2024年8月29日(木)、二番目に訪れたのはCaracena、San Pedro de Caracenaです。
ここは、ポルティコの柱頭と持ち送り、後陣の持ち送りが素晴らしいです。
2024年、教会は7月12日から9月11日の月曜を除く火曜から日曜の11:00〜14:00と17:00〜20:00に開いていました。
目次
1. Caracena へ .
2. 概要 .
3. 平面図 .
4. 内観 .
5. 外観(後陣) .
6. 外観(ポルティコ) .
1. Caracena へ
カラセナ(Caracena)は、カスティーリャ・イ・レオン州ソリア県にある小さな村で、県都ソリアの約68km南西にあります。
教会は、村の南西の端にあります。

2. 概要
Románico Digital による概要です。私が一部を抜粋して太字で和訳します。
サン・ペドロ教会は、カラセナの高台に位置し、その近くには病院があった。ロマネスク様式だったこの教会には、身廊の南側を囲む壮麗なポルティコと後陣が残されている。
この後も、Románico Digital を引用する時に太字で書きます。
3. 平面図
Románico Digital による平面図です。東が右です。

身廊は三つの柱間に分かれており、17世紀の改修と19世紀の改修の結果、主に西側部分に聖歌隊席の追加や改修が行われた。20世紀前半には、内陣の南側に聖具室が増築され、現在の姿となった。
4. 内観
教会の中に入ります。

勝利アーチに簡素な柱頭彫刻が残っています。
5. 外観(後陣)
外に出て、東に行きます。

後陣のコーニスには装飾が施された持ち送りがあります。
後陣の持ち送りを九つみます。
左(南)から順に、持ち送り1:くるくると巻いた葉、持ち送り2:巻き毛で歯を見せる三つの顔、持ち送り3:ハルピュイア、持ち送り4:動物の顔、だと思います。

続く場面では、五つの持ち送りを使って、イノシシ狩りの場面が描かれているようです。
持ち送り5:槍を持ち角笛を吹く人物、持ち送り6〜8:イノシシを挟む2頭の猟犬、持ち送り9:槍を構える別の人物、だと思います。

私は、槍を持つ2人の人物たちが生き生きと彫られているところが好きです。
6. 外観(ポルティコ)
南に行き、ポルティコをみます。
ポルティコの出入り口は、東と南に二つあります。

現在のポルティコは、南の出入り口の左(西)側に二つ、右(東)側に四つのアーチが開いています。
しかし、注意深く調べてみると、もともとの長さはもっと長く、西側にも続いていた形跡がある。そのため、その側の端の横にもう一つのアーチの始まりが見られるほか、現在バットレスに取り付けられている柱頭が、実際には独立した柱頭であったことも判明した。

1986年7月に行われた発掘調査により、ポルティコの元の基礎と西側に閉じた角度が明らかになった。当初の構造では、南側ファサードは、西側にさらに二つのアーチの存在が確認され、南の出入り口の両側に四つのアーチで構成されていた。これはビジャサヤス(Villasayas)の回廊と同様の構成である。
西から順に、10の柱頭彫刻をみます。
柱頭1
ケンタウロスとハルピュイアたちだと思います。

柱頭2
柱頭2には、3人の騎士と3人の歩兵が彫られています。彼らは槍と盾を持ち鎖帷子を着ています。
南面では、歩兵が丸い盾を持っています。

西面では、丸い盾を持った騎士が、カイト・シールド(上部は丸く下部は尖った形)のような長い盾を持った歩兵に突進しています。でも、騎士の槍は長い盾に遮られています。
東面では、2人の騎士が決闘しています。左(南)の騎士は丸い盾、右(北)の騎士はカイト・シールド(上部は丸く下部は尖った形)のような長い盾を持っています。
長い盾を持つ騎士の槍が、丸い盾を持つ騎士の喉に突き刺さっています。
長い盾を持つ騎士がキリスト教徒、丸い盾を持つ騎士がイスラム教徒なのだとしたら、この図はキリスト教徒の勝利を示しているのかもしれません。ブルゴスのレボジェド・デ・ラ・トレ(Rebolledo de la Torre)の柱頭彫刻を思い出します。

柱頭3
ポルティコの南出入り口の左(西)の柱頭は、四つ角のそれぞれに、首をつながれた4対のライオンが描かれています。

柱頭4
ポルティコの南出入り口の右(東)の柱頭は、四つ角のそれぞれに、首をつながれた4対のグリフォンが描かれています。

柱頭5
「イエスの復活」(『マタイによる福音書』28章、『マルコによる福音書』16章、『ルカによる福音書』24章、『ヨハネによる福音書』20章)だと思います。
西面には、イエスがいた石棺があり、その両側に2人の天使がいます。

北面には、3人の女性が彫られています。マリアたちだと思います。
東面と南面には、鎖帷子を着てカイト・シールド(上部は丸く下部は尖った形)のような長い盾を持っている5人の番兵が彫られています。

柱頭6
祝福する12人の聖職者が描かれています。十二使徒かもしれません。

柱頭7
編み模様です。

柱頭8
植物模様です。

柱頭9
ポルティコの東出入り口の左(南)の柱頭は、「七つの頭を持つ竜」(『ヨハネの黙示録』12章)だと思います。
『ヨハネの黙示録』12章
1: また、天に大きなしるしが現れた。一人の女が身に太陽をまとい、月を足の下にし、頭には十二の星の冠をかぶっていた。
2: 女は身ごもっていたが、子を産む痛みと苦しみのため叫んでいた。
3: また、もう一つのしるしが天に現れた。見よ、火のように赤い大きな竜である。これには七つの頭と十本の角があって、その頭に七つの冠をかぶっていた。
4: 竜の尾は、天の星の三分の一を掃き寄せて、地上に投げつけた。そして、竜は子を産もうとしている女の前に立ちはだかり、産んだら、その子を食べてしまおうとしていた。
5: 女は男の子を産んだ。この子は、鉄の杖ですべての国民を治めることになっていた。子は神のもとへ、その玉座へ引き上げられた。
6: 女は荒れ野へ逃げ込んだ。そこには、この女が千二百六十日の間養われるように、神の用意された場所があった。
7: さて、天で戦いが起こった。ミカエルとその使いたちが、竜に戦いを挑んだのである。竜とその使いたちも応戦したが、
8: 勝てなかった。そして、もはや天には彼らの居場所がなくなった。
9: この巨大な竜、年を経た蛇、悪魔とかサタンとか呼ばれるもの、全人類を惑わす者は、投げ落とされた。地上に投げ落とされたのである。その使いたちも、もろともに投げ落とされた。
10: わたしは、天で大きな声が次のように言うのを、聞いた。「今や、我々の神の救いと力と支配が現れた。神のメシアの権威が現れた。我々の兄弟たちを告発する者、/昼も夜も我々の神の御前で彼らを告発する者が、/投げ落とされたからである。
七つの頭と十本の角を持つ竜のはずなんですが、なんだか膨らんだ腹を持つ四足獣のようで、ちょっとかわいい。

七つの頭を持つ竜は、ライオンのような2頭の四足獣に挟まれています。

柱頭10
ポルティコの東出入り口の右(北)の柱頭は、イノシシ狩りの場面だと思います。

獲物は2頭の猟犬に襲われています。その両端には短いチュニックを着て槍を持った3人の人物が配置されています。

ポルティコのコーニスに持ち送りがあります。
西から順に、九つの持ち送りをみます。
持ち送り1:グリフォン、持ち送り2:ハルピュイア、だと思います。
持ち送り3:巻物、持ち送り4:槍と角笛を持つ人物、だと思います。
持ち送り4の隣には持ち送り5〜6があり、獲物をくわえる狼を挟んで2頭の猟犬が彫られています。

持ち送り8:怪物、持ち送り9:ケンタウロス、だと思います。
後陣とポルティコの装飾の種類と処理から、両者が同時代のものであり、12世紀の進んだ時期のものであることが推測される。
他の資料がない場合、サンタ・マリア・デ・ティエルメス(Santa María de Tiermes)の碑文が示す年代(1182年)を参考にすべきである。両教会の装飾と図像は、イサベル・フロントン(Isabel Frontón)によって並行して研究され、その結果、その造形的な翻訳には違いが見られるものの、その構想には同じモデルが存在することが提唱された。同じ彫刻家、あるいは同じ工房の二つの異なる進化の段階によるものと考えられる。いずれにせよ、両教会の彫刻とその製作者の間に密接な関係があることは否定できない。
San Pedro de Caracena。ポルティコの柱頭と持ち送り、後陣の持ち送りが素晴らしいです。
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