2024年5月19日(日)、四番目に訪れたのはSaint-Macaire、Église Saint-Sauveurです。
ここは、三つ葉型プランの三後陣に残る彫刻が素晴らしいです。
目次
1. Saint-Macaire へ .
2. 概要 .
3. 平面図 .
4. 外観(東側) .
5. 内観(北小後陣) .
6. 内観(主後陣) .
7. 内観(南小後陣) .
1. Saint-Macaire へ
サン=マケール(Saint-Macaire)は、ヌーヴェル=アキテーヌ地域圏ジロンド県にある町です。ボルドー(Bordeaux、同地域圏の首府であり同県の県庁所在地)の約42km南東にあります。
教会は、ガロンヌ川の右岸にあり、町の南端にあります。
2. 概要
教会の中に案内ファイルがありました。私が一部を抜粋して太字で和訳します。
教会は、聖マルティヌス(Saint-Martin)を守護聖人とする小教区教会と、聖救世主(Saint-Sauveur)を守護聖人とする小修道院(prieurale)教会という二つの機能を持つ。
歴史
1038年に献堂された以前の建物は、1098年にアキテーヌ公によって破壊された。
献堂の碑文のオリジナルは、かつては北壁に埋め込まれていましたが、現在は教会内に置かれています。
現在のクワイヤの建設は、ベネディクト会の指導と教皇使節でアングレーム司教の保護のもと、1123年に開始された。
1163年、修道士たちがボルドーから移され、サント・クロワ修道院(Abbaye Sainte Croix)の修道士たちに代わったため、工事は中断された。このような状況は、サン=マケール(Saint-Macaire)の共同体がボルドーの領主と対立し、3度の破門を受けたことに起因する。
その後、翼廊(小後陣)の交差部分と身廊の最初の柱間がリブ・ヴォールトで覆われ、扉口の彫刻されたティンパヌムが設置された。
建物は17世紀まで完成せず、バラ窓は15世紀にさかのぼる。オルガン・ロフトは1878年に建設された。
この後も、案内ファイルを引用する時に太字で書きます。
3. 平面図
案内ファイルによる平面図です。東が上です。
東側が最も古いです。
三後陣:12世紀半ば
身廊東側の一つの柱間:12世紀末
身廊西側の三つの柱間:13世紀
ファサードとアーキヴォルト:13世紀
鐘楼の基部:14世紀
4. 外観(東側)
東に行きます。
同じような大きさと形をした後陣が三つ葉のように並んでいます。
よく見ると、多角形です。
軒下に彫刻があります。
一部にだけメトープ(浮彫石板)があり、それらは、ルピヤック(Loupiac)の後陣にあったものに似ています。
また、柱頭彫刻も興味深いです。
大きな魚を背負う男性。
こちらは、ロット=エ=ガロンヌ県のエスクロット(Esclottes)に、よく似た柱頭があります。
5. 内観(北小後陣)
教会の中に入ります。
クワイヤの三つ葉型プランは、シリアや上エジプトで初期キリスト教時代に広まった方式を彷彿とさせる。
各後陣は、外からは多角形に見えるが、内側は半円形に見える。
この珍しいプランにはいくつかの解釈が可能である。例えば、「アウラ」または玉座の間を再現したものである可能性がある。この場合、主後陣にはキリストの臨在(玉座)、左の後陣には聖母(聖職者)、右の後陣には聖ヨセフ(信徒)が置かれる。聖母は主に「キリストの聖職者」であり、ヨセフは卓越した信徒である。信者は、主祭壇(玉座)のふもとに捧げ物を置きに来る。もともと「アウラ」の前にあった「アトリウム」(ポルティコで囲まれた中庭)は、キリスト教が信者を「神殿」に迎え入れクワイヤへと導く最初の場所であったものが、身廊に取って代わられた。
北小後陣をみます。
人物が描かれている柱頭をひとつご紹介します。
「アブラハムによる息子イサクの犠牲」(『創世記』22章)だと思います。
天使の翼が大きい。
6. 内観(主後陣)
主後陣をみます。
動物や人物が描かれている柱頭の中から、四つご紹介します。
主後陣の柱頭1
中央に奇妙な人物が座っています。胸に顔があるのかと思うほど首を前に出して、髪を乱し、歯をむき出しています。
両側に若い男性がいて、大きなものを持ち上げて片足を上げています。
やんや、やんや。
主後陣の柱頭2
2頭のライオンだと思います。
主後陣の柱頭3
「受胎告知」(『ルカによる福音書』1章)だと思います。
マリア、びっくり戸惑っているようです。
主後陣の柱頭4
中央下部では、男性が横たわり、しっかりと布がかけられています。彼の上には男性の顔があります。
どんな意味がある場面なのか、よくわかりません。
7. 内観(南小後陣)
南小後陣をみます。
動物や人物が描かれている柱頭の中から、四つご紹介します。
南小後陣の柱頭1
アトラスだと思います。
南小後陣の柱頭2
2頭の四足獣だと思います。
1頭は、肩に十字形の四つ葉をつけていて、長い胴体と首がぐにゃりと曲がっています。
かっこいい。
南小後陣の柱頭3
「獅子の穴の中のダニエル」(旧約聖書『ダニエル書』6章、旧約聖書続編『ダニエル書補遺 ベルと竜』)だと思います。
『ダニエル書補遺 ベルと竜』
33: さて、ユダヤに預言者ハバククがいた。彼はシチューを作り、パンを裂いて器に入れ、刈り入れをしている人たちに届けるため、畑に行くところだった。
34: そのとき、主の使いがハバククに言った。「あなたが持っているその食べ物を、バビロンの獅子の洞窟にいるダニエルのところに持って行きなさい。」
35: ハバククは言った。「主よ、わたしはバビロンを見たこともなく、ましてその洞窟など知りません。」
36: すると主の使いは、ハバククの頭のてっぺんをとらえ、髪の毛をつかむやいなや、息の一吹きで、彼をバビロンの洞窟の前に立たせた。
37: ハバククは大声で言った。「ダニエル、ダニエル、この食べ物を受け取りなさい。神があなたに送ってくださったのです。」
38: ダニエルは言った。「神よ、あなたは、わたしを思い出してくださいました。あなたを愛する者たちをお見捨てにならないのです。」
39: そしてダニエルは立ち上がって、それを食べた。すると神の使いはハバククを、直ちに元の場所に帰した。
中央には右手で祝福するダニエル。
ライオンたちが犬のように見えてしまうのは、きっと私の目がおかしいのでしょう。
髪の毛をつかまれるなんて、痛そう。そんなひどいめにあっても真面目な表情のハバククは、三頭身で食べ物を持っています。
南小後陣の柱頭4
たてがみを持つ四足獣だと思います。
歯をみせる。私はこの表情が好きです。
臀部に十字形の四つ葉をつけていて、頭頂部にはくるりと巻くものをつけています。
四足獣の後ろに絡みあうレースがあって、四足獣の足元にまでつながっています。
Église Saint-Sauveur。三つ葉型プランの三後陣に残る彫刻が素晴らしいです。
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