パヴィア(Pavia)<4>

2022年12月17日(土)の訪問地 Pavia。最後に<4> Basilica di San Michele Maggiore を訪れます。

ここは、ファサードの装飾、内陣の床モザイク、地下聖堂の柱頭彫刻、そして身廊の柱頭彫刻が素晴らしいです。

内陣を見学するには、Touring Club Italiano にガイドツアーを頼みます。
以下の日時に現地にボランティア・スタッフがいます。予約不要です。
火~土10:00~17:00、日13:00~17:00
(2022年現在)

Pavia では複数を見学しました。以下のように4回に分けて書いています。
<1> Basilica di San Pietro in Ciel d’Oro
<2> Cripta di Sant’Eusebio
<3> Cripta di San Giovanni Domnarum
<4> Basilica di San Michele Maggiore

目次

Basilica di San Michele Maggiore へ .
概要 .
平面図 .
ファサード .
内観全体 .
内陣:床モザイク(12世紀)
内陣周り .
北翼廊:磔刑像(10世紀) .
地下聖堂 .
身廊(柱頭彫刻) .
脚注(1):貞淑なスザンナ 脚注(1):貞淑なスザンナ. . .

アルファベットは、イタリア語とラテン語です。

Basilica di San Michele Maggiore へ

Cosaさんと私は Basilica di San Pietro in Ciel d’Oro から南東に約800メートル、9分ほど歩いて、Basilica di San Michele Maggioreに着きました。

西側外観

ファサードは、修復中でした。

(私は2023年9月6日に再訪し、修復が終わった姿を撮影できました。「ファサード」に載せます。)

概要

BasilicaのWebサイトによる概要です。私が一部を抜粋して太字で和訳します。

6世紀にテオドリック王が建てた宮殿と密接な関係があることから「templum regium」と呼ばれ、カロリング朝時代の839年には神聖ローマ皇帝ロタリウス1世と皇后エルマンガルドの娘ロトルードの洗礼式が行われた。また、何世紀にもわたって、イタリア王の戴冠式が執り行われた。

テオドリック(454年 – 526年)は、コンスタンチノープル育ちのゴート人で、イタリア王となり、東ゴート族の王国を建国した人物です。大規模な公共建築を行って、復興、拡張事業を進めました。建設された巨大な宮殿群には、6世紀後半から、ロンゴバルド人の君主が暮らします。そして、ロンゴバルド王国の治世も長くは続かず、フランク人による神聖ローマ帝国にとって代わられ。。。

長い歴史があるんですねえ、このBasilica。

この後も、BasilicaのWebサイトを引用するときは太字で書きます。

平面図

現地に平面図がありました。東が上です。

現地にあった平面図

さっそく、見学です。

ファサード

〜2023年9月6日に再訪〜
2022年12月17日には修復中でしたが、2023年9月6日に再訪し写真を撮りましたので、その写真を載せます。

西側外観(2023年9月6日に再訪して撮影)

ファサードには、切妻の二つの傾きに沿って、すべてのロマネスク教会の中で最初に建てられた、優雅な、歩行可能のギャラリーがある。

もし、あの高みから説教とか演説とかしたら、かなり高揚感が増すように思います。

砂岩と、煉瓦が使われている。柔らかい、黄色がかった砂岩は、オルトレポ(Oltrepò)の近くで採れたもので、おそらくサンタ・ジュレッタ(Santa Giuletta)の採石場で採れたものと思われる。

その状態は、霜の害によって悪化した。パヴィアの冬は、いつも厳しく長いためである。

ここ数十年でファサードの状態がさらに悪化したのは、大気汚染、すなわち、一部の工場で硫化炭素の代わりに硫酸が使われるようになったためと考えられている。

摩滅がすごくて、せっかくの浮き彫りがどんどん失われているようです。やわらかい素材を使っていることも理由のひとつですが、霜の害に加えて人的被害(大気汚染)まで加わったのでは、多難だな、と感じます。

ファサード(向かって左の扉口)

ルネッタにいる、聖ミカエルが、力を貸してくれるといいのですが。(言い換えると、修復事業が成功してくれるといいな、と思っています。)

Basilica の中に入ります。

内観全体

ちなみに、身廊の天井を見上げると、交差部に一番近いところだけ、色鮮やかです。

身廊にて東を向く

Touring Club Italiano のボランティア・スタッフによると、色鮮やかなのは、クリーニングした部分。今後は、手前の灰色の部分をクリーニングする予定とのこと。

また、将来的に、マトロネウム(matroneum、中2階に作られた空間)を訪問できるようになるかもしれないそうです。

15世紀のヴォールト
身廊にて北東を向く
身廊にて南東を向く

高い位置から見たい彫刻がたくさんあるので、とても楽しみです。

内陣:床モザイク(12世紀)

内陣に行くには、Touring Club Italiano のボランティア・スタッフに頼んで、一緒に訪問します。

床モザイクは、一年を司る王、12か月の寓意と、迷宮が描かれています。

床モザイク

1580年以前に、1383年製の巨大な大理石の祭壇が元の位置から後陣の方に移動されたとき、モザイクの一部が致命的に破壊された。

残っている部分は、どれも、とても生き生きと描かれています。

床モザイク

私は、3月が好きです。髪の毛が乱れています。

内陣周り

モザイクを見終わったら、階段をおります。

交差部にて東を向く

内陣を持ち上げている部分の装飾が素晴らしいので、見て欲しい。

水平に伸びている帯も、柱頭も、柱の基部もいいです。

北側
南側

まぐさやアーチの装飾、心ひかれるものばかりです。

まぐさ
アーチ

アーチの動物たちや人物たちが、かわいい。

アーチ

北翼廊に行きます。

北翼廊:磔刑像(10世紀)

北翼廊に、大きな磔刑像があります。

磔刑像

1799年の革命の際に弾圧された、「di Teodote」と呼ばれていた修道院からもたらされたもの。自然の大きさの3分の2程度である。銀箔でできており、2002年に修復された。

キラキラです。

地下聖堂

北翼廊の方にある開口部から、地下聖堂に入ります。

地下聖堂にて東を向く

幻想的な空間に、素晴らしい柱頭彫刻が並びます。

地下聖堂にて北東を向く
地下聖堂にて南東を向く

一部は再利用されたもので、一部は上部教会の装飾を手がけた職人によるものかな、と思います。どちらも素晴らしいです。

身廊(柱頭彫刻)

地下聖堂から出て上部教会に戻り、最後に柱頭彫刻を見ます。

さて、柱頭である。最も興味深い。しかし、すべてを観察することは不可能なので、ここでは、聖書のエピソードを比喩的に表現した柱頭のうち、basilica の神聖な性格と調和し、犠牲、誘惑、不屈、穏やかな死という概念で結びつくと思われるものをいくつか取り上げることにする。

入口から身廊を進むと、右側、2本目の柱に「アベルとカインの供犠」がある。羊飼いであるアベルは子羊を、農夫であるカインは穂か果実の束のようなものを捧げている。

「アベルとカインの供犠」

同じ柱の反対側にはアダムとエバが描かれている。二人の間には木があり、誘惑する蛇が巻きついている。エバは控えめに、アダムに運命のリンゴを手渡す。

アダムとエバ

内外に散らばるたくさんの二股人魚は、キリスト教の誘惑の概念を改めて示している。

二股人魚

次の、大きな、右側の最後の柱は、神の正義で、冠をかぶり、豊かな衣をまとった気高い女性が座っており、公平で確固とした裁きを行っている。右手で、微笑む貧しい正義の人を歓迎し、左手で、額に手を当てて嘆く金持ちの不正な人を拒絶している。

神の正義

左から2番目の小柱には、保存状態の良い女性の立像が描かれた柱頭がある。この女性は、自分とは関係のない装飾的なモチーフの中に挿入され、孤立してるように見える。足まであるチュニックを着ている。そして、全身から漂う慎ましさと、2本の樹木の存在感が、彫刻家の手によってよく再現されている。彼女は貞淑なスザンナ(1)であろう、思いがけず手に入れた正当な判決に微笑み、勝利している。

保存状態の良い女性の立像

同じ柱の反対側には、サムソンがいる。サムソンは、有名な長い髪を風になびかせていることからすぐにわかるが、この髪が彼の巨大な力を引き出している。

サムソン

そして、次の、最後の、大きな柱に目を向けると、そこには、最も不思議な、最も有名な柱頭がある。それは「正義の死」である。
サムソンは、小さなベッドに横たわっており、その顔には静寂と安らぎが感じられる。魂は、肉体から抜け出し、大天使聖ミカエルの首筋に避難するかのようにしがみつく子供の姿をしている。大天使聖ミカエルは、魂の足をつかんで獲物として要求する悪魔の口を棒で突き刺してこの戦いに勝利し、魂の護衛として、正義の魂を楽園へと連れて行く。

「正義の死」

聖母マリアの被昇天の場面でも、魂は子供の姿で描かれますが、Touring Club Italiano のボランティア・スタッフによると、魂が子供の姿で描かれるのは東方の影響なのだそうです。

Basilica di San Michele Maggiore 。ファサードの装飾、内陣の床モザイク、地下聖堂の柱頭彫刻、そして身廊の柱頭彫刻が素晴らしいです。

脚注(1):貞淑なスザンナ. ↩️

「旧約聖書続編」の「ダニエル書補遺」に書かれています。

スザンナは、バビロンに住むヨアキムの妻で、大層美しく、主を畏れるひとでした。ところが、裁判官である二人の長老が、散策するスザンナを見て、彼女に欲情を抱くようになります。あるとき、ついに、彼女が水浴びをする姿をのぞき見た二人は、スザンナのもとに走り寄り、身を任せなさい、さもなければ、あなたが若い男と一緒にいたと証言する、と迫りました。スザンナは、主の前に罪を犯すよりは、あなたたちの罠にかかる方がましです。と言って、拒絶します。スザンナは、二人の長老から姦通罪を訴えられ、偽証によって死罪を宣告されますが、神によって聖なる霊を呼び覚まされたダニエルが、スザンナの潔白を証明します。

水浴びの場面を描かれることが多いように思います。

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