2024年5月10日(金)の最後、四番目に訪れたのはLubersac、Église Saint-Étienne de Lubersacです。
ここは、外観も内観も、柱頭彫刻が素晴らしいです。そして、珍しいことに聖ヨセフが生き生きと描かれています。
目次
1. Lubersac へ .
2. 概要 .
3. 平面図 .
4. 外観 .
5. 内観(身廊) .
6. 内観(北小後陣) .
7. 内観(クワイヤと主後陣) .
8. 内観(南小後陣) .
1. Lubersac へ
ルベルサック(Lubersac)は、ヌーヴェル=アキテーヌ地域圏コレーズ県の村です。中央高地の西側に位置します。
オート=ヴィエンヌ県、コレーズ県とクルーズ県のあたりは、リモージュ(Limoges)を歴史的な中心地とし、リムーザン(Limousin)地方と呼ばれます。
ルベルサック(Lubersac)は、リモージュ(Limoges)の約43km南にあります。
教会は、村の中心にあります。
2. 概要
教会の扉にQRコードがありました。リンク先による概要です。私が一部を抜粋して太字で和訳します。
この教会は1171年以来、聖ステファノ教会(Église Saint-Étienne)として知られている。 聖ステファノは1世紀に生きた。使徒の弟子であった彼は、最初の殉教者(冒涜の罪で石打ちの刑に処された)とされている。
この地方の他の教会と同様、この建物は12世紀末にイングランド兵によって略奪され、13世紀に再建された。鐘楼の嵩上げ、身廊の拡張など、大規模な改修工事が行われた。
1910年には歴史的建造物に指定された。ロマネスク様式の教会で、11世紀から12世紀にかけて作られた柱頭彫刻が特徴である。
この後は、教会の中にあった案内ファイルを引用する時に太字で書きます。
3. 平面図
案内ファイルによる平面図です。東が上です。
格子:12世紀半ば
幅の狭い斜線:12世紀末と13世紀
点線:14世紀
幅の広い斜線:16世紀
4. 外観
南扉口をみます。
主扉口となっている南翼廊の扉口には、五つ葉のアーチがあります。
ヴィジョワ(Vigeois)の北扉口を思い出します。
東に行きます。
主後陣に四つの柱頭があります。
案内ファイルに従ってご紹介します。
主後陣の外側には四つの柱頭がある。また、教会内部には23の柱頭がある(うち四つは、おそらく18世紀か19世紀のものと思われる)。
近隣のアルナック(Arnac)教会とヴィジョワ(Vigeois)教会についてわかっていることを考慮すると、またモワサック(Moissac)の芸術と類似していることから、これらの柱頭はおよそ12世紀第2四半期と考えられる。
教会外側の柱頭1(主後陣)
パルメット
教会外側の柱頭2(主後陣)
「聖ステファノの殉教」(『使徒言行録』7章)
聖ステファノの殉教
長いチュニックを着た男性が右手に石、左手にパチンコを持っている。聖ステファノは、足を曲げ、顔を天に向けて至福の表情を浮かべている。ステファノの隣にはサウル(パウロ)がいる。
教会外側の柱頭3(主後陣)
左手で司教杖を持ち、右手の指を2本立てて祝福しているのは、エルサレム司教でしょう。
聖ステファノの石棺は、冠や輪をあしらった布がかけられ(stéphanosはギリシャ語で冠を意味し、シリアのヘブライ語ではcheliel couronneはステファノを意味する)、4人の聖職者によって移送される。行列の前には十字架がある。
司教、よろこび爆発。
教会外側の柱頭4(主後陣)
聖ステファノの聖遺物の発見。頭部に凹みのある石棺は開いている。石棺の上にはパルメット(殉教者と不死の象徴)が飾られている。
インターネットで得た情報ですが、伝承によると聖ステファノの墓がエルサレムで発見されたのは415年のこととされています。その後、聖遺物はエルサレム内のシオン教会に移送されました。
5. 内観(身廊)
教会の中に入ります。
教会の中についても、案内ファイルに従って柱頭彫刻をみます。
教会の中には23(身廊に1、北小後陣に6、クワイヤに10、南小後陣に6)の柱頭彫刻があります。
柱頭1(身廊)
花崗岩製の柱頭であり、アトラス、向かい合う2頭の熊、棒で武装した狩人(?)が描かれている。
6. 内観(北小後陣)
北小後陣の柱頭をみます。
柱頭2(北小後陣)
イエスは、ガマリエルとニコデモの間、ユダヤ教の律法学者たちの間に座っている。両脇にマリアとヨセフ。
『ルカによる福音書』2章
46: 三日の後、イエスが神殿の境内で学者たちの真ん中に座り、話を聞いたり質問したりしておられるのを見つけた。
47: 聞いている人は皆、イエスの賢い受け答えに驚いていた。
48: 両親はイエスを見て驚き、母が言った。「なぜこんなことをしてくれたのです。御覧なさい。お父さんもわたしも心配して捜していたのです。」
49: すると、イエスは言われた。「どうしてわたしを捜したのですか。わたしが自分の父の家にいるのは当たり前だということを、知らなかったのですか。」
50: しかし、両親にはイエスの言葉の意味が分からなかった。
51: それから、イエスは一緒に下って行き、ナザレに帰り、両親に仕えてお暮らしになった。母はこれらのことをすべて心に納めていた。
神殿で学者たちと議論する少年イエス(新約聖書『ルカによる福音書』2章)
柱頭3(北小後陣)
イエスは神殿から商人たちを追い出した。
神殿から商人たちを追放するイエス(『マタイによる福音書』21章12節〜13節、『ヨハネによる福音書』2章13節〜16節)
13: ユダヤ人の過越祭が近づいたので、イエスはエルサレムへ上って行かれた。
14: そして、神殿の境内で牛や羊や鳩を売っている者たちと、座って両替をしている者たちを御覧になった。
15: イエスは縄で鞭を作り、羊や牛をすべて境内から追い出し、両替人の金をまき散らし、その台を倒し、
16: 鳩を売る者たちに言われた。「このような物はここから運び出せ。わたしの父の家を商売の家としてはならない。」
「両替人の金をまき散らし、その台を倒し、」イエスったら意外と乱暴者。
柱頭4と5は、偽柱頭である。
柱頭6(北小後陣)
マンドルラのペトロとパウロ
向かって左の額が広くて巻物を持っているのがパウロ、向かって右の鍵を持っているのがペトロだと思います。
柱頭7(北小後陣)
馬に乗った東方三博士の旅立ち
7. 内観(クワイヤと主後陣)
クワイヤと主後陣の柱頭をみます。
柱頭8(クワイヤ)
十字架からの降架、太陽と月、息子の手を見て泣くマリア、耳から手を離すヨハネ、完全な沈黙、左手の釘を外すニコデモ。
十字架降架(『マタイによる福音書』27章、『マルコによる福音書』15章、『ルカによる福音書』23章、『ヨハネによる福音書』19章)
柱頭9(クワイヤ)
聖書による啓示。
柱頭10(クワイヤ)
神殿でのイエスの奉献。左側では、預言者アンナがシメオンの肩に優しい手を置いている。シメオンはマントを介してイエスを抱く。中央に神殿の中の神殿があり、その上にイエス。マリアが素手で幼子を抱いている。
右側では、ヨセフがいけにえのための鳩を運んでいる。
神殿奉献(『ルカによる福音書』2章)
聖ヨセフが生き生きと描かれています。
鳩たちを手にのせて、なんだか、得意げ。
柱頭11(主後陣)
弓矢を持った鳩狩り。3羽の鳩が松ぼっくりをつついている。弓使いが弓をひき、蛇が地をはっている。
柱頭12(主後陣)
受胎告知。アンナまたはマリアがつむぎ棒を持ち、彼女が子を授かることをガブリエルが告げる。彼女は天使の言葉を受け、両手を大きく開く。
「受胎告知」(『ルカによる福音書』1章)
あら、びっくり。
柱頭13(主後陣)
殉教者のマンドルラ(ステファノとゲオルギオス?)
柱頭14(主後陣)
パルメット。2羽のくちばしから出た葉が交錯している。
柱頭15(クワイヤ)
エジプトへの逃避。モワサックの門に描かれているものと似ている。マリアはロバ(ロマネスク美術で最も美しいロバ)にまたがり、幼児を抱いている。召使いがロバの尻を叩いている。
正面では、ヨセフがロバの馬具を引き、避難場所の蝶番のついた扉を開けている。
エジプトへの逃避(『マタイによる福音書』2章)
聖ヨセフが生き生きと描かれています。
ちからづよくロバをひき、扉を開けるヨセフ父さん。かっこいい。
柱頭16(クワイヤ)
パルメット。
柱頭17(クワイヤ)
十字架の上に置かれる太陽と月。控えめに飾られた十字架。イエスは「わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか」 と頭をかたむけている。左側では槍を持つ者が犠牲者の胸に槍を突き刺し、そこから血が流れている。右側では、酸いぶどう酒を含ませた海綿を持つ者がいる。左端では、福音書記者ヨハネが福音書を持ち、イエスの苦しみが聞こえないように、自分の耳に手を当てている。
イエスの磔刑(『マタイによる福音書』27章、『マルコによる福音書』15章、『ルカによる福音書』23章、『ヨハネによる福音書』19章)
8. 内観(南小後陣)
南小後陣の柱頭をみます。
柱頭18(南小後陣)
ご生誕と東方三博士の礼拝。マリアはベッドに横たわっている。ヨセフがマリアの頭を支えている。左側では、東方三博士が贈り物を捧げている。
「ご生誕」(『マタイによる福音書』1章、『ルカによる福音書』2章)、「東方三博士の礼拝」(『マタイによる福音書』2章)。
聖ヨセフが生き生きと描かれています。
ご生誕の場面でよく描かれるヨセフは、頬に手をあてて憂い顔です。
でも、こちらのヨセフ父さんは、マリアの枕を手で支えて明るい表情。
柱頭19(南小後陣)
パルメット
柱頭20と21は、偽柱頭である。
柱頭22(南小後陣)
大天使ミカエルによる魂の計量
柱頭23(南小後陣)
羊飼いへの告知。大きなマントと帽子を身につけた2人の羊飼いが、棒を持っている。両側には牧場の動物たちがいる。
羊飼いへの告知(『ルカによる福音書』2章)
Église Saint-Étienne de Lubersac。外観も内観も、柱頭彫刻が素晴らしいです。そして、珍しいことに聖ヨセフが生き生きと描かれています。
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