メル(Melle)<1>

2024年5月9日(木)、最初に訪れたのはMelle、Église Saint-Hilaireです。

ここは、川の浅瀬に佇む放射状祭室が美しいです。ファサード、三つの扉口や窓はもちろん、三身廊にも周歩廊にも豊かな彫刻があります。

Melle では、3か所に行きました。以下のように3回に分けて書きます。
<1> Église Saint-Hilaire
<2> Église Saint-Savinien
<3> Église Saint-Pierre

目次

1. Melle へ .
2. 概要 .
3. 平面図 .
4. 外観(東側) .
5. 内観(北側) .
6. 内観(身廊) .
7. 内観(周歩廊) .

1. Melle へ

メル(Melle)は、ヌーヴェル=アキテーヌ地域圏ヴィエンヌ県の町です。同県のあたりは県庁所在地であるポワティエ(Poitiers)を歴史的な中心地とし、ポワトゥー(Poitou)地方と呼ばれます。

メル(Melle)は、ポワティエ(Poitiers)の約55km北西にあります。

北西側外観

教会は、メル(Melle)の町の南側、ベロンヌ(Béronne)川の浅瀬を渡った先にあります。

2. 概要

教会の中に案内板がありました。私が一部を抜粋して太字で和訳します。

太古の昔から、神々や女神たちは泉や渓谷を好んで滞在する場所としてきた。ケルト人、ガリア人、ガロ・ローマ人は、それぞれの神々を同じ神域に祀った。古代からの伝統に忠実に、キリスト教徒はベロンヌ(Béronne)の緑豊かな河岸を選び、信仰を表明した。

11世紀には、サン・ジャン・ダンジェリ修道院(abbaye de Saint-Jean-d’Angély)の文書にこの教会が言及されており、ベネディクト会の修道士たちがここに定住した。

Saint-Jean-d’Angélyは、サント(Saintes)の約24km北東にあるサントンジュ(Saintonge)地方の町です。この教会は、ポワトゥー(Poitou)地方にありながら、地理的にも精神的にも、サントンジュ(Saintonge)地方の影響を受けやすかったようです。

この教会は二つの段階にわたって建築されたことが、様式の違いや、身廊と交差部の接合部から見て取れる。

第一段階は11世紀末で、半円アーチが用いられている。クワイヤと交差部がそれにあたる。周歩廊と放射状祭室は半ドームになっている。周歩廊には、聖遺物が安置されていた放射状祭室があり、この建造物が修道院として使われていたことを示している。 樽型アーチに覆われた交差部は、四つのアーチで区切られた正方形が特徴的で、クーポラの土台を支えている。この第一段階部分の柱頭は、その大半が19世紀にメリメ(Mérimée)によって行われた修復キャンペーン中に、植物をモチーフとして作り直された。

第二段階は12世紀前半で、高い側廊を持つ身廊がそれにあたる。均整のとれた質量は、重厚な控え壁では成し得なかった優雅さを建物に与えている。

メル(Melle)にある三つのロマネスク様式の教会のうち、この教会は最も完全な状態を保っている。この建築群は、ポワトゥー地方におけるロマネスク様式芸術のさまざまな段階を示している。サン・サヴィニアン教会(Église Saint-Savinien)の木組みの単身廊、サン・ピエール教会(Église Saint-Pierre)のヴォールトの三身廊、そしてこの教会の周歩廊とクワイヤである。

この後も、案内板を引用する時に太字で書きます。

3. 平面図

案内板による平面図です。東が上です。

案内板より

1. 放射状祭室。3. 周歩廊。4. 葉と物語で装飾された美しい柱頭:柱頭のアバクスに「Facere me aimericus rogavit」と刻まれている。「Aymeriが私に命じた」という意味である。1090年頃。5. 修復時に作られた柱頭で「TRIBERT 1856」と書かれている。6. ドーム。8. 向かい合うライオン。9. 古代の物語が刻まれた柱頭。10. グリフォンと男性。11. 植物の中の裸の男性たち。12. 向かい合うライオン。杯から水を飲む鳥。15. 典型的なロマネスク様式の四つ葉形の柱。16. 音楽家、曲芸師。17. 修道院の共同体への入り口を飾る、類稀な彫刻:知恵の書を持ち祝福するキリストが、30人の人物に囲まれている。そのほとんどがニンブスを持ち、鍵を持つ聖ペトロも含まれる。18. 四足獣。19. ハープ奏者。20. 幻想的な生き物。21. 悪魔に憑かれた人物。22. パルメットと小さな司教杖。26. パルメット、渦巻き、葉の装飾を施した柱頭が多数あり、すべて異なる。27. 生命の木、不死の象徴。28. イノシシ狩り、悪の象徴。29. 二つの胴体と人間の頭を持つ幻想的な生き物。30. ひげを生やした男性。31. 邪悪な存在であるケンタウロスが、神の愛を熱望するカテキューメンの象徴である雄鹿を殺そうとしている。32. 優美な葉の装飾を施した柱頭の一種。

4. 外観(東側)

東に行きます。

南東側外観

ベロンヌ(Béronne)川の浅瀬と放射状祭室。とても美しい眺めです。

5. 外観(北側)

北に行きます。

教会には、サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼者たちが次々と訪れた。ベロンヌ(Béronne)川の浅瀬を渡った彼らは、騎士の像を頂く豊かな北扉口を見たことであろう。

北側外観

これは、コンスタンティヌス帝の寓意で表されるメル(Melle)の領主である可能性がある。

6. 内観(身廊)

教会の中に入ります。

巡礼者たちが薄暗い教会内に入ると、南側に二つ目の扉口があり、内側に彫刻が施されているのが見えた。この建築上の洗練は、ポワトゥー(Poitou)地方のロマネスク芸術ではほぼ唯一のものである。

南側廊にて南を向く:南扉口

南扉口を下から見上げると、迫石のひとつひとつに細かい彫刻があります。

南側廊にて南を向く:南扉口

植物や鳥たち。まるで楽園のよう。

南扉口

身廊の中ほどから西を向くと、階段の上に西扉口があります。

身廊にて西を向く

側廊の装飾も美しいです。

身廊にて南西を向く

階段を上り、西扉口の位置から東を向きます。

身廊は12世紀前半につくられました。

西扉口にて東を向く

四つ葉の柱が堂々とした身廊を調和のとれた形で区切っています。

身廊にて南東を向く

柱頭には、中世の日常生活が描かれている。ハープ奏者、レスリング、見世物小屋、狩猟の場面などである。また、信仰と伝説が交錯する象徴的なテーマも描かれており、例えば、生命の樹、悪の象徴であるイノシシ、あるいは邪悪なケンタウロスなどが描かれている。281本もの装飾された柱頭の数は、12世紀のロマネスク様式の美意識の高さを物語っている。

柱頭を三つご紹介します。

柱頭1:四足獣たち
柱頭1
柱頭2:幻想的な生き物たち
柱頭2
柱頭3:ケンタウロスと雄鹿
柱頭3

邪悪な存在であるケンタウロスが、神の愛を熱望するカテキューメンの象徴である雄鹿を殺そうとしている。

7. 内観(周歩廊)

クワイヤと周歩廊をみます。

交差部にて東を向く

おしゃれなクワイヤ。

南翼廊にて北東を向く

周歩廊の柱頭のアバクス(柱頭の上に置かれてアーチを支える部分)に碑文があります。

周歩廊の柱頭

「Facere me aimericus rogavit」と刻まれている。「Aymeriが私に命じた」という意味である。

Église Saint-Hilaire。川の浅瀬に佇む放射状祭室が美しいです。ファサード、三つの扉口や窓はもちろん、三身廊にも周歩廊にも豊かな彫刻があります。

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