2024年5月18日(土)、最初に訪れたのはSaint-Quentin-de-Baron、Église Saint-Quentinです。
ここは、内観、外観ともに、クワイヤと後陣の彫刻が素晴らしいです。
目次
1. Saint-Quentin-de-Baron へ .
2. 概要 .
3. 航空写真 .
4. 外観 .
5. 内観 .
1. Saint-Quentin-de-Baron へ
サン=カンタン=ド=バロン(Saint-Quentin-de-Baron)は、ヌーヴェル=アキテーヌ地域圏ジロンド県にある町です。ボルドー(Bordeaux、同地域圏の首府であり同県の県庁所在地)の約23km東にあります。
北側には、ロマネスク時代よりも後に、側廊が増築されたようです。
西側に主扉口があります。
ロマネスク様式が残っているのは、身廊下部の一部、クワイヤと後陣です。
2. 概要
ゾディアック(Zodiaque)la nuit des temps『Guyenne romane』による概要です。私が一部を抜粋して太字で和訳します。
このシンプルで美しい田舎の教会は、小さな墓地の中に建っている。
12世紀には、単一の身廊と、後陣で終わるかなり長いクワイヤで構成されていたと思われるが、これはギュイエンヌ地方に数多くある質素な小教区教会、礼拝堂、小さな律修司祭館に共通するプランである。
この後も、『Guyenne romane』を引用する時に太字で書きます。
3. 航空写真
Googleマップによる航空写真です。
12世紀の建物は、二つの柱間を持つ単身廊、長いクワイヤと後陣で構成されていました。北側廊はその後に増築されたものだと思います。
4. 外観(東側)
東に行きます。
14世紀、教会は要塞化された。後陣のコーニスの上には狭間壁が残っており、かつての身廊の北側樋の上まで続いている。
かつての軒下に、彫刻された持ち送りと柱頭があります。
かつての軒下の持ち送りを五つご紹介します。
持ち送り1:樽または楽器、持ち送り2:アクロバット、持ち送り3:兎、だと思います。
持ち送り4:肩を組む2人の人物、持ち送り5:何かを口にする狼、だと思います。
かつての軒下の柱頭を四つご紹介します。
柱頭1:パルメット、柱頭2:丸い果実、だと思います。
葉に包まれた丸い果実のような形は、カンタブリア(Silió)やカスティーリャ(Tabliega、San Pantaleón de Losa)などで見かけた彫刻を思い出します。
柱頭3:人魚たち、柱頭4:葉を吐く顔たち、だと思います。
人魚たちの柱頭は、ラ・ソーヴ(La Sauve)のものに似ています。おそらく、「ラ・ソーヴ・マジュールの親方(Maître de La Sauve-Majeure)」の弟子による彫刻なのだと思います。
窓の高さにも、彫刻があります。
馬だと思います。タレ目です。
ライオンと雄牛、だと思います。
後陣中央窓下の浮き彫りは、聖クインティヌス(Saint Quentin)の生涯を描いたものかもしれません。
左側に座って足を組んでいる人物は、おそらくマクシミアヌス帝の代理人であるリクティオアヴァレ(Rictiovare)で、ヴェルマンドワ(Vermandois)の福音伝道者を呼び出し、神々に犠牲を捧げるよう説得しているところである。聖人の身体は、まさに失われた部分に彫られていたと思われ、長方形の石とモルタルに置き換えられている。しかし、右側に残っている、木陰に立つ男に抱えられた肩と腕の部分、そして、場面中央で、もう片方の手を握っている処刑人の身体の一部は、聖人が拷問台に磔にされていることを示している。最後に、上段には、斬首されたクインティヌス(Quentin)の血まみれの首から抜け出したばかりの「純白の鳩」の姿をした殉教者の魂が描かれ、雲の間に浮かぶ神の手が、2人の天使の間にあって、次のような言葉を形に表している。「クエンティンよ、我がしもべよ、来たりて汝のために用意した王冠を受けよ。汝を護り、汝を勝利に導いて天上のエルサレムへと導く天使たちのクワイヤを見よ」。
5. 内観
教会の中に入ります。
柱間二つの長いクワイヤと後陣に、ロマネスク彫刻が残っています。
柱頭彫刻をみます。
クワイヤには六つの柱頭があり、そのうち三つに物語性のある場面が描かれています。
クワイヤの柱頭1
勝利アーチ北側の柱頭:「イエスの洗礼」(『マタイによる福音書』3章、『マルコによる福音書』1章、『ルカによる福音書』3章)、ドラゴンを倒す聖ミカエル、「獅子を裂くサムソン」(『士師記』14章)、だと思います。
クワイヤの柱頭2
勝利アーチ南側の柱頭:ケンタウロス、「獅子の穴の中のダニエル」(旧約聖書『ダニエル書』6章)、ケンタウロス、だと思います。
クワイヤの柱頭3
クワイヤ中央南側の柱頭:「アブラハムによる息子イサクの犠牲」(『創世記』22章)だと思います。
後陣の柱頭を二つご紹介します。
後陣の柱頭1
2人の若い男性が、何かにからまっています。
この柱頭は、ラ・ソーヴ(La Sauve)のものに似ています。
後陣の柱頭2
向かって左は財布を首から下げた男性と悪魔、向かって右は裸足の女性、が描かれていると思います。
この教会は、窓の高さにも、印象的な彫刻があります。
大きく口を開けた男性が、クワイヤに向けて、本を広げています。
表情豊かな顔をした修道士が彫られている。尖った髭、生き生きとした目、大きく開いた口。修道士の手には開かれた本が掲げられ、そこには大きな文字で次のような碑文が刻まれている:CANTA DEBE DEBE 。
「あなたは歌わなければならない」という意味かなと思います。
とても生き生きしています。
Église Saint-Quentin。内観、外観ともに、クワイヤと後陣の彫刻が素晴らしいです。
・
・
・