ムーティエ=アン=ピュイゼイユ(Moutiers-en-Puisaye)

2018年9月の旅行二日目、三番目の目的地は Moutiers-en-Puisaye。オーセール(Auxerre)から南西に約45km、車で約42分の道のりです。

目指すは Eglise Saint-Pierre。

Le site sur l’Art Roman en Bourgogneで得た情報によれば、この小修道院教会は聖母と聖ゲルマヌスに捧げる修道院として700年頃に創設され、9世紀にオーセールの大修道院(Abbey of Saint-Germain d’Auxerre)の小修道院(priory)になり、11世紀から12世紀にかけて再建、拡張されたとのこと。

内部のロマネスクとゴシックのフレスコ画が素晴らしいそうなので、まわり道なんですが、頑張って行程に組み込みました。

Auxerre までは夫に車を運転してもらいました。この、Moutiers-en-Puisaye への移動が私のブルゴーニュ初運転。私は制限速度より時速20kmくらい遅く、慎重に(あくまでも慎重に、です。のろのろじゃなく)運転して、グーグルが見積もった移動時間42分を10分くらい超過して到着。

mairie の前に路上駐車し、教会に向かって歩き始めてから、こんな表示に気づきました。駐車場とトイレがありますよっていうの。

トイレは、こちら。表示の向かい側です。

mairie は、私が教会が開いているか、開いているなら何時から何時までかを事前に問い合わせたメールに、こんな風に回答くださいました。「L’église est ouverte de 9h00 à 19h00.(教会は9時から19時まで開いています)」

ちなみに、Wikipediaによると、この Moutiers-en-Puisaye の人口は294人だそうです。いいなあ、小さい村。教会の周りでは、ベビーカーを押す若い女性が強い日差しの中で元気に歩いていました。

全体像を見るために周りから。南東から教会を見てみました。

後陣側については、ロマネスクらしさは無いです。

北から教会を見た写真がこちら。あえて言うなら、写真右側の身廊部分の、上部が半円アーチになっている小さい窓が、ロマネスクです。画像の左下に花が写っていますが、ここに小さい噴水があります。

その噴水の前に行って撮った写真。

この、星の王子様みたいな顔のやつ。山盛りの花に囲まれて、愛らしい。手入れが行き届いている様子から、村人から大切にされている村なんだなあ、って感じます。

ファサード(façade)に回りました。

上の写真を撮影した場所に、こんな案内がありました。

概要を訳します。なお、注釈(※)は私が加筆しました。

ムーティエの歴史はより古いが、その歩みは701年に創設された修道院とともに始まる。修道院はローマに向かう巡礼者を迎え入れた。

1000年ごろに小修道院が建てられ、聖ペトロに捧げられた。13世紀にポルティコが、15世紀に回廊がしつらえられ、このナルテックスが寄与して聖ペトロ教会は1862年に歴史モニュメントに指定された。

建物は単身廊であり、翼廊に二つの小礼拝堂がある。身廊とクワイヤには違いが見られ、身廊にはロマネスク様式の窓があるが、クワイヤにはフランボワイヤン様式(※15~16世紀のフランス・ゴシックで炎のような装飾を特徴とする建築様式)の張り出し窓がある。

1982年、乾燥した春の後で迎えた、ある夏の日、18世紀の漆喰がひび割れているのを村長のフランソワ・ソラノが見つけた… 黄土で描かれた一連の壁画が、歴史研究家であるスザンヌとルネ・ペリシエ、修復師であるイサオ・タカハシのおかげで、10年の歳月をかけ、日の目を見ることとなった。

200㎡の壁画はブルゴーニュ最大規模であり、最も古い(12世紀)北壁のフレスコ画は新約聖書の受胎告知からイエス・キリストの復活の場面をたどっている。
ロマネスクの装飾は西壁、さらに南壁へと続く。
南壁は12世紀末以降のフレスコ画であり、三段に分かれている。最上段は巡礼者の行列がクワイヤに進む様子、他の二段では旧約聖書のエバの誕生、アベルの死、洗礼者ヨハネの生涯といった場面が描かれている。
イエスの洗礼(写真)は重要な要素であり、洪水とノアの箱舟の表現が添えられている。

また、他の壁画(15世紀から17世紀)が北側の礼拝堂とクワイヤに描かれている。

ムーティエの友人協会 - ムーティエ=アン=ピュイゼイユ

原文に Isao Takahashi と書いてあったので少しだけ戸惑いましたが、高橋久雄氏が10年の歳月をかけて修復したフレスコ画です。高橋氏については名古屋芸術大学での講演会に簡単な紹介があります。

ナルテックスの扉に、こんな表示がありました。

ナルテックスに入ります。

ナルテックスで上を見上げた写真。

扉は全開でした。聖堂に入ります。

進むと、こうです。西壁を背にして、向かって左に(最も古い12世紀の壁画のある)北壁があり、向かって右に(12世紀末以降の壁画のある)南壁があります。

まず、天井を見て、木だあ!と驚きました。次に、鮮やかなフレスコ画が壁という壁に広がっていて、驚き、思わず歓声をあげてしまいました。

西壁を振り返るとこうです。

動画がこちら。クリックすると見られます。西壁から始まって北壁、南壁を写しています。

南壁はこんな感じ。花がいっぱいで春爛漫って感じでしょうか。筆遣いはゴシックっぽいです。

北側の礼拝堂(15世紀)。

クワイヤの壁画(17世紀)。

ここからは北壁(12世紀)の気に入った場面をご紹介します。

受胎告知。どうしても、太い眉毛と赤い頬が目にとびこんできます。好きだから。

ご生誕。幸せそうです。布の表現が細やか。植物が素敵で、好印象です。

最後の審判。天使たちが一生懸命に盛り上げている様子が素晴らしいし、翼が美しい。

私は個人的に、Auxerre の影響を受けたのかな、と思いました。 Auxerre に行ったとき、その町並みや9世紀のフレスコ画が可憐で美しいと感じました。この教会が9世紀にオーセールの大修道院(Abbey of Saint-Germain d’Auxerre)の小修道院(priory)になり、11世紀から12世紀にかけて再建、拡張されたという歴史を思えば、少なからず影響を受けて当然と思うんです。

何はともあれ、この教会、全部かわいい。

壁面にプレートがありました。

歴史モニュメントの保存に力を尽くしている人たち、教会を大切に守っている村人たちや可憐で美しいフレスコ画を修復してくれた高橋久雄氏の偉業に敬意を表して。。。

Moutiers-en-Puisaye、終わります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です