MozacのAbbatiale Saint-Pierre、続きです。前回に概要と「貢納のまぐさ」と聖遺物箱についてみたので、今回は柱頭彫刻をみます。
わかりやすくなるので、フロアプランを再掲します。
フロアプラン
さっそく、柱頭彫刻スペシャル。
Abbatiale Saint-Pierre の内観:柱頭彫刻
ロマネスク様式のグレートな柱頭彫刻が48個ほど残っています。
多くの柱頭が高い位置にあるので見づらいんですが、身廊の西端には低い位置に置かれた柱頭が二つあります。
前出のフロアプランで、1と2です。
もとは、周歩廊と内陣との間に置かれていた八つの柱頭のうちの二つだったらしい。
上↑の写真で、手前の柱頭を別角度から。
イエスの復活を表しています。さらに、別角度。
腰に剣をたずさえているのは番兵。
祭司長たちとファリサイ派の人々は「イエスの弟子たちが来て死体を盗み出し『イエスは死者の中から復活した』と民衆に言い触らすかもしれない」と疑っていたんで、ピラトに頼んで、番兵たちに墓を見張らせたんでしたよね。(『マタイによる福音書』27章)
復活の柱頭の隣に置いてあるのは、男性4人と命の木が描かれている柱頭。
幸せそうな、はつらつとした様子ばかりかと思ったら、別角度には悲しそうな顔した人がいます。表情が豊か。
低い位置に置かれている柱頭は、聖域にも、一つあります。
前出のフロアプランで、48の位置。
これも、もとは周歩廊と内陣との間に置かれていた八つの柱頭のひとつだったらしい。
『ヨハネの黙示録』7章1節
この後、私は地の四隅に四人の天使が立っているのを見た。彼らは、地の四隅から吹く風を押さえ、地にも海にもどの木にも吹きつけないようにしていた。
別角度から。
天使たちが強引に風をおさえてて面白い。
高い位置にある柱頭のうち、見逃せないものをいくつか。
まず「ヨナ記」。フロアプランで18の位置です。
主の言葉にさからって逃げようとヨナが船に乗ると、船が嵐にみまわれます。
『ヨナ書』1章15節
こうして、彼らがヨナを捕らえ、海に投げ込むと、海は荒れるのをやめた。
海に投げ込まれるヨナの尻がかわいい。
自らを犠牲にして海に投げ込まれ巨大な魚に吞み込まれますが、三日三晩ののちに巨大な魚から吐き出されて復活するので、ヨナはイエスの予型だ、って理解されたらしい。
ヨナと巨大な魚の顔も見ておきますか。同じ柱頭の別角度。
ヨナは、なんだか達観した表情。
次に「ペトロの解放」。フロアプランで22の位置です。
ヘロデによって牢に入れられていたペトロを、天使が解放する場面。
『使徒言行録』12章7節
天使はペトロの脇をつついて起こし、「急いで起き上がりなさい」と言った。すると、鎖が彼の手から外れ落ちた。
聖書に忠実に描いています。
ケンタウロスたち。フロアプランで35の位置です。
かしこそうでかっこいい。
トビアとサムソン。フロアプランで38の位置です。
向かって左にトビア。この場面です。
旧約聖書続編の『トビト記』6章4節
天使ラファエルは言った。「捕まえなさい。しっかりと魚を捕まえて放さないように。」そこでトビアは魚をしっかりと捕まえて、陸に引き揚げた。
トビアは天使ラファエルに助けられて、メディアの親族から父の貸金を取り戻す途中でサラと結婚して新妻とともに帰国し、往路で入手した魚の胆汁を塗って父の失明をいやします。
ラファエルは旅の守護天使。大活躍ですな。
向かって右にサムソン。
旧約聖書の『士師記』14章6節
その時、主の霊が激しく降り、サムソンは素手で、子山羊を引き裂くようにライオンを引き裂いた。彼は自分の行ったことを両親に伝えなかった。
ちからもち〜。
つながれた猿。フロアプランで38の位置です。
なんだか、猿が上品。
猿といえば、こういう柱頭もあります。フロアプランで13の位置です。
吹くような口をしている猿。
山羊に乗る男たち(33の位置)や、グリフォンたち(29の位置)もいます。
どの柱頭彫刻もとても美しくて、つい、あれもこれも載せちゃいました。
Abbatiale Saint-Pierre。いかにも腕のある親方の工房でつくられたような12世紀の彫刻がいっぱい残っています。さらに、12世紀の豪華な聖遺物箱もあります。
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