サン=ネクテール(Saint-Nectaire)

2022年8月14日(日)に訪れたのは Saint-Nectaire だけ。Église de Saint-Nectaireです。

ここは、オーヴェルニュ地方のロマネスク芸術を象徴する、主要な五つの教会のひとつです。

イソワール、クレルモン、オルシヴァル、サン=ネクテール、サン=サテュルナンの5か所にある五つのロマネスク教会は、ほぼ同時期に建築され多くの共通点を持つ、姉妹教会。

この五つの中では、私はこことオルシヴァルを推します。立地が魅力的(山の中にあって、教会の周りに好印象の飲食店や小売店がある)だし、私好みのロマネスク美術がたくさん残っているし。

Saint-Nectaire へ

夫と私は Clermont-Ferrand の宿をチェックアウトし、南西に49分ほど車を運転して、山の中のかわいい村に着きました。11時半頃のことです。

すごい人出。

Église de Saint-Nectaire(南東側遠景)

この日は日曜なので、午後は店が閉まってしまいます。だから教会を見学する前に、教会から約650メートルの道のりにある食料品店で買い物をし、隣のパン屋でサンドイッチを食べました。

パン屋の看板

お腹がくちくなったところで、教会の近くに行って外観をみます。

Église de Saint-Nectaire の外観

駐車場に車を停め、坂道をのぼります。

Église de Saint-Nectaire(北側外観)

西側の装飾は限定的。

Église de Saint-Nectaire(西側外観)

人出が多い理由は、市場。子供がたくさん来ていました。

教会は立地が良く、眺望がひらけています。

教会北側の広場(西扉口前から北を向く)

教会の外側を時計まわりに一周します。

オーヴェルニュ・ロマネスク様式の特徴的な装飾があります。

後陣には、象嵌細工のロゼッタ。

Église de Saint-Nectaire(北東側外観)

南翼廊には、象嵌細工の十字架。

Église de Saint-Nectaire(南側外観)

教会の中に入ります。

フロアプラン

さすが、主要な五つの教会のひとつです。フロアプランも7カ国語でした。

7カ国語でのフロアプラン

日本語版がこちら。東が上です。

教会の中にあったフロアプラン

Église de Saint-Nectaire の内観:全体

教会の中の、全体の様子。

Église de Saint-Nectaire(内観、身廊にて東を向く)

南扉口も西扉口も開放してあり、かなり明るいです。

荘厳の聖母像(12世紀)

オーヴェルニュ地方にはロマネスク様式の聖母像が多く残っていて、「威厳のある処女(仏:Vierges en Majesté)」とか「叡智の玉座(羅:sede sapientiae)」として知られます。

荘厳の聖母像(12世紀)

この教会にも、12世紀の「荘厳の聖母像」があります。

Notre Dame du Mont Cornadore と呼ばれる聖母像です。そして、この教会は、Église Notre Dame du Mont Cornadore とも呼ばれます。

現地の案内掲示の一部を抜粋して和訳すると:

この像は、木に、ペイントした布を何重にも覆って作られている(marouflage)。その背中には、聖遺物箱がある。玉座に置かれた聖母は、大人に扮したイエスを抱く(幼子として描かれるのはゴシック期以降である)。Dominique Allios

「荘厳の聖母像」は、イエスは神であり、聖母は神の玉座であると示したかったのかもしれません。

この教会の、もうひとつのイチオシが聖ボーディームの胸像。

聖ボーディームの胸像(12世紀)

北翼廊に大切に保管してあります。

Église de Saint-Nectaire(内観、交差部にて北を向く)

聖ボーディームは、聖ネクテールとともに福音伝道した人。

どーん。

聖ボーディームの胸像(12世紀)

現地の案内掲示の一部を抜粋して和訳すると:

聖人は胸像で表現され、右手は祝福し、左手は何かを持っていた。木製の芯に、エンボス加工した銅板をのせ、金メッキして作られている。埋め込まれていたガラスや半貴石のほとんどは、時間の経過とともに盗まれてしまった。その顔は、クワイヤの中央にある「聖ネクテールの生涯」として知られる柱頭彫刻の聖ネクテールの顔を忠実に再現している。聖ボーディムの胸像も同じ作者によるものと思われる。したがって、私たちが見ているのは聖ネクテールの胸像であって、聖ボーディムの胸像ではないのである。D. Allios

そうなの?見比べてみます。クワイヤの柱頭彫刻をご紹介。

クワイヤの柱頭彫刻

クワイヤの6本の柱には立派な柱頭彫刻があります。それぞれ「イエスの受難」、「イエスの変容」、「聖ネクテールの生涯」、「ヨハネの黙示録」、「最後の審判」、「イエスの復活」がテーマです。

そのうちの三つを紹介します。

「聖ネクテールの生涯」の柱頭

聖ネクテール(テヴェレ川で悪魔に襲われる場面)です。

「聖ネクテールの生涯」の柱頭彫刻、テヴェレ川で悪魔に襲われる聖ネクテール

確かに「聖ボーディームの胸像」とされている顔と少し似ています。

「イエスの受難」の柱頭
「不信のトマス」(ヨハネによる福音書20章)。
手をイエスのわき腹に入れるトマスです。

「イエスの受難」の柱頭彫刻、「不信のトマス」の部分

イエスが、処刑されてから三日後に復活して、弟子たちの前に来たとき、トマスはそこにいなかったんです。だから「あの方の手に釘の跡を見、この指を釘跡に入れてみなければ、また、この手をそのわき腹に入れてみなければ、わたしは決して信じない。」と言っちゃった。

んで、八日の後にイエスから「あなたの指をここに当てて、わたしの手を見なさい。また、あなたの手を伸ばし、わたしのわき腹に入れなさい。信じない者ではなく、信じる者になりなさい。」さらに「わたしを見たから信じたのか。見ないのに信じる人は、幸いである。」と言われちゃったんです。

「イエスの変容」の柱頭
向かって左が「パンと魚の奇跡」
パン五つと魚二匹を増やして男五千人を満腹にさせた出来事です。(マタイによる福音書14章、マルコによる福音書6章、ルカによる福音書9章、ヨハネによる福音書6章)

「イエスの変容」の柱頭彫刻

向かって右が「イエスの変容」
イエスが山に弟子たち(ペトロ、ヤコブ、ヨハネ)を連れて登り、旧約聖書の預言者であるモーセとエリヤと話しながら白く光り輝く姿を弟子たちに示した出来事(マタイによる福音書17章、マルコによる福音書9章、ルカによる福音書9章)です。

同じ柱頭を別角度から見ると、柱をもつ男がいます。寄贈者らしい。

「イエスの変容」の柱頭彫刻:

柱には「RA N VL FO」と書いてあり、ラヌルフォは寄贈者の名前と考えられています。

身廊の柱頭彫刻

三つご紹介します。

川から助けられたモーセ。

川から助けられたモーセの柱頭彫刻

天使と悪魔の戦い。

天使と悪魔の戦いの柱頭彫刻

ハープを弾くロバと山羊に乗る人。欲望とか快楽(lust)を示します。

ハープを弾くロバと山羊に乗る人の柱頭彫刻

ロバの毛がくるくる。

Église de Saint-Nectaire。オーヴェルニュ地方のロマネスク芸術を象徴する、主要な五つの教会のひとつです。景観が美しく、外観では後陣、内観では荘厳の聖母像、聖ボーディームの胸像や柱頭彫刻と見どころが豊富です。

Airbnb

この日の見学を全て終えた夫と私は、車で南西に約45分移動して、コンダ(Condat)という町にある Airbnb にチェックインしました。

台所兼食堂、居間、シャワー&トイレ、寝室二つという間取りの一戸建ての1階で、無料の駐車場つき。2人で6泊の総額が92,957円でした。

Airbnbの台所兼食堂

十分な広さがあり、洗濯機はもちろん、自炊に必要なものが全て揃っていて、

Airbnbの居間

居心地が良かったです。

夫が旅に合流したことを祝って、ショリア(Chauriat)の caves de l’abbaye で買ったワインを美味しく飲みました。

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