ロジエ=コート=ドレック(Rozier-Côtes-d’Aurec)

2022年8月29日(月)の最後、二番目に訪れたのはRozier-Côtes-d’Aurec。Église Saint-Blaise です。

ここは、私がすごく楽しみにしていた教会です。ファサード、後陣、身廊、クワイヤといたるところに素朴で不思議な彫刻があります。

Rozier-Côtes-d’Aurec からは ロワール(Loire)県を、6か所(7聖堂)にわたって、巡ります。

ロワール(Loire)県の名は、県を南から北に100kmにわたって流れるロワール川に由来します。そして、県の西部にあるフォレ(Forez)山地は、ローヌ=アルプ地域圏とオーヴェルニュ地域圏との境界でした。

長いあいだ農業が主な産業だったロワール(Loire)県に残されているロマネスクは、私が大好きな素朴さと不思議さに溢れています。

Rozier-Côtes-d’Aurec へ

夫と私はボーザック(Beauzac)から北に24分ほど車を運転して、かわいい村に着きました。12時半頃のことです。

Église Saint-Blaise(東側外観)

三後陣が青空に映えて、胸が高鳴りました。教会の内外に、みたい彫刻がいっぱいあるんです。

彫刻の前に、教会の概要をさらっとご紹介します。

Église Saint-Blaise の概要

教会の中に案内ファイルがありました。一部を抜粋して太字で和訳します。

教会は、少なくとも11世紀には存在した小修道院の一部であった。アルトー5世伯爵によってピエモンテのサクラ・ディ・サンミケーレ修道院に譲渡された(アルトー5世は11世紀半ばの領主のようです)。その後、13世紀までにクリュニー大修道院の傘下に入った。

建物の正確な建築年代を示す資料はない。専門家は、使用された技術から考えて、ドームは1060年頃に造られ、建物は12世紀末までに完成したと考えている。

これから教会見学しますが、この案内ファイルを引用するときは、引き続き太字で書きます。

フロアプラン

教会の中の案内ファイルに、ゾディアック(Zodiaque)la nuit des temps の『Forez-Velay Roman』から転載したフロアプランがありました。残念ながら細かい部分が不明瞭なコピー。

手元の同書のフロアプランを掲載します。東が上です。

15世紀に第3柱間に礼拝室が増築された他は、ほぼ、12世紀のロマネスク建築が残ります。

外観を見学します。

カヴェット

みたかったもののひとつは、軒下です。

Église Saint-Blaise(東側外観)

軒下には、教会を取り囲むようにカヴェット(仏: cavet、英:cavetto molding、四分円形の繰形)が並んでいて、動物や幾何学的な模様が描かれています。

被造物全体を表現しているそうです。

南側のカヴェット

後陣にあるものは、かなり不思議。怪物っぽい2人が頭をくっつけています。

後陣のカヴェット

多様な被造物を表現しようとしたら、こんなのも描いちゃうんですかね。面白い。

カヴェットは後陣からファサードまで続いています。

ファサードの、向かって左端には、動物、魚、イルカ(?)。

ファサードの向かって左(北)端の下ヴェット

ファサードの、向かって右端には、魚、蛇。

ファサードの向かって右(南)端の下ヴェット

魚が多め。

ファサード(ティンパヌム、ティンパヌム上の浮き彫り、十字架)をみます。

ファサード:ティンパヌム

ファサードには、魅力的なティンパヌムがあります。

Église Saint-Blaise(西側外観)

威厳に満ちた聖母と東方三博士礼拝が描かれています。

西扉口のティンパヌム

このテーマは、フォレ(Forez)地方の教会としては珍しいもので、細長い人物たち、衣服のひだ、水平に並べられた手など、スペインの影響を指摘する人がいるそう。

細いあごも興味深いですが、贈り物が小さいボール状なことも、面白い。

黄金、乳香、没薬を(ギフトボックスなどに入れないで)直接に手渡したのかな。

ファサード:ティンパヌム上の浮き彫り

ティンパヌムの上には浮き彫りがあります。聖ブラシウス(仏:Saint-Blaise)だそう。

ティンパヌム上の浮き彫り

聖ブラシウスは4世紀頃に殉教したアルメニアの司教です。左手に司教杖を持っています。右手に何か持っているっぽいんですが、よく見えません。

ファサード:十字架

ファサードの切妻屋根の上に十字架があります。よく見ると磔刑像でした。

ファサード:十字架

十字架の両端には、太陽と月がある。太陽: 宇宙の支配者と見なされ、火と行動の象徴であり、生誕祭の暦、受肉のサイクルを支配する。月: 変化、変容、水の象徴、復活祭の暦、贖罪のサイクルを支配する。キリストの上には、聖霊の象徴である鳩がいる。とのことなんですが、よく見えません。

教会の中に入ります。

Église Saint-Blaise の内観

教会の中の、全体の様子。

Église Saint-Blaise(内観、身廊にて東を向く)

教会の中で見たいのは、イエスの浮き彫りと柱頭彫刻。

イエスの浮き彫り

身廊の、交差部の手前に置いてあります。

髭をたくわえて、力強い目をしています。

両肩のあたりに、Αとωの文字。『ヨハネの黙示録』の1章8節、21章6節、22章13節をふまえて、全能者であることを示しています。

『ヨハネの黙示録』22章13節
わたしはアルファであり、オメガである。最初の者にして、最後の者。初めであり、終わりである。

身廊とクワイヤの柱頭彫刻を見ます。

身廊の柱頭彫刻

身廊には、南北に二つずつ、四つの柱頭彫刻があります。

Église Saint-Blaise(内観、身廊にて北東を向く)
Église Saint-Blaise(内観、身廊にて南東を向く)

南側手前には、男と狼。男は着衣で、狼に襲われています。

狼の手にはボール状のものが握られていて、狼の尻尾は花のようです。

同じ柱頭の別角度には、鳥がいます。

何がなんだか、ちっとも分からない。

身廊を挟んで向かい側(北側手前)にも、男と狼。

狼の牙をむく様子もいいけど、左端の人の表情がすごく、いい。

男は裸です。エンヌザ(Ennezat)を見学したとき「当時、死者の描写は裸で描かれるのが普通であった」と書いてありました。男はすでに死んでいるのかも。

南側奥には、実をつけた植物。

身廊を挟んで向かい側(南側奥)には、竜。

竜は片方の手にボール状のものを持っています。

同じ柱頭を別角度からみると、男性が右手にボール状のものを持っています。

旧約聖書続編に出てくる、一匹の巨大な竜と預言者ダニエルかもしれません。

『ダニエル書補遺 ベルと竜』0章27節
そこで、ダニエルは、ピッチと油脂と毛髪とを取り、一緒に煮て、だんごを作り、竜の口に入れた。竜はそれを吞み込むやいなや体が裂けてしまった。ダニエルは言った。「御覧ください。これが、あなたがたが崇めていたものです。」

でも、ダニエルは、バビロンの王ネブカドネツァルが選んだ「体に全く欠陥がなく、容姿端麗で、あらゆる知恵を悟り、豊かな知識と理解力のある若者たち」の1人のはずなんですが。

この彫刻の男性を、あんまり容姿端麗と感じないのは、私だけ?

面白いことに、身廊の四つの柱頭彫刻はどれも東側の面には植物ばかり描かれています。

最後にクワイヤの柱頭彫刻をみます。

クワイヤの柱頭彫刻

三つの開口部の間に、3本柱があります。

Église Saint-Blaise(内観、交差部にて東を向く)

北側には、植物と変な人。南側には、植物と人の顔。

クワイヤ南側の柱頭彫刻
クワイヤ南側の柱頭彫刻

異教みたいな印象です。

変な人

古代ケルトの神スケルス(sucellus)とか、北欧神話の雷神トール(thor)とか、ハンマーを持つ豪神のイメージ。

でも、それでも、腹の大きな二重丸や、口から伸びるぐにゃぐにゃしたものが何なのか説明できません。

Église Saint-Blaise。ファサード、後陣、身廊、クワイヤといたるところに素朴で不思議な彫刻があります。

Airbnb

この日の見学を全て終えた夫と私は、車で北東に約40分移動して、ソルビエ(Sorbiers)という町にある Airbnb にチェックインしました。

台所、食堂兼居間、シャワー、トイレ二つ、寝室二つという間取りのテラスハウスで、無料の駐車場つき。2人で3泊の総額が€ 237.06でした。

Airbnbの台所

十分な広さがあり、洗濯機はもちろん、自炊に必要なものが一通りありました。

Airbnbの食堂兼居間

その上、冷蔵庫には飲み物、テーブルの上には赤ワインが一本。ご自由にどうぞとのことです。

この日も、いつも通り、スーパーで買った食材を使ってAirbnbで自炊しました。

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