ブトレラ(Butrera)

2023年5月13日(土)の最後、四番目の訪問地は Butrera。Iglesia de Nuestra Señora de la Antigua です。

ここは、外観では後陣の持ち送りと窓、内観では身廊の「東方三博士の礼拝」や後陣の「聖母マリア」が素晴らしいです。

扉口に連絡先携帯番号が張り出してあります。訪問可能時間は11:30-13:30と17:30-19:30と書いてあります。私は5月12日12:30頃に行き、WhatsAppで通話しました。鍵守りは「あいにく今は難しいのですが、18:00以降に来ていただければ教会を開けて差し上げます」とのことでした。私は5月13日18:00の訪問を予約しました。

教会の中を見学できた5月13日18:00頃の訪問として書きますが、外観の写真の多くは5月12日12:30頃に撮影したものです。

目次

1. Butrera へ
2. 概要 .
3. 平面図 . .
4. 内観  .
 4-1. 「東方三博士の礼拝」  .
 4-2. 交差部の柱頭  .
 4-3. 勝利アーチの柱頭  .
 4-4. 聖母マリア像  .
5. 南側外観  .
 5-1. 南扉口  .
 5-2. 「原罪」   .
6. 東側外観  .
 6-1. 後陣の持ち送り  .
 6-2. 後陣中央の窓 
 
 . .

1. Butrera へ

夫と私はウィドブロ(Huidobro)から北東に約37km、40分ほど運転し、VillarcayoにあるAirbnbに戻りました。その後、夫をAirbnbに残し、私は1人で東に約32km、30分ほど運転し、サン・パンタレオン・デ・ロサ(San Pantaleón de Losa)に行きました。

冒頭で「四番目の訪問地は Butrera」と書きましたが、実は、私は San Pantaleón de Losa に行きました。外観を見学するためです。San Pantaleón de Losa については、5月14日に再訪して教会の中を見学したので、5月14日の記録として書きます。

私は San Pantaleón de Losa から西に32km、30分ほど運転してAirbnbに戻り、夫をピックアップしました。夫と私はAirbnbから北に約10km、13分ほど運転し、小さな村の教会が見えました。17:45頃のことです。

南東側遠景

私は、木々のあいだに初めて美しい後陣が見えて、心が洗われるような気持ちでした。

2. 概要

教会の外に案内板がありました。自動翻訳(DeepL)に助けてもらいながら、私が一部を抜粋して太字で和訳します。

ロマネスク教会
村の外れにあるロマネスク様式のIglesia de Nuestra Señora de la Antigua(もしくは de Septiembre)は、1983年に歴史的建造物に指定された。

割と最近ですよね、1983年。

ラテン十字プランであり、外からは見えない小後陣による二つの小さな付属礼拝室がある。このロマネスク様式の建物は、12世紀の最後の数十年間に行われた二つの建築運動によるものと思われる。第一期に相当するのは、半円形の後陣である。第二期に相当するのは、より技術的に進んだ第二の工房が行ったもので、短い身廊と交差部、翼廊である。

南扉口は、尖頭アーチによる三つのアーキヴォルトとひさし(guardapolvo)を持ち、幾何学的なモチーフで装飾されている。円柱の柱頭は、植物と具象のモチーフで装飾され、勝利した騎士の彫刻が際立っている。中世後期には、聖具保管室と半円アーチの大きなポルティコが増築された。教会の西側には、シンプルで細長い鐘楼がある。

ところで、私は guardapolvo を「ひさし」と和訳しましたが、扉口では、一番外側の半円のことです。この一番外側の半円は、chambrana と呼ばれることもあります。

彫刻。二つの工房
ロマネスク様式の彫刻装飾もまた、二つの異なる工房によるものである。第一工房の荒々しい技法と、第二工房の洗練された浮き彫りとは対照的である。この対比は、後陣の持ち送りにはっきりと見ることができ、両工房のものが使われている。横アーチの柱頭の荒々しさと、かつての交差部のアーチの柱頭の質の高さの間にも、同じような対比が見られる。

両工房の彫刻の質の違いは、ポルティコの片側の外側にある、再利用された、摩耗している「原罪」の浮き彫りと、教会内部の北壁に埋め込まれた、おそらく祭壇の前面にあったと思われる、Villasana de Mena のものと似た「東方三博士の礼拝」の浮き彫りの間にも見られる。


Butrera で制作された第一工房は、Mena 渓谷や Losa 渓谷の教会とのつながりを示している。一方、第二工房は、Burgos の後期ロマネスク様式の作品とつながっている。

この後も、案内板を引用するときは太字で書きます。

3. 平面図

現地には平面図が見当たりませんでした。Románico Digital による平面図です。東が右です。

Románico Digital による平面図

さっそく、見学です。

4. 内観

夫と私は予約時刻の18:00より少し前に教会に着きましたが、すでに鍵守りの紳士は教会の前にいました。

鍵守りの紳士によると、現在、Butreraの住民は10人ほど。紳士はボランティアで教会を訪問する人たちの手助けをしているのだそう。本当に、ありがたいことです。

教会の中に入ります。

4-1. 「東方三博士の礼拝」の浮き彫り

教会に入って、まず目に入るのが、教会内部の北壁に埋め込まれた、おそらく祭壇の前面にあったと思われる、Villasana de Mena のものと似た「東方三博士の礼拝」の浮き彫りです。第二工房の作品です。

「東方三博士の礼拝」

いかにも賢そうな髭の博士は、片膝をついています。かっこいい。彫刻も、衣服のひだの表現などが洗練されています。

ちなみに、Villasana de Mena の作品は、よく似ていますが、中央の髭の博士が両膝をついています。彫刻も比較的原始的です。

Villasana de Mena の作品(Románico Digital より)
4-2. 交差部の柱頭彫刻

さて、浮き彫りの前で右を向くと、交差部の彫刻が目に入ります。

身廊にて東を向く

交差部北東側の柱頭は、幻想的な生き物たち、だと思います。第二工房の作品です。

交差部北東側の柱頭
4-3. 勝利アーチの柱頭彫刻

勝利アーチを飾るのは、第一工房の作品です。

勝利アーチ北側には、円錐形の兜、鎖帷子、剣とカイト・シールドで武装した騎士と、槍で武装した騎士の戦いが描かれています。

勝利アーチ南側には、X字の間に動物たちが描かれています。同様の柱頭は、Mena 渓谷にある Vallejo、Losa 渓谷との間にある TabliegaBárcena de Pienza にもありました。

勝利アーチ北側の柱頭
勝利アーチ南側の柱頭
4-4. 聖母マリア像

内陣と後陣の装飾は第一工房の作品ですが、後陣中央の窓に置かれている聖母マリア像だけは、第二工房の作品です。

後陣中央の窓にある、聖母マリア像は、Gredilla de Sedano の浮き彫りを彫った流派と同じ技法によるものである。聖母マリアは右手の掌を広げ、Silos の浮き彫りと同じような姿勢をしていることから、受胎告知のグループの一部として制作されたようである。

聖母マリア像

「東方三博士の礼拝」の浮き彫りといい、この聖母マリア像といい、第二工房の作品は目を見張るものがあります。相当に腕のある親方が彫ったのだと思います。

5. 南側外観

外に出ます。

南側外観
5-1. 南扉口

南扉口をみます。

南扉口

南扉口の東端の柱頭彫刻には「貴婦人と騎士の別れ」が描かれています。騎士は貴婦人に向かって左手を挙げています。貴婦人は上等な衣服に身を包み、手を腰にあてた立ち姿です。

東端の柱頭
東端の柱頭(別角度)
5-2. 「原罪」の浮き彫り

ポルティコの外側には、摩耗している「原罪」の浮き彫りがあります。第一工房の作品です。

「原罪」の浮き彫り

6. 東側外観

東側に行きます。

東側外観
6-1. 後陣の持ち送り

持ち送りをみます。

後陣南
後陣北

後陣北には、第一工房の作品があります。

後陣北1はヤギ、後陣北2は頭を怪物に飲み込まれた人、だと思います。

後陣北1
後陣北2

後陣南には、第二工房の作品があります。

後陣南1はグリフォン、後陣南2は四足獣、後陣南3は四足獣に乗り剣で突く人、だと思います。

後陣南1
後陣南2
後陣南3
6-2. 後陣中央の窓

後陣中央の窓をみます。第一工房の作品です。

後陣中央の窓

向かって左端の柱頭には、七つの頭を持つ生き物が描かれています。

Mena 渓谷にある Vallejo の勝利アーチにも描かれていました。

『ヨハネの黙示録』13章(1)の、海の中から上って来る獣かもしれません。

向かって左端の柱頭

向かって右端の柱頭には、生き物が植物の間から顔を出しています。

向かって右端の柱頭

鍵守りの紳士によると、カエルなのだそう。かわいいです。

Iglesia de Nuestra Señora de la Antigua。外観では後陣の持ち送りと窓、内観では身廊の「東方三博士の礼拝」や後陣の「聖母マリア」が素晴らしいです。

脚注 (1) 『ヨハネの黙示録』13章 ↩️

1: わたしはまた、一匹の獣が海の中から上って来るのを見た。これには十本の角と七つの頭があった。それらの角には十の王冠があり、頭には神を冒瀆するさまざまの名が記されていた。
2: わたしが見たこの獣は、豹に似ており、足は熊の足のようで、口は獅子の口のようであった。竜はこの獣に、自分の力と王座と大きな権威とを与えた。
3: この獣の頭の一つが傷つけられて、死んだと思われたが、この致命的な傷も治ってしまった。そこで、全地は驚いてこの獣に服従した。
4: 竜が自分の権威をこの獣に与えたので、人々は竜を拝んだ。人々はまた、この獣をも拝んでこう言った。「だれが、この獣と肩を並べることができようか。だれが、この獣と戦うことができようか。」
5: この獣にはまた、大言と冒瀆の言葉を吐く口が与えられ、四十二か月の間、活動する権威が与えられた。
6: そこで、獣は口を開いて神を冒瀆し、神の名と神の幕屋、天に住む者たちを冒瀆した。
7: 獣は聖なる者たちと戦い、これに勝つことが許され、また、あらゆる種族、民族、言葉の違う民、国民を支配する権威が与えられた。
8: 地上に住む者で、天地創造の時から、屠られた小羊の命の書にその名が記されていない者たちは皆、この獣を拝むであろう。
9: 耳ある者は、聞け。
10: 捕らわれるべき者は、/捕らわれて行く。剣で殺されるべき者は、/剣で殺される。ここに、聖なる者たちの忍耐と信仰が必要である。

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