2024年5月10日(金)、三番目に訪れたのはArnac、Église Saint-Pierreです。
ここは、教会の中の柱頭彫刻が素晴らしいです。
私は事前に役場(mairie)に5月10日に教会が開いているかを問い合わせました。「いつも通り開いています。」との返信がありました。
目次
1. Arnac へ .
2. 概要 .
3. 平面図 .
4. 外観 .
5. 内観(身廊) .
6. 内観(クワイヤ、祭室) .
1. Arnac へ
アルナック(Arnac)は、ヌーヴェル=アキテーヌ地域圏コレーズ県の集落です。中央高地の西側に位置します。
オート=ヴィエンヌ県、コレーズ県とクルーズ県のあたりは、リモージュ(Limoges)を歴史的な中心地とし、リムーザン(Limousin)地方と呼ばれます。
アルナック(Arnac)は、リモージュ(Limoges)の約48km南にあります。
2. 概要
教会の中に案内掲示がありました。私が一部を抜粋して太字で和訳します。
この地には、おそらくガロ・ローマ時代から人が住んでいたと思われる。
11世紀初頭、最初の城塞を建設したギー・ド・ラストゥール(Guy de LASTOURS)とその妻アンガルシ・ド・マレモール(Engalcie de MALEMORT)が、聖ペトロに捧げられた教区教会を再建し、小さな修道院(monastère)を創設した。
この修道院は、ある夜サルラ(SARLAT)で盗まれた聖パルドゥルフス(St. PARDOUX)の聖遺物のおかげで、すぐにその名を知られるようになった。その後まもなく、サン・マルシャル・ド・リモージュ修道院(abbaye de St. MARTIAL de LIMOGES)に寄贈され、重要な司教区となった。1028年7月15日、司教が聖域を聖別し、ラストゥール(LASTOURS)家、そしてヘリー・ド・ポンパドゥール(HELIE de POMPADOUR)家の共同墓地となった。
しかし、1102年にも司教が聖別していることから、その理由は不明であるが、破壊か拡張か再建が行われたことがわかる。この教会は聖パルドゥルフス(St. PARDOUX)に捧げられている。
12世紀末、修道院(monastère)は14人または15人の修道士たちによって繁栄した。しかし、百年戦争と宗教戦争の間に厳しい試練にさらされ、衰退の一途をたどった。15世紀半ばには、ほぼ廃墟と化していた。そしてついに18世紀初頭、修道院はリモージュの聖マルシャル(chapitre de St. MARTIAL de LIMOGES)と合併した。
この後も、案内掲示を引用する時に太字で書きます。
3. 平面図
案内掲示による平面図です。東が上です。
黒色:12世紀
斜線:13世紀
4. 外観
東に行きます。
三つの放射状祭室は、主祭室がやや大きいです。
5. 内観(身廊)
教会の中に入ります。
単身廊の柱間は三つ。
柱頭に彫刻があります。
案内掲示に従って、柱頭彫刻を八つご紹介します。
柱頭1
リンゴ:楽園の象徴
この葉に包まれた丸い果実のような形は、カンタブリア(Silió)やカスティーリャ(Tabliega、San Pantaleón de Losa)などで見かけた彫刻を思い出します。
柱頭2
2頭の獅子に挟まれた男性:このテーマは三つの柱頭に繰り返されている。
柱頭3
「獅子の穴の中のダニエル」:このテーマは繰り返されているが、この柱頭の男性はキリスト教的な祈りを捧げる姿であり、試練を楽園に変えている。
「獅子の穴の中のダニエル」(旧約聖書『ダニエル書』6章)
柱頭4
ザアカイの回心:『ルカによる福音書』19章1節〜10節。このテーマはヴィジョワ(Vigeois)でも表現されている。
『ルカによる福音書』19章
1: イエスはエリコに入り、町を通っておられた。
2: そこにザアカイという人がいた。この人は徴税人の頭で、金持ちであった。
3: イエスがどんな人か見ようとしたが、背が低かったので、群衆に遮られて見ることができなかった。
4: それで、イエスを見るために、走って先回りし、いちじく桑の木に登った。そこを通り過ぎようとしておられたからである。
5: イエスはその場所に来ると、上を見上げて言われた。「ザアカイ、急いで降りて来なさい。今日は、ぜひあなたの家に泊まりたい。」
6: ザアカイは急いで降りて来て、喜んでイエスを迎えた。
7: これを見た人たちは皆つぶやいた。「あの人は罪深い男のところに行って宿をとった。」
8: しかし、ザアカイは立ち上がって、主に言った。「主よ、わたしは財産の半分を貧しい人々に施します。また、だれかから何かだまし取っていたら、それを四倍にして返します。」
9: イエスは言われた。「今日、救いがこの家を訪れた。この人もアブラハムの子なのだから。
10: 人の子は、失われたものを捜して救うために来たのである。」
いちじく桑の木の上にザアカイがいます。なんだか、陽気な姿。
柱頭5
受胎告知:残念ながら断頭されているが、聖母と大天使ガブリエルは、それぞれマンドルラに守られており、大きな力を与えている。
ガブリエルの翼も上部がありません。全体的に上部が断ち落とされているようです。
柱頭6
聖マルティアリス(SAINT MARTIAL)の奇跡:この生涯の場面は、リムーザン地方でよく見られる。
聖マルティアリス(SAINT MARTIAL)はリモージュの初代司教です。
この柱頭6と柱頭4は、人々の体をくねらせて描くところなどが共通していて、同じ石工が手がけたのかなと思います。
もっと言えば、ヴィジョワ(Vigeois)の柱頭10「イエスの復活」(あの、体をぐにゃりと曲げているイエス)を手がけたのも同じ石工かもしれないなと思います。
6. 内観(クワイヤ、祭室)
柱頭のご紹介は、クワイヤの勝利アーチへと続きます。
柱頭7
聖マルティアリス(SAINT MARTIAL)と聖ペトロ:勝利アーチの右(南)側には、二人の聖人のマンドルラがあり、一人目は象徴的な鍵、二人目は司教杖を持つ。
司教杖、マンドルラを突き抜けちゃう。
柱頭8
2頭の獅子に挟まれた男性:勝利アーチの左(北)側、これは、このテーマの三番目の表現である。裸の男は悪の象徴なのだろうか?
男性は、獅子たちに足を押さえられています。
最後に、特に案内掲示にとりあげられていない柱頭をひとつご紹介します。放射状祭室にあるものです。
頭と頭をくっつけています。
かわいい。
Église Saint-Pierre。教会の中の柱頭彫刻が素晴らしいです。
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