2022年8月12日(金)、五番目に訪れたのは Issoire。Abbatiale Saint Austremoineです。
ここは、オーヴェルニュ地方のロマネスク芸術を象徴する、主要な五つの教会のひとつです。
イソワール、クレルモン、オルシヴァル、サン=ネクテール、サン=サテュルナンの5か所にある五つのロマネスク教会は、ほぼ同時期に建築され多くの共通点を持つ、姉妹教会。
主要な五つの教会のプランの比較:
イソワールは、主要な五つの教会の中で、いちばん大きい教会です。19世紀の改築と装飾に圧倒されますが、柱頭彫刻と地下聖堂にホッとします。
Issoire へ
私はベス=エ=サン=タナステーズ(Besse-et-Saint-Anastaise)から東に34分ほど車を運転して、大きな町に着きました。16時頃のことです。
Abbatiale Saint Austremoine の外観
後陣の装飾が有名ですよね。
象眼細工や黄道十二宮の浮き彫りがすごく豪華です。(黄道十二宮の浮き彫りのオリジナルは博物館にあります。博物館は教会の南側の広場にあり、見学は無料です、)
そして、大きい。
19世紀に改築されたファサード。
教会の中に入ります。
Abbatiale Saint Austremoine の概要
教会の中に案内シートがありました。一部を抜粋して太字で和訳します。
歴史
現在の教区教会は、10世紀に建てられたベネディクト派修道院付属の教会の跡地に建っている。南側には回廊などの修道院建築が隣接。12世紀の修道院の繁栄期には現在の規模に再建され、24人の修道士と信徒が暮らしていた。
15世紀になると、修道院の収入は国王が任命した教会関係者によって取り上げられ、その大部分は自分たちのために使われるようになり、修道院は衰退していった。
1575年、宗教戦争の最中、ユグノー派の兵士が略奪し、調度品を壊した。1585年から1589年にかけての戦乱は、さらなる破壊を招いた。
フランス革命で、6人の修道士を残すのみとなった修道院は閉鎖されることになった。
案内シートはA4サイズ4ページの長文です。読んでいて面白いのは「(東側外観は)19世紀に建てられたランタン塔を除けば、建物全体に目を奪われる」とか、「西側のファサードだが、これは全くロマネスク的ではない。 まず、このファサードは冷たく、醜悪でさえある。」とか、「ファサードの中央には、下窓の上に三角形の切妻壁を想像することができる。下窓中央の塔は(中略)19世紀に増築され、ファサードを大きく損ねている。」とか、かなり容赦ない。
19世紀にファサードなどが改築されたとき、ロマネスク様式を大胆に理解して豪華にしちゃったんですよね。バランスがいまひとつな印象。内部も、全体が彩色され、地下聖堂以外のすべての内壁に中世をイメージした幾何学模様の装飾が施されたんです。まあ、内部については、12世紀頃も色とりどりだった可能性が高いですし、豪華で写真映えも良くなった、ってことでオーライなのかもしれません。
がたがた言ってないで、先に進みます。
フロアプラン
教会の中の案内シートにフロアプランがありました。東が上です。
Abbatiale Saint Austremoine の内観:全体
教会の中の、全体の様子。
豪華絢爛、キラキラです。
先に地下聖堂をみます。
地下聖堂
地下聖堂は、塗装されていません。
静かで落ち着きます。
地下聖堂の西側に、貴重な品があります。
リモージュのシャンルベ・エナメルで作られた聖遺物箱。13世紀の作品で、19世紀に聖人の遺品を納めるために購入されたもの。
19世紀に、かなり経済的に余裕があったんでしょうか。こういうの買っちゃうなんて。
モザ(Mozac)にもリモージュのシャンルベ・エナメル製の聖遺物箱がありましたよね。「俺らの町にも!」と、はりあって買っちゃう様子を妄想してしまいます。
正面は、聖女たちがイエスの墓を訪問する図(『マタイによる福音書』28章)。
1節: さて、安息日が終わって、週の初めの日の明け方に、マグダラのマリアともう一人のマリアが、墓を見に行った。
2節: すると、大きな地震が起こった。主の天使が天から降って近寄り、石をわきへ転がし、その上に座ったのである。
3節: その姿は稲妻のように輝き、衣は雪のように白かった。
4節: 番兵たちは、恐ろしさのあまり震え上がり、死人のようになった。
5節: 天使は婦人たちに言った。「恐れることはない。十字架につけられたイエスを捜しているのだろうが、
6節: あの方は、ここにはおられない。かねて言われていたとおり、復活なさったのだ。さあ、遺体の置いてあった場所を見なさい。
その上は、マグダラのマリアの前に現れた復活のイエス(『ヨハネによる福音書』20章)。
地下聖堂をみて心を落ち着けたところで、地上に戻ります。
身廊の柱頭彫刻
身廊の柱頭彫刻から二つだけ。
ケンタウロスたち。
羊を運ぶ人たち
目が絢爛さに慣れてきたところで、交差部とクワイヤをみます。
交差部とクワイヤの柱頭彫刻
交差部とクワイヤの柱頭彫刻は、さらに豪華です。
最後の晩餐の場面。
この柱頭の、他の三つの面には、テーブルについた使徒たちが描かれています(別の面の写真は割愛)。
聖女たちが、天使によってイエスの復活を知らされる場面。
この柱頭の、別の面には、イエスの墓の前で見張っていた番兵たちと、
墓を守る天使が描かれています。
マグダラのマリアと弟子たちのもとに、復活したイエスが現れる場面(『ヨハネによる福音書』20章)。(この柱頭の、別の面の写真は割愛。)
イエスの受難:ムチ打たれるイエス。(『ヨハネによる福音書』19章)
この柱頭の、別の面には、十字架を運ぶイエスと弟子たちが描かれています。
翼廊の柱頭彫刻
最後に、翼廊の柱頭彫刻を四つ。私は、こちらの教会では、これらがいちばん好きです。絶妙な、緩さがあるので。
北翼廊。
北翼廊の北側:悪魔につながれている男たち
北翼廊の南側:羊を運ぶ男
南翼廊。
南翼廊の北側:受胎告知
南翼廊の南側:山羊に乗る男
見学終了。
Abbatiale Saint Austremoine。オーヴェルニュ地方のロマネスク芸術を象徴する、主要な五つの教会のひとつで、最も大きい教会です。19世紀の改築と装飾に圧倒されますが、柱頭彫刻と地下聖堂にホッとします。
〜おまけ〜
そんな私を待っていたのは、ホットな車でした。
摂氏46度って、もう、笑うしかない。
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