アルル・シュル・テク(Arles-sur-Tech)<2>

アルル・シュル・テクの聖マリア修道院、続きです。

回廊を見た後、教会に行きました。教会の向きが変わっていて、西向きです。だから通常は建物の西側にあるファサード(façade)が、この教会では建物の東側にあります。

その façade を背にして西側をみると正面に祭壇(alter)があり、身廊(nave)は天井が高くて大変、立派です。どーん。

さて、façade を見ます。上の写真を撮った位置で振り返ると扉があって、ここから外に出られます。

外では、向かい側の建物がすぐそばにあるので、上手くファサード全体を写すことができません。防御塔(The Defensive Tower)ギリギリまで行って撮るとこうなります。

扉口部分を正面から。

さらに拡大。

ティンパヌム(tympanum)は祝福するイエスと福音書記者のシンボルで装飾されています。向かって上がヨハネの鷲、右がマルコの獅子、下がルカの雄牛、左がマタイの翼の人。

その下、まぐさ石(lintel)にはアルファとオメガが刻んであります。アルファとオメガはギリシャ文字の最初と最後なので「全て」とか「永遠」という意味を持っています。また、新約聖書『ヨハネの黙示録』22章にこうあります。(一般財団法人日本聖書協会の新共同訳です。)

10節:また、わたしにこう言った。「この書物の預言の言葉を、秘密にしておいてはいけない。時が迫っているからである。
11節:不正を行う者には、なお不正を行わせ、汚れた者は、なお汚れるままにしておけ。正しい者には、なお正しいことを行わせ、聖なる者は、なお聖なる者とならせよ。
12節:見よ、わたしはすぐに来る。わたしは、報いを携えて来て、それぞれの行いに応じて報いる。
13節:わたしはアルファであり、オメガである。最初の者にして、最後の者。初めであり、終わりである。
14節:命の木に対する権利を与えられ、門を通って都に入れるように、自分の衣を洗い清める者は幸いである。
15節:犬のような者、魔術を使う者、みだらなことをする者、人を殺す者、偶像を拝む者、すべて偽りを好み、また行う者は都の外にいる。
16節:わたし、イエスは使いを遣わし、諸教会のために以上のことをあなたがたに証しした。わたしは、ダビデのひこばえ、その一族、輝く明けの明星である。」

すぐに報いを携えて来るとか、門を通って都に入れるように自分の衣を洗い清める者は幸いだ、とか言ってますから、lintel にアルファとオメガを刻むのは、これを思い起こさせて信仰を促す目的もあったかも知れないと私は思います。

tympanum と lintel は11世紀のものだそうです。この教会は1046年に聖別されました。

façade の横、南側に聖なる墓(The Holy Tomb)があります。

石棺(sacrophagus)は4世紀のもので、1000年前にこの修道院に届いた時、聖アブドン(Saint Abdon)と聖セナン(Saint Sennan)の聖遺物が入っていたそうです。Saint Abdon と Saint Sennan について知られているのは名前と殉教したことくらいで、詳細は分かりません。

壁に埋め込んであるのは領主(Lord) Guillem Gaucelm の彫像で、13世紀初めの彫刻家 Ramon Bianya の作品と言われているそうです。

最後に、さっきまでいた教会内の東端に戻って、ここへ来た一番の目的のフレスコ画を見ました。

façade の真裏にカウンター・アプスがあって、目的のフレスコ画は、そこです。

カウンター・アプスで大切なのは扉の上に造られた祭室(chapel)で、西側の apse に向かい合う、もう一つの聖域(sanctuary)です。聖ミカエルと大天使に捧げられていて、12世紀のフレスコ画が残っています。

フレスコ画を拡大します。

すごく色彩が豊かです。

おまけに愛嬌があります。

真面目そうな顔も良いですが

天使の生き生きした表情、柔らかそうな髪、良いじゃないですか!

愛らしいフレスコ画が待っているアルル・シュル・テクの聖マリア修道院、終わります。

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