コルタッツォーネ(Cortazzone)

2023年8月2日(水)の最後、三番目に訪れたのは Cortazzone、Chiesa di San Secondo です。

ここは、私がすごく来たいと思っていた教会です。外観では不思議な人物たちや乳房の浮き彫りに驚かされ、内観では身廊の柱頭彫刻に心を奪われます。

教会は土曜、日曜と祝日の9:00〜19:00に開きます。また、以下の3ヶ所で教会の鍵を借りることができます。1: 教会近隣の個人宅、2: ガソリンスタンド(Benzinaio)3: ピザ屋(IL PUFFO)

目次

1. Cortazzone へ .
2. 概要 .
3. 平面図 .
4. 西側外観:ファサード .
5. 南側外観:乳房と不思議な人物たち .
6. 東側外観:乳房とアクロバット .
7. 内観:柱頭彫刻 .

1. Cortazzone へ

私はモンテキアロ・ダスティ(Montechiaro D’asti)から南西に約10km、13分ほど運転して、ガソリンスタンド(Benzinaio)で一旦停車しました。教会の鍵を借りるためです。ガソリンスタンド(Benzinaio)の住所は Via Casale, 1, 14010 Cortazzone AT です。

身分証明書と引き換えに教会の鍵を借り、私は Chiesa di San Secondo を目指しました。

Chiesa di San Secondo は、Cortazzone 村の中心地から1kmほど離れた標高241mの Mongiglietto の丘の上に建っています。

北西部外観

緑の丘の中心に、荘厳な風景に溶け込むように建っています。

2. 概要

教会の中に小冊子が売られていました。私が一部を抜粋して太字で和訳します。

12世紀以来、政治的に Pavia の司教に依存していた Cortazzone 城(Curtis Azonis)を中心に14世紀までに発展した集落からかなり離れているにもかかわらず、16世紀になってもなお教区教会であったこの有名な教会については、ほとんど知られていない。

建築の特徴(赤いレンガと白い石を組み合わせていること、盲アーチや窓の装飾)がMontiglioCavagnoloMontechiaro d’Asti と似ています。12世紀の建物だと思います。

1223年まで Fruttuaria 修道院に属する San Secondo della Torre Rossa di Asti のベネディクト会修道院が領内に存在していたことから、 Cortazzone の教会も元々はベネディクト会修道院に属していたとする説が(文書記録にはないが)後を絶たない。

この後も、小冊子を引用するときは太字で書きます。

3. 平面図

小冊子による平面図です。東が右です。

小冊子による平面図

19世紀末に行われた修復工事で、外周の外側にある二つ目のアーチのところに、長方形に配置された土台が発見された。鐘楼の存在が推測される。

北側の鐘楼が12世紀のものだったなら、きっと美しいロマネスク様式だったことでしょう。

4. 西側外観:ファサード

ファサードは、白い石の上にレンガが積まれています。

レンガの頂上には、17世紀に建てられた小さな鐘楼がある。

北西側外観

小さい盲アーチのひとつに、面白い浮き彫りがあります。

動物が逆さまでアーチに掴まっているように見えます。

ファサード

5. 南側外観:乳房と不思議な人物たち

南側に行きます。

南側外観

あちこちに興味深い装飾がたくさんあります。

南側外観

南扉口の右に描かれているのは、鷹でしょうか?

なんだか、かわいい。

南側外観

上部をみます。

左から。

植物のような装飾や、乳房が描かれています。

南側外観

乳房の右、南扉口の上の位置には、リボンのような装飾や市松模様があります。

南側外観

そして、不思議な人物たちが描かれています。

もしかすると、性交を描いているのかもしれません。

簡略化された特殊な性器の描かれ方や憂いのない表情をみていると、安産、多産や子孫繁栄を願うもののように感じます。異教的ですが。

不思議な人物たち

異教的といえば、 Montiglio の案内掲示に興味深いことが書いてありました。ここ Asti 県のあたりはキリスト教化が比較的遅かったというのです。また、7世紀から11世紀にかけて記録されている地名に「Curte」を冠する名前が多いことも書いてありました。「Curte」は自給自足の農村生産単位を示します。時代を経て「Curte」は 「Corta」と呼ばれるようになりました。ここCortazzone も、かつては自給自足の農村だったのだと思います。そして、農村では、キリスト教はなかなか広まりませんでした。住民のほとんどが新しい教団に消極的で、宗教的、家族的、社会的伝統に固執していたからです。そんな土地柄だから、こういう先史時代的な魅力ある浮き彫りが南扉口の上にバーンと置かれちゃうのかも。

さて、見学に話を戻します。

不思議な人物たちの右には、鳥がいます。

鳥の足と尻尾の間に丸いものが描かれています。もしかすると、卵かもしれません。

南側外観

植物や動物や不思議な人たち、いずれも生き生きとした様子です。

6. 東側外観:乳房とアクロバット

東側に行きます。

南東側外観

南小後陣に乳房が描かれています。

南小後陣

乳房といえば、ロンバルディア州🇮🇹の Gravedona のファサードにも描かれていました。現地の案内掲示には「乳房(=精神的な糧)」と書いてありましたが、こちらでも同様なのでしょうか。

主後陣には、アクロバットをしているような男性がいます。

主後陣

男性のベルトや体を反らせる様子が、カンタブリア州🇪🇸の CervatosBolmir などの持ち送りに描かれていた男性たちに似ています。いずれも12世紀前半の建築です。

三後陣には、軒下の市松模様、盲アーチ、柱頭に付け柱、赤い石と白い石によるノコギリの歯のような模様の帯があります。

東側外観

7. 内観:柱頭彫刻

教会の中に入ります。

わお。

身廊にて東を向く

柱頭彫刻が、すごい。

ファサードの裏側の半円柱の柱頭も、力作です。

身廊にて西を向く

北西側から順に柱頭彫刻をみます。

1: 貝殻とコルヌコピア(果物や花を詰めた角)、2: トサカと翼のある生き物、だと思います。

手元の伊和辞典によると「コルヌコピアはゼウスに乳を与えた山羊のアマルティアの角が原義で、豊穣の象徴」です。

1
2

3: 四つの面に描かれています。ウサギ、ロバかイヌ、2匹の魚、植物、だと思います。

小冊子には「二つの面に大きなウサギ」と書いてあるのですが、私には、向かって右はロバかイヌのように見えます。顔と尻尾が長いから。長い耳はロバのようで、4本の足に指があるところはイヌのようです。

そんなことより、ウサギがかわいい。

3(ウサギ、ロバかイヌ?)

2匹の魚の間に描かれている放射状の線は、バスク州🇪🇸の Contrasta で見たローマ時代の墓碑を思い出します。

3(2匹の魚)
3(植物)

4: 三つの面に描かれています。花、十字架、頭が一つになった2羽の鳥、だと思います。

4(花?)

2羽の鳥は水を飲んでいるようです。

4(十字架)
4(頭が一つになった2羽の鳥)

5: 四つの面に描かれています。頭が一つになった2羽の鳥が4組います。そのうち2組の上には、変な顔が描かれています。変な顔その1は片手を挙げています。

5(頭が一つになった2羽の鳥と変な顔その1)

変な顔その2は、ハンサムです。

5(頭が一つになった2羽の鳥と、変な顔その2)

北側には変な顔は描かれていません。魚が1匹確認できます。水玉模様は、水を表しているようです。

5(北東側)
5(北西側)

6: 4匹の二股人魚だと思います。

6(北西側)
6(南東側)

7: 三つの面に描かれています。二股人魚、(下部に植物がある他は)描かれていない面をはさんで、四足獣、魚と2頭の馬と人面、だと思います。

私は二股人魚のちからづよい腕や両手が好きです。

7(二股人魚)
7(下部に植物)
7(四足獣)
7(魚と2頭の馬と人面)

8: 四つの面に同様に植物のようなものが描かれています。

8(南東面)
8(北西面)

9と10は、内陣の柱頭です。

9: 四つの面に同様に貝殻とコルヌコピア(果物や花を詰めた角)が描かれています。ファサード裏にある柱頭1に似ています。コルヌコピアは豊穣の象徴です。

柱頭の上にあるアーチの足と、柱頭の下にある円柱とは、軸線がずれています。これで良かったのかな?

9(南西面)
9(北東面)

10: ネッキングに帯装飾があるだけで、四つの面には何も彫刻されていません。

10(北西面)
10(南東面)

内陣の柱頭がこれほどに簡素なのは少し違和感がありますが、かえって神秘的な空間に仕上がっている気がします。

身廊にて東を向く

Chiesa di San Secondo。私がすごく来たいと思っていた教会です。外観では不思議な人物たちや乳房の浮き彫りに驚かされ、内観では身廊の柱頭彫刻に心を奪われます。

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