タラスコン(Tarascon)

2023年9月21日(木)の最後、四番目に訪れたのは Tarascon、サン・ガブリエル礼拝堂(Chapelle Saint-Gabriel)です。

ここは、ファサードの浮き彫りが素晴らしいです。

礼拝堂は閉まっていました。私は礼拝堂の中に入りませんでした。

目次

1. Tarascon へ .
2. 概要 .
3. 平面図 .
4. 外観(ファサード全体) .
5. 外観(後陣) .
6. 外観(ファサード詳細) .

1. Tarascon へ

タラスコン(Tarascon)は、フランスのプロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏ブーシュ=デュ=ローヌ県にある村で、アルルの約11km北東にあります。

西側遠景

オリーブや松の木が立ち並び、プロヴァンスの土地の様々な香りが漂う風景の中に、ロマネスク様式の礼拝堂が立っています。

2. 概要

礼拝堂の周りに案内は見当たりませんでした。ゾディアック(Zodiaque) la nuit des temps の『Provence romane 1』による概要です。私が一部を抜粋して太字で和訳します。

礼拝堂の周辺では数多くの考古学的発見がなされ、岩の斜面には家屋の基礎跡が残っており古代の集落の規模を物語っている。この基本的な経済機能は侵略を生き延び、教会の南側、隣接する農家の近くに初期キリスト教の墓地が発見されている。

サン・ガブリエルという地名は、1030年にマルセイユのサン・ヴィクトール修道院から出された勅許状に出てくる。中世の村は、今も斜面の頂上に立つ高い塔に守られ、12世紀には偉大な芸術家に教会の装飾を依頼するほど栄えていた。しかし、湿地帯の干上がりによって活動の源が次第に干上がり、その機能が役に立たなくなったため、この共同体は衰退の一途をたどっていたようだ。現在残っているのは、肥沃な土地の真ん中にある平野に点在する数軒の農家だけである。

この後も、Zodiaqueを引用する時に太字で書きます。

3. 平面図

ゾディアック(Zodiaque) la nuit des temps の『Provence romane 1』による平面図です。東が上です。

Zodiaqueより

では、見学しましょう。

4. 外観(ファサード全体)

道路から教会に近づくと、古い階段の上に礼拝堂が現れます。

西側外観

第一印象は石造りの質の高さである。近くの採石場から切り出された見事な石灰岩は、太陽に照らされて素晴らしい色艶を放っている。

5. 内観(後陣)

東側に行きます。

内側は半円形、外側は五角形の後陣。

ていねいに切り出された石灰岩が美しく並んでいます。

6. 外観(ファサード詳細)

西側に戻って、ファサードをじっくりみます。

ロマネスク様式の典型である、建築の必要性を利用する技術は、半円アーチの下に置かれた非常に深いポーチの存在にも見ることができる。実際、これは2つの巨大なファサード・バットレスを隠すための優雅な方法である。

この力強いアーチは、パールとオーブの二重の列で縁取られ、深く切り込まれたパルメットの装飾が施された欄間に落ち、このファサードの構成にリズムと独創性を与えている。アルルの円形闘技場のポルティコをモデルにしたことは間違いない。

西側外観

ファサードの上部には、豪華なオクルス(oculus、円形の開口部)があります。

内側から外側に向かって、アカンサスの葉で覆われた力強い曲面が、深く刻まれた溝を縁取り、ロゼットと人面が交互に描かれている。アカンサスの葉は幅が広く、茂り、樹液にあふれ、葉脈は強く、縁は浅いが、裂片の先端にはドリルの跡がある。しかし、最も特徴的なのは、一連の人面が使われていることである。いずれも、ドリルで眼球に穴を開けることによって得られる非常に激しい表情と、わずかに半開きになった口の形が、非常に偉大な芸術家の個性を現している。

オクルス(oculus)

このオクルスと、サン=ポール=トロワ=シャトーの西扉口の装飾との間に密接な関係があることはすでに述べたが、そこでは同じ装飾法が用いられている。この作品を分析したM.アラン・ボルグ(M. Alan Borg)は、サン・トロフィームの北回廊の柱頭との驚くべき比較を提案している。彼は、サン・ガブリエルの親方は、アルルの古い教会を最初に手がけ、アルピーユ地方に滞在した後、サン=ポール=トロワ=シャトーのポーチの仕事を続けた人物であることを示唆した。この仮説によって、資料のないサン・ガブリエルの年代を特定することが可能になり、1170年頃の回廊と1180年頃のサン・ポール西扉口の間に位置することになる。

下にある扉口に目を移すと、興味深いティンパヌムがあります。

向かって右には「アダムとエバ」(旧約聖書の『創世記』3章)、向かって左には「獅子の穴の中のダニエル」(旧約聖書の『ダニエル書』6章、旧約聖書続編の『ダニエル書補遺 ベルと竜』)が描かれています。

ティンパヌム

ダニエル、胴体が長くて、衣服の位置がかなり低い。。。まあ、それはさておき。

一方は、罪を犯したアダムとエバが、蛇を宿す木によって隔てられている場面で、もう一方は、ライオンの間にいるダニエルが、祈りの姿勢で両手を広げている場面です。ハバククは、右手に籠を持って髪を天使につかまれています。

アダムとエバは誘惑に屈したキリスト者を表し、一方、ダニエルはライオンに象徴される罪に抵抗したキリスト者を表す。アルルの図像において、ライオンは常に罪の象徴である。しかし、ライオンの檻に投げ込まれ、そして助け出されたダニエルの物語が、死に葬られ、そして復活したキリストの受難の予兆であると考えられていたことも忘れてはならない。

造形的な観点から見ると、このティンパヌムは、初期キリスト教の石棺の影響を色濃く反映している。水平の帯で二つに分割されており、また描かれている二つの場面の構成も、その影響を受けている。どちらの場面もアルル美術館の石棺に描かれており、ダニエルは互いに向かい合うのではなく預言者の「守護者」として頭を後ろに向けた対向するライオンの間に描かれている。

このティンパヌムは、古風な職人技の印象が支配的である。古い建物から再利用したものである可能性が高い。

たしかに、1170年頃から1180年頃に豪華なオクルス(oculus、円形の開口部)を制作した親方のものとは思えません。

ティンパヌムとオクルスとの間に、もうひとつ興味深い浮き彫りがあります。

「受胎告知」(『ルカによる福音書』1章)と「ご訪問」(『ルカによる福音書』1章)が描かれています。

簡素な線、際立つ荘厳さ。かわいい鳩たち。

浮き彫り

私が大好きなタイプです。

ティンパヌムと同様、この浮き彫りも再利用のように見える。その大きさから、現在の扉のまぐさとして使われたとは考えられない。むしろ、同じ場所かその近くにあり、すでに同じ名前が奉納されていた以前の教会にあったものであろう。

サン・ガブリエル礼拝堂(Chapelle Saint-Gabriel)。ファサードの浮き彫りが素晴らしいです。

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