2023年8月17日(木)に唯一訪れた Cividale del Friuli で、次に Museo Cristiano e Tesoro del Duomo に行きます。
ここは、8世紀前半の浮き彫りが素晴らしいです。有名な「ラチスの祭壇(L’Ara di Ratchis)」があります。11世紀前半の聖杯も素晴らしいです。
2023年は、4月1日から9月30日は水曜から日曜の10:00〜13:00と15:00〜18:00、10月1日から3月31日は水曜から日曜の10:00〜13:00と14:00〜17:00に開きました。
有料です。Museo Cristiano e Tesoro del Duomo だけの入場券は€6。私は三つの博物館(Monastero di S. Maria in Valle e Tempietto Longobardo + Museo Cristiano e Tesoro del Duomo + Museo Archeologico Nazionale)の統合入場券(€9)を買いました。
Cividale del Friuli では、3か所に行きました。以下のように3回に分けて書いています。
<1> Monastero di Santa Maria in Valle e Tempietto Longobardo
<2> Museo Cristiano e Tesoro del Duomo
<3> Museo Archeologico Nazionale
目次
1. Museo Cristiano e Tesoro del Duomo へ .
2. 概要 .
3. ラチスの祭壇(L’Ara di Ratchis) .
4. カリストゥスの洗礼堂(Il Battistero di Callisto) .
5. その他(11世紀までの作品) .
5-1. 聖遺物箱(8世紀末から9世紀初め) .
5-2. 聖遺物箱(9世紀末から10世紀初め) .
5-3. 聖体皿と聖杯(11世紀前半) .
1. Museo Cristiano e Tesoro del Duomo へ
私は Tempietto Longobardo から南西に約350メートル、5分ほど歩いて、大聖堂にある博物館に着きました。11:30頃のことです。
博物館の門は鐘楼の近くにあります。
博物館に入ると、受付があり、隣に展示室1があります。
8世紀前半の二つの作品に捧げられている部屋です。
ここに「ラチスの祭壇(L’Ara di Ratchis)」があります。
2. 概要
博物館の受付で案内シートを貸し出していました。また、館内に説明が掲示してありました。私が一部を抜粋して太字で和訳します。
最初の部屋は、8世紀前半に制作されたロンゴバルド美術の重要な2つの作品に捧げられている。
総主教座と Cividale の歴史が掲示してありました。
総主教(Patriarca)と呼ばれた最初の司教:
558年、パウリヌス1世(Paolino I)がアクイレイアの新司教に選出される。パウリヌス1世(在位558-569年)は、アレクサンドリア、アンティオキア、ローマ、コンスタンチノープルなどの大都市を統括する司教に与えられる総主教(Patriarca)の称号を初めて与えられた。568年、総主教は Cividale を征服したロンゴバルド人を恐れ、アクイレイアからグラード島に避難した。
これには、宗教的、政治的な背景があります。アクイレイア教会は最初の司教が使徒マルコの弟子であるとの伝承があり、使徒的起源を主張することでローマ教皇からの実質的な自治権を維持していました。でも、553年の公会議でローマ教皇との距離が拡大します。そうした中、7世紀初めにグラードに避難した総主教がローマ教皇と和解。これを受けてアクイレイアでは新たに総主教を選出し、2人の総主教が並び立つ事態に発展します。アクイレイアを拠点とする総主教はロンゴバルド王国の保護を受け、グラードを拠点とする総主教はビザンチン帝国の保護を受けました。7世紀末に2人の総主教が並び立つ事態はおさまりましたが、総主教が各地に居住していても総主教の宮殿はアクイレイアとされ続けました。
Cividale に定住した最初の総主教:
トレヴィーゾ出身のカリストゥス(Callisto、在位730-756年)が総主教となった。カリストゥスは Cividale に居を構え、ロンゴバルド公国との長期にわたる協力関係を開始した。それはやがて、フリウリに類まれな文化的ルネッサンスをもたらすことになる。
カリストゥスは756年に死去し、ロンゴバルド出身として初の総主教となったシグアルド(Sigualdo、在位756-786年)が後を継いだ。
どうやら「ラチスの祭壇(L’Ara di Ratchis)」が作られた頃、総主教(Patriarca)はここCividale にいたようです。
この後も、案内シートや説明掲示を引用するときに太字で書きます。
3. ラチスの祭壇(L’Ara di Ratchis)
「ラチスの祭壇(L’Ara di Ratchis)」は、四面に彫刻が施された石灰岩製の六面体で、ロンゴバルド公ラチス(Ratchis)が父ペンモーネ(Pemmone)を偲んで注文したものである(祭壇の上部に刻まれた献辞の碑文がそれを示している)。
正面には、天使に囲まれて座るイエスが描かれています。
天使たちの手腕の大きいこと、足の小さいこと。それでいて全体の調和が絶妙です。
北方蛮族の矜持が炸裂。実に爽快です。
よくみると、イエスの衣服や天使の翼などに、わずかに彩色のあとがあります。
祭壇は当初、ガラス・ペースト、おそらく金箔、彩色で仕上げられた。
博物館では、プロジェクション・マッピングで復元予想図を示します。
青色や金色がふんだんに使われています。高額だったことでしょう。でも、私が身近な人たちに二つの画像を見せて聞いてみたところ、圧倒的に彩色のない状態の方が人気でした。やっぱり現代人としては、そうですよね。
こちらの側面には「ご訪問」(『ルカによる福音書』1章)が描かれています。
額に十字形が描かれている方が聖母マリアで、もう一方がエリサベトだと思います。
背面には、二つの十字架が描かれ、聖遺物箱の開口部があります。
こちらの側面には「東方三博士の礼拝」(『マタイによる福音書』2章)が描かれています。
聖母マリアがひときわ大きく描かれていて、威厳があります。また、イエスはまだ赤ちゃんのはずなのに、すごく立派な姿で描かれています。厳かで尊いものとして描くために、わざと現実ばなれした描き方をしたように思います。
植物や星がいっぱい描かれていて、とても美しいです。
Tempietto Longobardo と比べると、つくられた場所も時期もほぼ同じなのに、こうも様式が違うことに驚きます。
注文者(ときの権力者)の意向が反映された結果かもしれません。
4. カリストゥスの洗礼堂(Il Battistero di Callisto)
展示室1のもう一つの重要な作品は、洗礼盤です。
二つの彫刻パネル(シグアルドの仕切りと、聖パウリヌスの仕切りと呼ばれる断片でその背面部分は壁に掛けられた石膏パネルに再現されているもの)を持つ全浸礼の八角形の水盤と、洗礼を暗示する場面が描かれた天蓋の二つの部分で構成されており、天蓋はその上に奉納の碑文が刻まれていて、おそらく再利用されたコリント式の柱頭で終わる8本の大理石の柱で支えられている。
「聖パウリヌスの」呼ばれている仕切りです。
石膏で再現した背面がこちら。4匹の蛇などが描かれています。
うにょうにょ。
シグアルド(Sigualdo)の仕切りがこちら。
四福音書記者の象徴が描かれています。
もうね、独特の造形にただ惚れ惚れします。
5. その他(11世紀までの作品)
博物館には、展示室1の他に三つの展示室があり、18世紀までの作品がたくさん展示してあります。
それらの中から、11世紀までの作品をご紹介します。
5-1. 聖遺物箱(8世紀末から9世紀初め)
聖遺物箱(銀箔に打出細工、8世紀末から9世紀初め)
美しい石があしらわれています。しかも、石が残っているところが良い。
5-2. 聖遺物箱(9世紀末から10世紀初め)
聖遺物箱(銀箔に打出細工、9世紀末から10世紀初め)
家のような形の箱で、アーチの下にイエスや聖人たちが描かれています。
5-3. 聖体皿と聖杯(11世紀前半)
聖金曜日の礼拝に使われた聖体皿と聖杯(銀に金箔、11世紀前半)
S字型の取っ手には神に犠牲(捧げ物)を差し出すメルキゼデクとアベル、台座にはビュラン(金属彫刻刀)で彫られた四福音書記者の姿が描かれています。
杯の平らな面は無地のまま残して、台座の曲がった面にビュラン(金属彫刻刀)で繊細に彫ってあるんです。おしゃれでかっこいい。
Museo Cristiano e Tesoro del Duomo。8世紀前半の浮き彫りが素晴らしいです。有名な「ラチスの祭壇(L’Ara di Ratchis)」があります。11世紀前半の聖杯も素晴らしいです。
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