2024年9月6日(金)、二番目に訪れたのはPalencia、教区博物館(Museo Diocesano)です。
ここは、洗礼盤があります。また、私は実物を見ていませんが典礼暦があります。
2024年、博物館は月曜10:30〜12:30、火曜から土曜10:30〜13:30と16:30〜19:30、日曜10:30〜13:30に開いていました。月曜は入館料無料、その他の曜日は有料(€5)でした。
Palencia では、2か所に行きました。以下のように2回に分けて書きます。
<1> Catedral de San Antolín
<2> Museo Diocesano de Arte Sacro
目次
1. Palencia へ .
2. 概要 .
3. 典礼暦 .
4. 洗礼盤 .
1. Palencia へ
パレンシア(Palencia)は、カスティーリャ・イ・レオン州パレンシア県の県都で、首都マドリードの約180km北にあります。
博物館は、大聖堂から北西に6分ほど歩いた場所にあります。

2. 概要
教会の外に案内板がありました。私が一部を抜粋して太字で和訳します。
司教宮殿・教区博物館(Palacio Episcopal Museo Diocesano)
18世紀末に建てられた新古典主義様式の宮殿である。パレンシア教区の牧会・行政の中心地であり、国内でも有数の宗教美術博物館の所在地でもある。
教区博物館は宮殿の下の階に位置し、県内全域から集められた膨大な美術品コレクションを所蔵している。1973年に県内の教会遺産に溢れる芸術品を保護する目的で創設され、7世紀から現代に至る貴重な遺産が収められている。
この後は、展示品の隣に掲示されていた説明を引用する時に太字で書きます。
3. 典礼暦
典礼暦(CALENDARIO LITÚRGICO)、12世紀
作者不詳
石灰岩
74 x 38 x 9 cm
私が行ったときは、貸出中だったので写真が置いてありました。

Románico Digital による詳細です。
葬祭用石碑
出所:サンタ・マリア・デ・ベネビベレ修道院(Abadía de Santa María de Benevívere)
この葬祭碑は、ディエゴ・マルティネスを偲び、その功績を称える記念碑であると同時に、典礼(上部の時計は教会暦の時刻と一日の終わりを示す)やその他の共同体の活動や仕事(下部の時計は12時間制)の時間を測る道具でもあった。1日の長さは「祈りと労働」の原則に従って、コミュニティの仕事や活動に利用できる時間を決定していた。この作品は、両面が美しく仕上げられ、装飾が施されている。2つの円が連結しており、上部の円の方が大きく、上部の円にはカノニカル時間、下部の円には12時間制の時計を表示する時計が配置されている。両円の外側には、1176年(西暦1214年)に設立されたベネビベレ修道院の創設と奉献を称える長い碑文が刻まれている。
この修道院は、12世紀末の著名人であるディエゴ(ディダクス)・マルティネスによって設立され、多額の寄付を受けた。彼はいくつかの修道院を設立した後、公的生活を捨て、サンタ・マリア・デ・ベネビベレ修道院に隠遁し、その遺体は同修道院に埋葬された。
4. 洗礼盤
ロマネスク様式の洗礼盤、12世紀
カベスタニーの親方の工房
石灰岩、彫刻、研磨
83 x 103 cm
出所:サン・ロレンソ・デ・バルコベロ教区教会(Parroquia de San Lorenzo de Valcobero)
作者について、現地の説明には「カベスタニーの親方の工房」と書いてありました。
カベスタニーの親方については、Centre de Sculpture Romane Le Maître de Cabestany のブログに書きました。また、リュー・ミネルヴォワ(Rieux-Minervois)、カベスタニー(Cabestany)、サンタンティモ修道院(Abbazia di Sant’Antimo)などでカベスタニーの親方の工房の作品をみました。
カベスタニーの親方の工房の作品は、彫りの深さのほか細部では顔、手や衣装の彫り方などが、こちらの洗礼盤とは少し違うように感じます。もしかすると、レスペンダ・デ・アギラル(Respenda de Aguilar)で書いたように、地元の石工の作品かもしれません。
作者についてはさておき、洗礼盤には興味深い彫刻があります。
洗礼盤には全部で九つのアーチがあり、以下の場面が彫られています。
五つのアーチ:「東方三博士の礼拝」(『マタイによる福音書』2章)
二つのアーチ:聖人伝?
二つのアーチ:ドラゴンを倒す聖ミカエル
最も多い五つのアーチを使って描かれているのが、「東方三博士の礼拝」(『マタイによる福音書』2章)です。
三つのアーチの下に三博士がいて、聖母子の方へと向かっています。

先頭の1人は馬から降りてひざまずき、聖母子がそれを迎えています。聖母子の隣のアーチの下には聖ヨセフがいます。

次の二つのアーチに描かれている場面は、聖人が殉教する場面かもしれません。
この洗礼盤が置かれていた教会は、聖ラウレンティウスに捧げられています。聖ラウレンティウスはスペイン生まれの3世紀の殉教者です。通常は、鉄格子の上で火あぶりにされる場面を描かれます。(ちなみに、伝説では、生きながら鉄格子の上で火あぶりされて、執行人に「こちら側は焼けたから、もうひっくり返してもよい。」と伝えたといわれています。)もしかすると、この作品が洗礼盤であることから、このような図に変えたのかもしれません。
上に描かれている人物は、左手に持った何かを、下にいる人物に突き刺しているようです。

その隣のアーチの下には、大きな人物と小さな人物がいます。
大きな人物は、武装した小さな人物に、何かを指示しているようです。

最後の二つのアーチに描かれている場面は、ドラゴンを倒す聖ミカエルだと思います。

教区博物館(Museo Diocesano)。洗礼盤があります。また、私は実物を見ていませんが典礼暦があります。
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