2024年4月27日(土)、唯一訪れたのはTauriac、聖ステファノ教会(Église Saint Etienne)です。
ここは、ファサードがいいです。内部には「聖ステファノの殉教」を描いた柱頭彫刻があります。
私が訪問したとき、教会は開いていました。さらに「もし教会が閉まっていたら、役場(mairie)で鍵を借りられます」という掲示がありました。
目次
1. Tauriac へ .
2. 概要 .
3. 平面図 .
4. 内観 .
5. 外観 .
1. Tauriac へ
トリアック(Tauriac)は、ヌーヴェル=アキテーヌ地域圏ジロンド県にある村です。ボルドー(Bordeaux、同地域圏の首府であり同県の県庁所在地)の約24km北東にあります。
村はドルドーニュ川の右岸にあります。
ドルドーニュ川はガロンヌ川と合流してジロンド川となりますが、教会はその合流点から約8kmに位置します。
緑にかこまれた静かな場所です。
2. 概要
教会の外に案内板がありました。私が一部を抜粋して太字で和訳します。
歴史的建造物に指定されている聖ステファノ教会は、11世紀から12世紀にかけて建てられた。
ロマネスク様式の教会は、サントンジュ(Saintonge)様式の美しいファサードを持ち、2層のアーケードに豊かな装飾が施されている。
第一層、扉口の両側のアーケードは、左側に騎士(コンスタンティヌス帝?)、右側に神の子羊が描かれている。第二層では、六つのアーケードが彫刻が施された柱頭を持つ円柱によって支えられている。軒下の持ち送りには、音楽家や曲芸師などが描かれている。
教会は1872年まで墓地に囲まれていた。考古学的発掘調査により、12世紀から15世紀にかけての石棺が多数発見されている。
この後は、教会の中にあった案内掲示を引用する時に太字で書きます。
3. 平面図
教会の中にあった案内掲示による1858年当時の平面図です。東が右です。
1858年当時、ファサードの第一階層は、16世紀にユグノーの侵入から住民を守るために建てられたポーチによって隠されていた。このポーチは、19世紀末に歴史建造物の要請により撤去された。
もともとこの教会には、後陣と身廊の接合部に張り出した四角い鐘楼があった。この鐘楼は1689年に倒壊し、南壁と柱間ひとつを破壊し、クワイヤに深刻な損傷を与えた。鐘楼は再建されなかった。
現在の鐘楼は19世紀初頭に建てられたものである。当初は二つの鐘を備えた鐘楼であったが、1854年に一つの鐘に改造された。
4. 内観
教会の中に入ります。
ロマネスク様式の柱頭がいくつか残っています。
そのうちのひとつ、右(南)側の第1柱間と第2柱間の間にある柱頭をご紹介します。
「聖ステファノの殉教」(『使徒言行録』7章)を描いています。
聖ステファノはキリスト教最初の殉教者で、その殉教の様子は聖書に記されています。
『使徒言行録』7章
57: 人々は大声で叫びながら耳を手でふさぎ、ステファノ目がけて一斉に襲いかかり、
58: 都の外に引きずり出して石を投げ始めた。証人たちは、自分の着ている物をサウロという若者の足もとに置いた。
59: 人々が石を投げつけている間、ステファノは主に呼びかけて、「主イエスよ、わたしの霊をお受けください」と言った。
60: それから、ひざまずいて、「主よ、この罪を彼らに負わせないでください」と大声で叫んだ。ステファノはこう言って、眠りについた。
柱頭には、主に呼びかけるステファノと石を投げる人々。そしてアバクス(柱頭の上に置かれてアーチを支える部分)には、2人の天使によって天にあげられるステファノ。
ところで、サウロという若者は、のちの聖パウロです。このとき彼はまだ異教徒で、ステファノの殺害に賛成していました。
5. 外観
外に戻ってファサードをみます。
主扉口の両側のアーケードには、左側に騎士(コンスタンティヌス帝?)、右側に神の子羊が描かれています。
左側に比べて、右側は古風で精緻な装飾です。
ゾディアック(Zodiaque)la nuit des temps『Guyenne romane』は、右側のティンパヌムはかつての主扉口のティンパヌムであると考えるのが自然であると言います。さらに、おそらく30年か40年後のファサード再建時に、このティンパヌムが新しい主扉口の右側に移されて、左側のアーケードの下に騎馬像の浮き彫りが置かれた可能性を論じています。
碑文があります。
ゾディアック(Zodiaque)によると、
神の子羊を囲む円には、このように書かれています。
AGNUS DE. QI TO.I. E.ATA MUNDI .ON
Agnus Dei, qui tollis peccata mundi (dona nobis расеm ?).
神の子羊と鳥たちの下の長方形には、このように書かれています。
N.BUS PAX SALU
PAX INTRANTI… OMIN.S SALUS SIT + F.V…E…E
私にはよく読めないのですが、円に書かれている言葉は「神の子羊は、世の罪を取り除く」のような意味でしょうか。教会で祈りを捧げる動機になりそうです。
ファサードの軒下の持ち送りには、音楽家や曲芸師などが描かれています。
音楽家も曲芸師も、浮世をいきいきと過ごす姿で、神の子羊と対照的。
聖ステファノ教会(Église Saint Etienne)。ファサードがいいです。内部には「聖ステファノの殉教」を描いた柱頭彫刻があります。
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