バルドーネ(Bardone)<2>

Bardone の Pieve di Santa Maria Assunta、続きです。外観を眺め終わった頃、鍵を持っている人が来てくれました。

話を聞けば、ご婦人(以後シニョーラを呼びます)は、これから5人分のランチを用意しないといけないから、すごく急いでいる!とのこと。

となれば私は、きりきり舞いの大急ぎで、見学しなければなりません。

覚悟を決めて、いざ、教会の中に入ります。

まるで美術館のよう

内部は、西側半分にロマネスク彫刻が展示してあります。

教会内観、南東を向く。

教会のフロアプランはこうです。

ゾディアック(Zodiaque)の『la nuit des temps』によるフロアプラン。東が上。

北側に、13世紀の教会の柱が残っています。

教会内観、北東を向く。

切り石を積んだ円柱です。

北側の柱

北側には、柱の他にも遺構があります。

鐘楼の基部の床下を発掘調査したところ、部屋全体に沿って斜めに配置された巨大な壁構造の跡が見つかりました。

巨大な壁構造の跡

おそらく聖所建設の最も古い段階に関連するものと考えられています。

シニョーラが「まだ終わらないかしら?」と首を長くしていたので、私は大急ぎでロマネスク彫刻の写真を撮り、あとから写真をじっくりみました。

ロマネスク彫刻

ロマネスク彫刻のいくつかは、13世紀前半の20年間に作られ、フォルノヴォの教区教会にあったもので、16世紀末に解体された説教壇の一部でした。

かつての姿の予想図が展示してありました。

13世紀の説教壇(予想図)

支柱を背負っていた2頭のライオンたち。1頭は損傷していますが、もう1頭はかなり良い表情です。

柱を背負っていた2頭のライオンたち

現地では、2頭のライオンたちの隣(西側)に2体のアトラスが展示してあります。

2体のアトラス

「もう800年もこの調子だ。なかなか、くたびれるんですぜ?」などと言っていそう。

2体のアトラス

見る角度によって印象が違うのも面白いです。

2体のアトラス

2体のアトラスの隣(北側)には、3体の人物像が展示してあります。

柱部分にあったらしい人物像たち

アンティオキアのマルガレタ(伊:Margherita di Antiochia)の像が、説教壇を支えるカリアティード(女像柱)として使われていたと考えられています。

現地にあった案内によると、この説教壇の作者を「聖女マルガレタの親方」(伊:maestro di Santa Margerita)と呼んでいるのだそう。

アンティオキアのマルガレタ像

ヤコブス・デ・ウォラギネの書いた『黄金伝説』の記述によれば、聖女マルガレタはアンティオキア(現在のトルコ共和国)の出身。異教の神官テオドシオスの娘でしたが、洗礼を受けます。マルガレタの真珠のような美しさをみた長官オリュブリオスは、妻に迎えようと考え、同じ神々を拝むよう言いますが、マルガレタはこれを拒絶し、拷問されて殉教します。

このあたりは、聖女殉教の定番コースでしょう。「美しい乙女が異教徒のおえらいさんに見染められて拷問→殉教」ってことで。

独特なのは、竜の腹から出てきた部分です。マルガレタが拷問を受ける中で起きた奇跡の一つで、彼女は竜の姿をした悪魔に呑みこまれ、腹の中で十字を切ります。竜は十字の印がもつ力のためにまっぷたつに破裂し、彼女は傷ひとつ負わずに出てきたというもの。

「苦難を乗り越えて胎内から出てきた」ので、聖女マルガレタは安産の守護聖人として信仰されています。

聖女マルガレタの頭上に展示してあるのは、悪魔のいる柱頭です。4体の悪魔によって悪徳の地獄での罰を描いたもの。怖い場面のはずなのに、人をなごませるようなおかしみのある姿です。

悪魔のいる柱頭
悪魔のいる柱頭(別角度)
悪魔のいる柱頭(別角度)
悪魔のいる柱頭(別角度)

聖女マルガレタの隣に展示してあるのは聖パウロと聖ペトロ。

向かって左から聖女マルガレタ、聖パウロ、聖ペトロ。

聖パウロは、はげあたまが特徴です。

聖ペトロは右手の司祭杖が目立ちますが、左手にちゃんと持物(アトリビュート)である鍵を持っています。

左手に鍵をもつ聖ペトロ

聖女マルガレタ、聖パウロ、聖ペトロたちの隣(東側)には、二枚の浮き彫りが展示してあります。

二枚の説教壇パネル

より大きな浮き彫りが、聖女マルガレタを讃える場面です。

聖女マルガレタを讃える浮き彫り

聖女マルガレタは、四福音書記者の象徴に囲まれたキリストによって、輝かしい殉教の冠を受けます。両脇には2人の天使が大きなろうそくを掲げていますが、これは犠牲の象徴であると同時に、信仰の光の象徴でもあるそう。

2人の天使が香を捧げ、1人の天使が布で覆った手で冠を捧げています。また、1人の天使は、処女の女性の聖なる生活が書かれた巻物を見せます。

こちらの浮き彫りは、十字架降架の場面。

十字架降架の浮き彫り

パルマ大聖堂に保存されている、同じ主題の浮き彫りとの共通点が指摘されています。パルマ大聖堂のものは1178年の日付とベネデット・アンテラミの署名が入った立派なものですが、こちらはいくらか牧歌的な印象です。

中央では、キリストがニコデモ(ペンチを持っている)とアリマタヤのヨセフによって十字架からおろされています。

左側には聖母と「マリアたち」その上に大天使ガブリエルが描かれていて、

十字架降架の浮き彫り

右側には、大天使ミカエルが「裁きの天使」として地上の楽園からアダムとエバを追放するシーンが描かれており、神の子の犠牲による人間の罪の贖いを象徴的に表しているそうです。

十字架降架の浮き彫り

Bardone の Pieve di Santa Maria Assunta、「聖女マルガレタの親方」(伊:maestro di Santa Margerita)によるロマネスク彫刻が素晴らしい。

次回、フォルノヴォに行き、あちらに保管されている浮き彫りをみます。

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