エステリ・ダネウ(Esterri d’Àneu)

2019年9月の旅行八日目、最初の目的地はEsterri d’Àneu。泊まった宿から南東に約5km、車で約11分の道のりです。

この日に訪ねる場所は、アネウ谷の、六つ。

八日目、9月11日(水) アネウ谷
29. エステリ・ダネウ(Esterri d’Àneu)
30. ソルペ(Sorpe)
31. ソン (Son)
32. アロス・ディシル(Alós d’Isil)
33. イシル(Isil)
34. エスカロ(Escaló)

グーグルマップの画像を編集しました。赤い線の範囲がカタルーニャ州(スペイン)。

実は、どうしても教会の中を見学したかったソルペ(Sorpe)とアロス・ディシル(Alós d’Isil)について、観光局にガイドを依頼してあったんです。でも、なんと、前日の夜、そのガイドから「体調を崩したからキャンセルさせて欲しい」、「代理の人を探したけど見つからなかった、申し訳ない」とメールが来たんです。

😢

そんなわけで、この日は全ての教会について、中は見学できませんでした🥺

気を取り直して、最初のエステリ・ダネウ(Esterri d’Àneu)訪問について書きます。

宿からわずか5kmという近さの、Esterri d’Àneuでの目的は、Santa Maria d’Àneu。

Esterri d’Àneuの中心地を外れ、川に並行するウニカ通りを進むと、

平野の向こう、川の近くに教会が。

教会の北東側

なんか、遠目からは、しょぼい農家の納屋かなって感じです。(ごめんなさい)

でも、近寄ると、

あらま、後陣が美しい。

教会の北東側

後陣を、別角度から。

教会の南東側

ファサードにまわってみます。

教会の南壁

教会の南壁の石積みが、興味深い。

教会の南壁

もう少し西に進んで

北壁は整然と石が積んでありましたが、南壁はかなり色々な時代の石積みが残っていると言うことかも。

西側へ。

西側から南壁を見る

ファサード(西壁)。

ファサード

二種類の案内板がありました。

一つは、カタルーニャ地方共通の、フロアプラン付きの、こちら。

カタルーニャ地方共通のフロアプラン付き案内

この案内板によると、最初の文書記録は1088年。確証は無いものの、恐らく修道院であったと考えられています。聖堂の最も古い部分は11世紀のロマネスク様式またはロンバルディア様式の主後陣です。東側には三つの後陣があったようですが、小後陣は数世紀前に姿を消しました。身廊は現在、単身廊。木製天井の下に15世紀から16世紀にかけて造られた尖頭アーチがあり、ここにバロック様式の聖歌隊席があります。主後陣には貴重な11世紀から12世紀のロマネスク様式の壁画がありましたが、オリジナルは現在はカタルーニャ美術館に保存されており、ここには複製があります。

もう一つの案内板は、こちら。

もう一つの案内板

おおむねフロアプラン付きの案内板と同様の内容が書かれていましたが、違うのは二つの記述。

  1. 教会の起源に関する言及が、819年の文書に認められます。
  2. 壁画には三博士の礼拝、3人の大天使、2人の熾天使、2人の預言者、予言の表現や2人の人物が描かれていて、壁画のために資金を提供した人物の可能性があります。この壁画は近くのSant Pere del Burgal修道院の壁画との共通点が見受けられ、これらはPedretの親方の工房の作品です。これら二つの場所を含む近隣の教会への訪問はEcomuseu de les Valls d’Àneuがガイドツアーを行っており、夏期は定時での相談、他の時期はグループのみで手配が必要です。詳細については詳細については、973 626436にお電話ください。

もとの修道院の起源は9世紀以前かもしれないんですが、その建物は現在は残っていません。ガイドツアーをご希望の方は、夏期に(←ここ、重要)事前にご相談がおすすめ。

扉は閉まっていますが、向かって左の戸板には、ひと区画だけガラスの部分が。

西側の、主扉口。向かって左の戸板の中ほどに一箇所だけガラスでできている部分が。

ガラスから、中を覗くことができました。

ガラスにカメラのレンズをくっつけて教会内部を撮影。

西扉口のガラス部分から、後陣を向く

後陣に、11世紀から12世紀のロマネスク壁画の複製があります。

この壁画のオリジナルは現在、バルセロナのカタルーニャ美術館に移設されています。

Museu Nacional d’Art de Catalunya, Barcelona で、2019年9月5日に撮った写真をご紹介。

カタルーニャ美術館に移設されているオリジナル(11〜12世紀)

上部中央の損壊が激しいのですが、玉座に描かれているのは、多分、聖母子。この教会は聖母マリアに捧げられています。

東方三博士の礼拝と、大天使、六つの翼を持つ熾天使や預言者が描かれています。

熾天使や、その周囲の窓枠の装飾が、素晴らしい。

ちなみに、偽ディオニュシオスの『天上位階論』(6世紀頃)によると、天使には九つの位階があって、それらが三つの階級に分かれます。

上級:熾天使(してんし、Seraphim)
上級:智天使(ちてんし、Cherubim)
上級:座天使(ざてんし、Thronoi)
中級:主天使(しゅてんし、Kyriotites/Dominatio)
中級:力天使(りきてんし、Dynameis/Virtues)
中級:能天使(のうてんし、Exousiai/Potestates)
下級:権天使(けんてんし、Archai/Principatus)
下級:大天使(だいてんし、Archangeroi/Archangelus)
下級:天使(てんし、Angeloi/Angelus)

このうち、よく美術に登場するのは熾天使、智天使、大天使と天使。

実は私「受胎告知」の大天使ガブリエルや、悪魔を華麗にやっつける大天使ミカエルがみんな下級だと知ったとき、ショックを受けました。だって、下級ですよ、下級。

それはそうと、熾天使があんなに翼がいっぱいの変な姿の理由は、旧約聖書にあります。

イザヤ書6章2節:
上の方にはセラフィムが控えていて、それぞれ六つの翼を持ち、二つの翼で顔を覆い、二つの翼で足を覆い、二つの翼で飛んでいた。 

イザヤ書6章3節:
そして互いに呼び交わして言った。/「聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな/万軍の主。/その栄光は全地に満ちる。」

壁画に目を戻すと、熾天使の周りに「SCS」と三回ずつ書いてありますよね、これはきっと、この「聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな」。

なんか、明るく楽しい気持ちになって来ます。

天上界をうかがわせる神々しい壁画が描かれたのは、約800年前の、この場所です。

こんな平野の中に、ポツンとあるロマネスク教会って、初めてかも。

Santa Maria d’Àneu、色あざやかに美しいロマネスク壁画のオリジナルはバルセロナのカタルーニャ美術館に移設してあります。現地では、11世紀の後陣と平らな農地が迎えてくれます。

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