2024年5月10日(金)、二番目に訪れたのはVigeois、Abbaye Saint-Pierre de Vigeoisです。
ここは、外観では北扉口、南小後陣や主祭室、内観では祭室や交差部の彫刻が素晴らしいです。
私は事前に役場(mairie)に5月10日に教会が開いているか問い合わせました。「はい、開いています」と返信がありました。
目次
1. Vigeois へ .
2. 概要 .
3. 平面図 .
4. 外観(南小後陣) .
5. 外観(主祭室) .
6. 内観 .
7. 外観(北扉口) .
1. Vigeois へ
ヴィジョワ(Vigeois)は、ヌーヴェル=アキテーヌ地域圏コレーズ県の村です。中央高地の西側に位置します。
オート=ヴィエンヌ県、コレーズ県とクルーズ県のあたりは、リモージュ(Limoges)を歴史的な中心地とし、リムーザン(Limousin)地方と呼ばれます。
ヴィジョワ(Vigeois)は、リモージュ(Limoges)の約55km南東、蛇行するヴェゼル(Vézère)川の左岸にあります。
教会は村の中心にあります。
2. 概要
教会の中に案内掲示がありました。私が一部を抜粋して太字で和訳します。
修道院(monastère de Vigeois)の存在を証明する最古の文献は、572年に書かれた聖アレディウス(saint Yrieix)の遺言書である。
何度も破壊された後、教会は1082年から1121年の間に再建されたようである。
百年戦争、宗教戦争、そして火災によって、建物は大きな打撃を受けた。1866年以降、後陣の一部が再建され、身廊も再建された。身廊は柱間二つ短くされ、教会を囲む広場全体が1メートル近く低くされたため、元の身廊と修道院の建物の基礎は失われた。
12世紀から15世紀頃、教会の南に食堂、南西に回廊と修道院建物があったようです。
1993年、教会周辺の排水工事中に、教会の南東部分で考古学調査が行われた。調査の結果、以下のものが発見された。
・複数の建造物の壁
・井戸
・鐘窯
・約40の埋葬
埋葬については、三つの形式に分類される。
1. 石灰岩製の石棺
2. 石壁で囲まれた墓
3. 土葬
石灰岩製の石棺は5基が発掘された。これらは最も古い埋葬のひとつであり、6世紀末から8世紀のものである。また、石壁で囲まれた建造物墓が確認されている。これらは12世紀から14世紀のものであり、6基が発掘されている。
石棺が教会の中に展示されています。
この後も、案内掲示を引用する時に太字で書きます。
3. 平面図
案内掲示による平面図です。東が上です。
水色:11世紀および12世紀
橙色:近代
白色:考古学調査が行われた場所
4. 外観(南小後陣)
東に行きます。
南翼廊にある南小後陣と、放射状祭室のうち中央の祭室に柱頭彫刻があります。
教会の中にあった案内ファイルによる、彫刻の配置図です。
柱頭1:羊飼いへの告知
柱頭2:受胎告知
柱頭3:(破壊された柱頭)
柱頭4:獅子の穴の中のダニエル
柱頭5:若きトビア
柱頭6:金持ちの死
柱頭7:金持ちとラザロ
柱頭8:ザアカイ
柱頭9:再臨
柱頭10:復活
柱頭11:聖遺物の移送
柱頭12:イエスの誘惑
柱頭13:荒れ野のイエス
柱頭14:善きサマリア人
柱頭15:(破壊された柱頭)
柱頭16:不可解な柱頭
柱頭17:謎めいた柱頭、二つのマンドルラ
柱頭18:二つの怪物の頭
彫刻19:二つの双子のライオン
柱頭20:聖ペトロと聖パウロ
案内ファイルに従って、柱頭彫刻をご紹介します。
柱頭1:「羊飼いへの告知」(『ルカによる福音書』2章)
中央に天使がいて、その両側に動物たちや杖を持った男性たちがいます。
柱頭2:「受胎告知」(『ルカによる福音書』1章)
柱頭3は、破損していて、どんな彫刻だかわからない状態です。
5. 外観(主祭室)
柱頭4:「獅子の穴の中のダニエル」(旧約聖書『ダニエル書』6章、旧約聖書続編『ダニエル書補遺 ベルと竜』)
柱頭5:トビア(旧約聖書続編『トビト記』6章4節)
左端の上にいるのが天使ラファエル、その下にいるのがトビアかもしれません。右端にいるのは悪魔だと思います。
柱頭6:金持ちの死(『ルカによる福音書』16章)
金持ちの魂は、悪魔に連れて行かれます。
柱頭7:金持ちとラザロ(『ルカによる福音書』16章)
ラザロは、できものだらけの貧しい人です。金持ちの門前にいます。金持ちの食卓から落ちる物で腹を満たしたいものだと思っています。
犬がやって来て、ラザロのできものをなめています。なんとも、哀れ。
6. 内観
教会の中に入ります。
柱頭8〜柱頭18をみます。
柱頭8:ザアカイの回心(『ルカによる福音書』19章)
イエスは右手でザアカイを示します。
『ルカによる福音書』19章
1: イエスはエリコに入り、町を通っておられた。
2: そこにザアカイという人がいた。この人は徴税人の頭で、金持ちであった。
3: イエスがどんな人か見ようとしたが、背が低かったので、群衆に遮られて見ることができなかった。
4: それで、イエスを見るために、走って先回りし、いちじく桑の木に登った。そこを通り過ぎようとしておられたからである。
5: イエスはその場所に来ると、上を見上げて言われた。「ザアカイ、急いで降りて来なさい。今日は、ぜひあなたの家に泊まりたい。」
6: ザアカイは急いで降りて来て、喜んでイエスを迎えた。
7: これを見た人たちは皆つぶやいた。「あの人は罪深い男のところに行って宿をとった。」
8: しかし、ザアカイは立ち上がって、主に言った。「主よ、わたしは財産の半分を貧しい人々に施します。また、だれかから何かだまし取っていたら、それを四倍にして返します。」
9: イエスは言われた。「今日、救いがこの家を訪れた。この人もアブラハムの子なのだから。
10: 人の子は、失われたものを捜して救うために来たのである。」
いちじく桑の木の上にザアカイがいます。
柱頭9:イエスの再臨
イエスは復活したあと昇天しましたが、再臨することがわかっています。聖書のたくさんの箇所に書いてあるからです。例えば、『マタイによる福音書』24章、『ルカによる福音書』21章27節『ヨハネによる福音書』第14章3節、『使徒言行録』1章11節、『テサロニケの信徒への手紙一』4章16節、『ヨハネの黙示録』1章7節などです。
天使たちがイエスのマンドルラを支えています。
マンドルラって、つかめるんですねえ。
柱頭10:イエスの復活(『マタイによる福音書』28章、『マルコによる福音書』16章、『ルカによる福音書』24章、『ヨハネによる福音書』20章)
体をぐにゃりと曲げているのは、イエス。十字ニンブスをつけています。
柱頭11:聖遺物の移送
柱頭12:イエスの誘惑(『マタイによる福音書』4章、『マルコによる福音書』1章、『ルカによる福音書』4章)
ビリケンさん?
柱頭13:荒れ野のイエス
イエス、カッコいい。
柱頭14:善きサマリア人(『ルカによる福音書』10章)
ソロモン王の死後、イスラエルは、エルサレムを首都とする南ユダ国とサマリアを首都とする北イスラエル王国に分裂しました。北王国は紀元前722年にアッシリアによって滅ぼされました。サマリアにはアッシリア支配下の各地から異民族が移り住み、イスラエル人と異民族との間に生まれた人々がサマリア人と呼ばれるようになります。サマリア人は信仰に忠実なユダヤ教徒とみなされず、ユダヤ人から軽蔑されていたようです。
25: すると、ある律法の専門家が立ち上がり、イエスを試そうとして言った。「先生、何をしたら、永遠の命を受け継ぐことができるでしょうか。」
26: イエスが、「律法には何と書いてあるか。あなたはそれをどう読んでいるか」と言われると、
27: 彼は答えた。「『心を尽くし、精神を尽くし、力を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい、また、隣人を自分のように愛しなさい』とあります。」
28: イエスは言われた。「正しい答えだ。それを実行しなさい。そうすれば命が得られる。」
29: しかし、彼は自分を正当化しようとして、「では、わたしの隣人とはだれですか」と言った。
30: イエスはお答えになった。「ある人がエルサレムからエリコへ下って行く途中、追いはぎに襲われた。追いはぎはその人の服をはぎ取り、殴りつけ、半殺しにしたまま立ち去った。
31: ある祭司がたまたまその道を下って来たが、その人を見ると、道の向こう側を通って行った。
32: 同じように、レビ人もその場所にやって来たが、その人を見ると、道の向こう側を通って行った。
33: ところが、旅をしていたあるサマリア人は、そばに来ると、その人を見て憐れに思い、
34: 近寄って傷に油とぶどう酒を注ぎ、包帯をして、自分のろばに乗せ、宿屋に連れて行って介抱した。
35: そして、翌日になると、デナリオン銀貨二枚を取り出し、宿屋の主人に渡して言った。『この人を介抱してください。費用がもっとかかったら、帰りがけに払います。』
36: さて、あなたはこの三人の中で、だれが追いはぎに襲われた人の隣人になったと思うか。」
37: 律法の専門家は言った。「その人を助けた人です。」そこで、イエスは言われた。「行って、あなたも同じようにしなさい。」
悪魔の厚いくちびると粋なヘアスタイル。
柱頭15:(破壊された柱頭)、柱頭16:(不可解な柱頭)
柱頭17:(謎めいた柱頭)二つのマンドルラ
右側は十字ニンブスですから、イエスだと思います。あごひげのない、若いイエス。
柱頭18:二つの怪物の頭
これらの彫刻は、かなり作風の違うものもありますから、複数の石工が手がけたと思います。
7. 外観(北扉口)
外に出て、北扉口をみます。
北扉口のアーチの内側は五つ葉のような形で、おしゃれ。
ライオンたちやワシたちが彫刻されています。
彫刻19:二つの双子のライオン
柱頭20:聖ペトロと聖パウロ
凛々しい聖人たち。
Abbaye Saint-Pierre de Vigeois。外観では北扉口、南小後陣や主祭室、内観では祭室や交差部の彫刻が素晴らしいです。
・
・
・