は聖ナザリウス教会とも呼ばれます。

レ・クリューズ(Les Cluses)の聖マリア教会、次回に続きます。

“レ・クリューズ(Les Cluses)<1>” への6件の返信

  1. 懐かしく、反芻させてもらいました!そして、私の経験が、約一名には役立ったんだ、と思い、大変うれしく思いましたよ~。
    間に合ってよかったですね。あそこは、何か、ギリギリに着くことになってるんですかね、笑。

    1. 実は鍵を開けるとき、鍵を空回りさせてしまい、なかなか開けることができなかったんです。ガチャと音がして鍵が開いた時の気持ち、中に入った時の気持ち、フレスコ画を見上げた時の気持ち、忘れられないです。
      「鍵は今日はもうお貸しできません。」とフランス語でキッパリ言われて絶望しそうでしたが、corsaさんのブログのおかげで本当に助かりました。

  2. 昨年の秋に、Gironaからバスと徒歩でたどり着いたら、「mairieは今日、明日休み」の貼り紙。上の住人に聞いても臨時休業の事すら知らない。どうにもならず、トボトボとFenollarに移動しました。
    諦め切れず、今春リベンジ。Les Clusesを通る1ユーロバスが、大分、便利になっていて、助かりました。

    1. ブログに来てくださってありがとうございます。
      1ユーロバス、良い情報なのでメモします。便利そう。
      Les Cluses も Fenollar も小さい聖堂でフレスコ画も素朴ですが、ほほえましい温かさがあるので、たどり着くと喜びもひとしおです。
      私はロマネスク巡りを始めたばかりで、sioz4026さんのインスタグラムを楽しく拝見して、すごく参考にさせていただいています。

  3. 有難いことに、zodiac叢書の刊行中に定期購読で送ってもらうことができ、それをバイブルとして修行してます。
    デジカメになってからの記録を新しい順にアップしてますので、気長にお付き合い下さい。
    銀塩フィルムのみの記録と、Windows10のバグで壊されたデータはどのようにリベンジしようか、思案中です。

    1. zodiac刊行中に定期購読なんて、すごいですねえ。
      ええもう、ぜひ。気長にお付き合いさせてください!

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