セナック=エ=サン=ジュリアン(Cénac-et-Saint-Julien)

2024年5月14日(火)、二番目に訪れたのはCénac-et-Saint-Julien、Église Notre-Dame-de-la-Nativité de Cénac-et-Saint-Julien です。

ここは、交差部より東の12世紀につくられた部分に残された彫刻が素晴らしいです。外観では持ち送りと窓装飾、内観では柱頭です。

私は事前に役場(mairie)に5月14日に教会が開いているか問い合わせました。「はい、開いています。」との返信がありました。

目次

1. Cénac-et-Saint-Julien へ .
2. 概要 .
3. 平面図 .
4. 外観 .
5. 内観(交差部) .
6. 内観(北小後陣) .
7. 内観(クワイヤ) 
8. 内観(南小後陣) .

1. Cénac-et-Saint-Julien へ

Cénac-et-Saint-Julien は、ヌーヴェル=アキテーヌ地域圏ドルドーニュ県の村です。広い県で、国内第3位の面積を持ちますが、面積の約45%が森林で占められているそう。

同県のあたりは県庁所在地であるペリグー(Périgueux)を歴史的な中心地とし、ペリゴール(Périgord)地方と呼ばれます。ペリゴールといえば美食で、フォワグラやトリュフが有名です。

Cénac-et-Saint-Julien は、ペリグー(Périgueux)の約57km南東にあります。

南西側外観

教会は、セナック(Cénac)の集落から少し西に外れた場所にあります。

2. 概要

教会の中に案内掲示がありました。私が一部を抜粋して太字で和訳します。

セナック(Cénac)教会は、11世紀末にクリュニー会モワサック修道院(abbaye clunisienne de Moissac)の庇護を受ける小修道院(prieuré)であった。14世紀初頭には、修道院としての性格は消えていた。

教会の最も古い部分は12世紀初めのものである。

教会は、1378年に略奪され、一部が破壊された。1589年、鐘楼、北翼廊と身廊の一部が破壊された。

17世紀と18世紀には、身廊の東側、後陣、後陣のみが礼拝のために保存された。前世紀の終わりと今世紀の初めに、教会は「建設当時の状態」を再現するために修復された。古い要素が再利用された。例えば、扉口に挿入された大理石の柱は、近くにあったガロ・ローマ時代のヴィラから運ばれたものであろう。

44の柱頭と18の持ち送りは、そのほとんどが具象的な主題を持ち、12世紀の聖なる芸術を代表するものである。「これはペリゴール地方で最も美しいとは言えないまでも、最も不思議な柱頭群のひとつである。動物の数、種類の多さ、そしてその出来栄えにおいて、この地方で最も写実的で生き生きとしたロマネスク様式の獣戯画である」(Jean Secret)。

Jean Secret はゾディアック(Zodiaque)la nuit des temps『Périgord roman』の著者です。

この後は、ゾディアック(Zodiaque)la nuit des temps『Périgord roman』を引用する時に太字で書きます。

3. 平面図

ゾディアック(Zodiaque)la nuit des temps『Périgord roman』による平面図です。東が上です。

『Périgord roman』より

黒色:12世紀、
斜線:近代

4. 外観

東に行きます。

教会の東は墓地です。

北東側外観

持ち送りが楽しいです。四つご紹介します。

持ち送り1:音楽家、持ち送り2:鳥、だと思います。

持ち送り1
持ち送り2

持ち送り3:男女、持ち送り4:怪物の顔、だと思います。

男女は足をからめあっているようです。

持ち送り3
持ち送り4

主後陣があり、南北の翼廊にそれぞれ小後陣があります。

東側外観

主後陣の窓の装飾も美しいです。

主後陣の窓

植物をあしらったアーチが素敵です。

5. 内観(交差部)

西扉口から教会の中に入ります。

この教会の素晴らしさは、12世紀に建てられた部分に残された彫刻にあります。

身廊にて東を向く

交差部から手前(西側)は、近代につくられた部分です。

でも、交差部の柱のひとつは、その基部に豊かな装飾があります。

変な顔もついています。

交差部北西の柱の基部

交差部から西は近代に建てられている中で、これだけが異質です。再利用された彫刻かもしれません。

6. 内観(北小後陣)

このあとは、12世紀に建てられた部分に残された柱頭彫刻をみます。

まず、北小後陣からひとつ。

柱頭1

アララト山にあるノアの方舟かもしれない。

柱頭1

7. 内観(クワイヤ)

勝利アーチの柱頭です。

柱頭2

北側のものは、羊飼いたちあるいは東方三博士の礼拝を認識するのが難しいほど破損している。

柱頭2
柱頭3

南側のものは損傷が少なく、「ラザロの復活」が描かれている。

「ラザロの復活」(『ヨハネによる福音書』11章)

左側には、本を持つ3人の男性がいます。3人の男性の前にイエスがいます。中央のうろこ状のものは石棺の蓋だと思います。右側には2人の女性がいて、そのうちの一人は鼻をつまんでいるようです。

柱頭3

続いて、クワイヤの奥(後陣)の柱頭から四つご紹介します。

柱頭4

ダニエルが獅子たちの口に手を入れ、他の獅子たちがダニエルの足を舐めている。

「獅子の穴の中のダニエル」(旧約聖書『ダニエル書』6章)

獅子たち、かわいい。

アバクス(柱頭の上に置かれてアーチを支える部分)の彫刻は、交差部北西の柱の基部の彫刻に似ています。

柱頭4
柱頭5

中央のあごひげの男性は、首から財布を下げています。

柱頭5

歯をくいしばる。

柱頭5(別角度)

柱頭6

鳥たちと獅子たち。

なんとも、愛嬌のある顔つき。

柱頭6

口が大きい。

柱頭6(別角度)
柱頭7

猿の興行師のようです。

興行師の胸がふくらんでいるようです。もしかすると女性かもしれません。

柱頭7

アバクス(柱頭の上に置かれてアーチを支える部分)の彫刻は、外側の窓のアーチの彫刻に似ています。

8. 内観(南小後陣)

最後に、南小後陣からひとつ。

柱頭8

「獅子の穴の中のダニエル」(旧約聖書『ダニエル書』6章)、だと思います。

柱頭8

指先の爪はするどいのに、獅子たちの顔はかわいいです。

Église Notre-Dame-de-la-Nativité de Cénac-et-Saint-Julien。交差部より東の12世紀につくられた部分に残された彫刻が素晴らしいです。外観では持ち送りと窓装飾、内観では柱頭です。

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