2024年9月10日(火)、三番目に訪れたのはVallespinoso de Aguilar、Ermita de Santa Ceciliaです。
ここは、その装飾の豊かさと質の高さ、そして近隣のロマネスク彫刻との関連性の上でも、必見です。
2024年、Ermita は施錠されることなく開いていました。
目次
1. Vallespinoso de Aguilar へ .
2. 概要 .
3. 平面図 .
4. 外観(内陣・後陣) .
5. 外観(南扉口) .
6. 内観(勝利アーチ) .
7. 内観(内陣の壁) .
1. Vallespinoso de Aguilar へ
バジェスピノソ・デ・アギラル(Vallespinoso de Aguilar)は、カスティーリャ・イ・レオン州パレンシア県にある村で、県都パレンシアの約85km北にあります。
Ermita は、南東の集落を見下ろす、岩山の上に建っています。

2. 概要
Ermita の内外に案内板がありました。私が一部を抜粋して太字で和訳します。
その起源は不明だが、様式から12世紀末と推定されている。1951年に歴史的芸術的建造物に指定され、1957年に美術局(Dirección General de Bellas Artes)によって修復された。
この後も、案内板を引用する時に太字で書きます。
3. 平面図
Románico Digital による平面図です。東が右です。

4. 外観(内陣・後陣)
岩をのぼると、南扉口があり、その先にある塔の下を通り抜けることができます。

東に行き、振り返ると、後陣が見えます。

内陣と後陣の軒下の持ち送りに彫刻があります。
様式化された植物、幾何学模様、四足獣、衣服の裾を持ち上げる男性、弦楽器を奏でる音楽家、蛇と鳥などが彫られています。
これらの彫刻には、Piasca の工房の特徴があります。私が Piasca や Santillana del Mar のMuseo Diocesano Regina Coeli で見学した彫刻の図像が、この教会にもあるからです。
Piasca の工房の特徴といえば、レボジェド・デ・ラ・トレ(Rebolledo de la Torre)にも、同様の図像がありました。
5. 外観(南扉口)
南に行きます。

南扉口には、六つのアーキヴォルトがあり、緻密に彫刻された柱頭がそれらを支えています。
彫刻は、左(西)端では、長い巻き尾のドラゴンが、鎖帷子(くさりかたびら)をまとった兵士の盾に噛みつき、兵士は剣でドラゴンを斬りつけています。

彫刻を左(西)側から順に見ると、2頭のケンタウロスの戦い、様式化された植物、幻想的な生き物、首から財布をぶら下げた守銭奴と炎のような髪をした悪魔、床に横たわる死者と聖職者、そして、魂の計量が彫られていると思います。

右(東)側には、「イエスの復活」(『マタイによる福音書』28章、『マルコによる福音書』16章、『ルカによる福音書』24章、『ヨハネによる福音書』20章)、様式化された植物、向かい合うハルピュイア、様式化された植物、と続きます。

右(東)端には、9人の人物が彫られています。人物たちは、さまざまな道具を手にしています。
最後に解釈が難しい一群、おそらく、楽器を演奏する音楽家たち、受難の象徴を持つ天使たち、あるいは農具を持った人物たちが描かれている。

6. 内観(勝利アーチ)
教会の中に入ります。

彫刻が素晴らしいです。
まず、勝利アーチの柱頭をみます。
左(北)側には、「獅子を裂くサムソン」(『士師記』14章)が彫られています。

獅子の頭の先には、長い巻き尾のドラゴンが、鎖帷子(くさりかたびら)をまとった兵士の盾に噛みつき、兵士は剣でドラゴンを斬りつけています。

獅子の尾は、右に立つ男性につかまれているようです。レボジェド・デ・ラ・トレ(Rebolledo de la Torre)にも、同様の図像がありました。

勝利アーチ右(南)側の柱頭には、向かい合うグリフォンが彫られていると思います。レボジェド・デ・ラ・トレ(Rebolledo de la Torre)にも、同様の図像がありました。

7. 内観(内陣の壁)
内陣の南北の壁には、二つの三つ葉アーチからなる盲アーケードがあります。

ソリタ・デル・パラモ(Zorita del Páramo)、ラ・アスンシオン・デ・ペラサンカス(La Asunción de Perazancas)やサンタ・マリア・デ・ピアスカ(Santa María de Piasca)にも、同様の二つの三つ葉アーチからなる盲アーケードがあったことを思い出します。

このような、ふっくらとした渦巻きのような植物は、アギラール・デ・カンポーのサンタ・マリア・ラ・レアル修道院(Monasterio de Santa Maria la Real)、ソリタ・デル・パラモ(Zorita del Páramo)、ピアスカ(Piasca)、バスコンシジョス・デル・トソ(Basconcillos del Tozo)などに見られる意匠です。

こちらのものは、彫刻の質が特に素晴らしいです。
Ermita de Santa Cecilia。その装飾の豊かさと質の高さ、そして近隣のロマネスク彫刻との関連性の上でも、必見です。
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