2023年5月13日(土)、最初の訪問地は Puente Arenas。Ermita de San Pedro de Tejada です。
ここは、ロマネスク芸術の宝石です。外観では西扉口と持ち送りと柱頭、内観では柱頭が素晴らしいです。
個人所有ですが、訪問可能です。私は事前に役場に問い合わせました。2023年1月1日から7月7日の期間は、48時間前までに電話予約が必要でした。訪問可能時間は11:00〜14:00でした。私は5月13日11:00に予約しました。有料(€2)です。
Ermita 内は撮影禁止です。
目次
1. Puente Arenas へ .
2. 概要 .
3. 平面図 . .
4. 内観 .
5. 西側外観 . . .
5-1. 西扉口持ち送り8個 .
5-2. 西扉口浮き彫り .
5-3. 鐘楼西持ち送り8個 .
6. 南側外観 .
6-1. 身廊南持ち送り12個 .
6-2. 鐘楼南持ち送り8個 .
7. 東側外観 .
7-1. 内陣南持ち送り3個 .
7-2. 後陣持ち送り12個 .
7-3. 後陣柱頭4個 .
7-4. 内陣北持ち送り4個 .
7-5. 鐘楼東持ち送り9個 .
8. 北側外観 .
8-1. 身廊北持ち送り16個 .
8-2. 鐘楼北持ち送り8個 .
1. Puente Arenas へ
夫と私はAirbnbから南に約14km、16分ほど運転して、Puente Arenasの集落から1kmくらい外れた教会に着きました。10:45頃のことです。
繰り返しますが、個人所有です。金属製の高いフェンスが設置してあり、鍵守りが来るまでは、Ermita に近づくこともできません。
11:00になり、鍵守りの婦人が来ました。
フェンスを開けてもらい、Ermita の全身が見えました。その印象は「思ったより小さい」。
近づいて見た Ermita の印象は「わお。」
西扉口の彫刻が鮮明に見えてくるにつれて、私は、その彫刻の迫力に圧倒されました。
2. 概要
教会の外に案内板がありました。自動翻訳(DeepL)に助けてもらいながら、私が一部を抜粋して太字で和訳します。
中世初期の修道院
広くて肥沃なValdivielso渓谷を見下ろす恵まれた場所に、ロマネスク芸術の宝石がある。
San Pedro de Tejadaの原始的な修道院の創立は、9世紀初頭にさかのぼる。あるグループが、Rodamo あるいは Rodanio と呼ばれる修道院長のもと、共同生活を組織するためにこの場所を選んだ。この修道院は、中世初期に Ebro 川の上流地方に広がった宗教的集落の一部であり、その多くは家族的なものであった。
この修道院は、1011年に San Salvador de Oña 修道院の設立の際、幾人かの修道士を提供するなど貢献した。それ以降は独立性を失い、Oña の庇護を受ける小修道院となった。古い修道院の建物群のうち、12世紀初頭に建てられた教会だけが残っている。調和のとれた、堅固で様式化された建築で、1935年に歴史的芸術建造物に指定された。
ロマネスク建築と彫刻のモデル
教会は、その建築と彫刻の質の高さから、ブルゴス・ロマネスク建築の最も重要な例のひとつである。興味深い図像プログラムと非常に均質な様式を持っている。その建築様式は、洗練され、シンプルで均整の取れたラインで構成され、上に向かって高くなる傾向がある。この高さの傾向は、鐘楼と西側の切妻に見られる。ファサードは、福音書記者を描いた持ち送りを持つ瓦屋根で保護されており、最後の晩餐の場面や、ライオンが人間と戦う場面を描いた見事な浮き彫りがある。
こんなに質の高いロマネスク建築と彫刻が残っていて、しかも訪問を受け入れていることが、たいへん有難いです。
3. 平面図
現地には平面図が見当たりませんでした。Románico Digital による平面図です。東が右です。
さっそく、見学です。
4. 内観
内部は撮影禁止です。Románico Digital に内部の写真がありました。
単身廊で、半円形の後陣があります。交差部、勝利アーチ、後陣の盲アーチに柱頭彫刻があります。後陣の盲アーチの柱頭は、主に植物模様。とても美しい柱頭彫刻でした。交差部と勝利アーチの柱頭には、植物と、「聖ペトロの解放」などが描かれています。
5. 西側外観
西扉口をみます。
柱頭彫刻は、植物模様です。
持ち送りは、建物全体で、合計88個(西扉口8個、身廊南12個、内陣南3個、後陣12個、内陣北4個、身廊北16個、鐘楼33個)あります。
5-1. 西扉口持ち送り8個
西扉口の8個の持ち送りをみます。
1: 天使、2: 天使、3: 鷲(聖ヨハネ)4: 有翼の牛(聖ルカ)、だと思います。
私は、2: 天使の目線が好きです。ちなみに、3: 鷲(聖ヨハネ)は、4枚の翼を持っています。
4: 有翼の牛(聖ルカ)の隣の、上部中央に、両手を広げたイエスがいます。
イエスの隣に、持ち送りが続きます。、
5: 有翼のライオン(聖マルコ)、6: 有翼の人(聖マタイ)、7: 天使、8: 天使
5: 有翼のライオン(聖マルコ)の得意げな表情が良いです。
6: 有翼の人(聖マタイ)は、1、2、7、8の天使と区別がつきません。私は、並んでいる順番から言って、きっと6の位置に聖マタイが描かれるだろう、と考えました。
5-2. 西扉口浮き彫り
持ち送りの下の向かって左には、6人の使徒、その下に最後の晩餐(ユダ、イエス、聖ヨハネ)の浮き彫りがあります。
持ち送りの下の向かって右には、6人の使徒、その下にライオンと人の浮き彫りがあります。
死を克服するキリストとして描かれていると思います。たしか、Jacaの大聖堂のティンパヌムには碑文がありますよね。(まだJacaに行ったことないです、行ってみたい。)
ライオンがかわいい。
5-3. 鐘楼西持ち送り8個
鐘楼の西面には、8個の持ち送りがあります。軒下の柱頭も、窓も、彫刻が施されています。
動物、聖職者、弦楽器奏者などの持ち送り彫刻が確認できます。
6. 南側外観
南側をみます。身廊には窓が2個あり、豊かに装飾されています。
持ち送りをみます。
6-1. 身廊南持ち送り12個
1: オオカミ、2: 十字架と本を持つ天使、3: 子を抱く女性、だと思います。
4: 衣服の裾を持ち上げる男性、5: 衣服の裾を持ち上げる女性、6: 円筒形と植物、だと思います。
7: 座って本を膝に乗せる聖職者、8: キツネ、9: ヒツジ、だと思います。
10: ネコ科の動物、11: 葉に包まれた丸い果実のような形、12: 両足の間にハープを置いて座る男性、だと思います。
6-2. 鐘楼南持ち送り8個
鐘楼の南面には、8個の持ち送りがあります。軒下の柱頭も、窓も、彫刻が施されていますが、塔があるために一部が隠れています。
葉に包まれた丸い果実のような形、円筒形、両手で両足を上げる女性、などの持ち送り彫刻が確認できます。軒下の柱頭は魚の尻尾を噛む鳥です。窓の柱頭のひとつは猛禽類ですが、上の写真には写っていません。
7. 東側外観
内陣と後陣の持ち送りは、内陣南3個、後陣12個、内陣北4個です。後陣に柱頭は4個あります。
7-1. 内陣南持ち送り3個
1: 髭の男性、2: 鎚矛のようなものを持つ男性、3: 小動物をくわえている肉食獣、だと思います。
7-2. 後陣持ち送り12個
1: ヒツジ、2: イヌ、3: シカ、4: シカ、だと思います。
5:ヤギ、6: 動物、7: 動物、8: 獲物をつかんでいるワシ、だと思います。
9: タウ十字の杖を持つ聖職者、10: 本を持つ聖職者、11: 十字架を持つ聖職者、12: ヒソップ(Hyssopus)とシトゥラ(situla)を持つ聖職者、だと思います。
シトゥラ(situla)は聖水バケツです。ヒソップ(Hyssopus)は、ミントの一種で、いい香りがします。典礼のとき聖水を撒く散水器(aspergillum)として使います。
7-3. 後陣柱頭4個
1: 2羽のワシ、2: 獅子を裂くサムソン(旧約聖書の士師記14章)、だと思います。
3: 横たわった人物を祝福する人物と2頭のライオン、4: 3人の人物、だと思います。
7-4. 内陣北持ち送り4個
1: サル、2: アダム、3: 蛇と園の中央に生えている木、4: エバ、だと思います。
2〜4は、原罪(旧約聖書の創世記3章)を描いていると思います。
7-5. 鐘楼東持ち送り9個
鐘楼の東面には、9個の持ち送りがあります。軒下の柱頭も、窓も、彫刻が施されています。
裸の女性や円筒形などの持ち送り彫刻が確認できます。
鐘楼の軒下の柱頭はサムソンの髪を切るデリラ(旧約聖書の士師記16章)、だと思います。後陣の柱頭に続く場面です。
8. 北側外観
北側をみます。身廊には窓が2個あり、豊かに装飾されています。また、扉口の跡が2個ありますが、今は閉じられています。
8-1. 身廊北持ち送り16個
2: 蛇に両胸を噛まれる女性、3: 祝福する司教、4: ブタ、だと思います。
5: ヤギを食べる肉食獣の頭、6: 様式化された植物、7: 曲芸師、だと思います。
8: 人を踏みつける悪魔、だと思います。
悪魔は、角と足が獣のようで悪魔っぽいですが、人のような顔をしているしヘアスタイルも整っています。
興味深いです。
9: 天使、10: 弦楽器奏者、11: タウ十字の杖を持つ管楽器奏者、だと思います。
12: 左足の足先を右足の膝の上に乗せる男性、13: ウシ、14: オオカミ、15: 四足獣、だと思います。
16: 植物模様、だと思います。
身廊北16は、拡大写真を撮り忘れました。赤い矢印で示した持ち送りです。
8-2. 鐘楼北持ち送り8個
鐘楼の北面には、8個の持ち送りがあります。軒下の柱頭も、窓も、彫刻が施されています。
動物、聖職者、鳥などの持ち送り彫刻が確認できます。
ひとつ、気になった持ち送りがありました。これは人魚でしょうか?
片方の手で、もう一方の手首を握るのは、絶望や苦痛を表す伝統的ジェスチャーです。ということは、絶望した人魚?
誰かわかる人がいたら、教えてください。
何はともあれ、建物全体で合計88個(西扉口8個、身廊南12個、内陣南3個、後陣12個、内陣北4個、身廊北16個、鐘楼33個)の持ち送り、圧巻です。
Ermita de San Pedro de Tejada。ロマネスク芸術の宝石です。外観では西扉口と持ち送りと柱頭、内観では柱頭が素晴らしいです。
・
・
・
・
・