カベスタニー(Cabestany)<2>

カベスタニー(Cabestany)、続きです。

Le Maître de Cabestany(カベスタニーの親方)の名前の由来になったタンパンを見ます。

半円状のそれっぽい形なのでタンパンじゃないか、と言われてますが、本当にタンパンとして作られたかは不明なんです。。。ま、「カベスタニーのタンパン」って言えばもう、これのことなんで、「タンパン」で行きます。

さっき見学した Centre de Sculpture Romane Le Maître de Cabestany から、タンパンのある教会、Église Notre-Dame-des-Anges までは400m、徒歩5分の道のりです。

曲がり角に目印が表示されていました。

正面に見えるのが入り口ですが、なんか、え?これ?って感じです。しょぼい。

施錠されてないかと心配しましたが、扉、開いてました!
そして中に入ると、タンパンが、どーん、とぶら下がってました。

このタンパンのテーマは聖母被昇天(せいぼひしょうてん、Assumption)です。聖堂装飾で頻繁に扱われる題材ですが、聖書に書かれていない話です。

聖母マリアと被昇天について補足します。

聖母マリアは5世紀にエフェソス公会議で「神の母」と定義されました。それ以降、聖母マリアに神への執り成しを求める祈りが捧げられるようになり、聖母マリアは人間に救いの道を与えるもので、教会を象徴する存在と考えられるようになりました。重要性がどんどん高くなったんです。

こうなると、聖母マリア関連の装飾をしたくなるのが教会の人情ってもんです。

でも、聖母マリアがどんな風に生きて、亡くなったのか、聖書には詳しいことが書かれてない。

例えば、晩年について。確か聖書では、イエスの昇天後エルサレムで使徒たち、婦人たちやイエスの兄弟たちと「心を合わせて熱心に祈っていた」(使徒言行録1章12-14 )という記述が最後です。その後の生活、死や被昇天に関しては書かれていません。

じゃあ、ってことで外典などに聖母マリアの生涯に関する伝承を求めて、こうだったらしいよ、という話を教会がまとめたんです。

つまり、聖母マリアは14才でみごもって、15才で出産。それから33年間はイエスと一緒に過ごし、イエス昇天の後12年間生きて、60才で眠ると、三日後に復活して天国に被昇天した、という話です。

イエスも聖母マリアも天に昇りますが、イエスの場合は「昇天」で、聖母マリアの場合は受け身の「被昇天」です。これは、神やイエスの導きと天使たちの力で聖母マリアの魂と肉体が天に上げられたからです。いくら「神の母」でも、自力では昇れないのね。

タンパンに目を戻しましょう。

この長いのを持ってる男性、聖トマスです。これは、もしかして、タラコ唇?いつも薄い唇ばかり彫る親方ですから、珍しいかも。

そして長いのは、聖母マリアの腰帯です。聖書には無いけど外典などの伝承を集めてこうだったらしい、とまとめた話によれば:

聖母マリアが眠りにつくとき、十二使徒は布教先からエルサレムに戻って別れを惜しみました。でも、ただ一人、インドで布教していたトマスだけは臨終に立ち会うことができず、三日後に帰ってきました。そしてトマスが奇跡の証拠を求めると、マリアが腰帯を落としました。

確かに被昇天した、っていう証拠なわけです。この腰帯と聖トマス。

聖トマスと言えば、この話の伏線になる話があります。これは、聖書にある話です(ヨハネによる福音書20章24-29)。イエスが、処刑されてから三日後に復活して、弟子たちの前に来たとき。(一般財団法人日本聖書協会の新共同訳です。)

24: 十二人の一人でディディモと呼ばれるトマスは、イエスが来られたとき、彼らと一緒にいなかった。
25: そこで、ほかの弟子たちが、「わたしたちは主を見た」と言うと、トマスは言った。「あの方の手に釘の跡を見、この指を釘跡に入れてみなければ、また、この手をそのわき腹に入れてみなければ、わたしは決して信じない。」
26: さて八日の後、弟子たちはまた家の中におり、トマスも一緒にいた。戸にはみな鍵がかけてあったのに、イエスが来て真ん中に立ち、「あなたがたに平和があるように」と言われた。
27: それから、トマスに言われた。「あなたの指をここに当てて、わたしの手を見なさい。また、あなたの手を伸ばし、わたしのわき腹に入れなさい。信じない者ではなく、信じる者になりなさい。」
28: トマスは答えて、「わたしの主、わたしの神よ」と言った。
29: イエスはトマスに言われた。「わたしを見たから信じたのか。見ないのに信じる人は、幸いである。」

このせいで、聖トマスは「不信のトマス」と呼ばれます。

この場面、聖堂装飾に頻繁に使われています。目に見えるものしか信じない人たちに布教する時、聖トマスは使い易い例えだったんでしょう。

ちなみに、ロマネスク彫刻ではスペインのサント・ドミンゴ・デ・シロス修道院(Monasterio de Santo Domingo de Silos)の回廊に、この場面の傑作があります。イエスがバシッと右手を伸ばしているのが印象強くて、トマスに注目が集まりにくいけど。

さて、タンパン全体を見ると、三つの場面で構成されています。
基本的にロマネスクの聖母被昇天は最初に魂が、次に肉体が天国に行く、という順番です。

まず、向かって左。

イエスが墓からマリアの魂(子供みたいですが、魂です)を抱き起こしています。イエス、たくましい!顔だけで周りを盛り上げているのは天使たちです。やんや、やんや。

次に、向かって右。

マリアの目、鳥か捕らえられた宇宙人か、って感じですけど。。。
天使たちがマリアの肉体を天に運び上げています。わっしょい、わっしょい。この天使、特に右端のとか、かわいい。

最後に中央。

イエスが被昇天したマリアを天に迎え入れています。目の両端を深く窪ませて力強くみせる表現が、独特です。イエス、あごひげがシッカリしてて口をへの字に曲げて威厳があります。

全体をよく見ると、劇的な場面を生き生きと切り取ってました。
これで、旅行四日目のロマネスク見学は終わり!お疲れさまでした。

そして、車で北西に約5km、約10分のPerpignanに移動して、予約してあったAirbnbにチェックインしました。

部屋はマンションの四階の一部屋で、一階にはスーパーが入っていて便利です。スーパーの入り口辺りに駐車スペースがたっぷりあって、鍵の受け渡しも余裕でした。

物件はリビング・ダイニング・キッチン、寝室、風呂場、トイレ。三泊総額21,455円です。

予約の時、キッチン、浴槽、洗濯機に加えて、エレベーターと地下駐車場つきってだけで、ゴージャス&デラックス!と思いました。

さらに部屋に入ってみると、キッチンの設備がビストロを開店できるんじゃないかってくらい充実してました。四つ口のガステーブル、オーブン、電子レンジ、ジューサー、コーヒーメーカー、ブレンダー、ホイッパー、巨大まな板、製菓器具の数々に、大量の鍋、フライパン、皿などなど。おかげで滞在中は毎日、朝ご飯と晩ご飯を部屋で食べました。

この日も入浴してホッとすると、晩ご飯は下のスーパーで買った食材とワインで、部屋でくつろいで食べました。洗濯もできたし。いやあ、落ち着いて良いもんです。。。翌日は朝一番で登山ですから、早めに寝ました。

次回、カニグー(Canigou)です。

 

 

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