2024年9月3日(火)、最初に訪れたのはViguera、エルミタ・デ・サン・エステバン(Ermita de San Esteban)です。
ここは、岩のくぼみに建てられた独特の外観が人をひきつけます。内部には壁画がいっぱいです。
2024年、Ermita の鍵は村にある El Refugio というバル(Bar)が管理していました。
目次
1. Viguera へ .
2. 概要 .
3. 平面図 .
4. 外観 .
5. 内観(西壁) .
6. 内観(北壁) .
7. 内観(イコノスタシス) .
8. 内観(後陣) .
1. Viguera へ
ビグエラ(Viguera)は、ラ・リオハ州にある村で、州都ログローニョの約18km南にあります。
Ermita は、イレグア(Iregua)川の左岸、この地域の渓谷を支配する崖の下にあります。
私はまず、Ermita の鍵を借りるため、ビグエラ(Viguera)の集落の中にある El Refugio というバル(Bar)に行きました。€5の保証金と引き換えに鍵を借りることができました。(保証金は鍵を返すと返してもらえました。)
Ermita への登り口はN-111号線にあり、中世の橋(Puente Medieval)とも呼ばれるビグエラ橋(Puente de Viguera)が目印です。橋の北側に Ermita への登り口があります。

滑りやすい細い道を15分ほど登ると、Ermita に到着です。私は登山靴で行きました。

2. 概要
教会の外に案内板がありました。私が一部を抜粋して太字で和訳します。
プレ・ロマネスク様式の小さく落ち着いた建物で、堂々とした岩山の庇護の中にある。その内部には、ラ・リオハで最も重要なロマネスク様式の絵画が隠されており、スペイン北部で最もユニークなもののひとつである。
建物
当初の建築は10世紀、あるいはそれ以前に遡るかもしれない。おそらく、庵と結びついた小さな教会として、あるいは、今はもう存在しない防衛施設に付属する軍事用の小礼拝所(oratorio)として建てられたのであろう。
長さ8.89メートル、幅4.90メートルというこの控えめな建物は、東西を向いており、石積みでできている。
現在の建物の形状は、その歴史を通して受けてきた改築に対応している。最も重要な改築のひとつは、12世紀頃に行われたと思われるもので、その頃に半円形の後陣が付け加えられ、貴重な壁画が描かれた可能性がある。
長い歴史があり、18世紀から19世紀にかけては、教会と結びついた兄弟団が存在した。その後、廃墟化が進み、1950年代には悲惨な状態になっていた。
様々な修復を経て、現在はリオハ建築の小さな宝石となっている。
絵画
オリジナルのロマネスク時代の壁画の驚くべきコレクションを所蔵している。
この後も、案内板を引用する時に太字で書きます。
3. 平面図
案内板による平面図です。東が右です。

4. 外観
南壁に扉口のあとがあります。

聖堂は岩のくぼみに建てられています。一般的な屋根の構造がないため、独特の外観です。

5. 内観(西壁)
借りてきた鍵を使い、北扉口から聖堂の中に入ります。
聖堂の中は、壁画がいっぱいです。
西から順に壁画をみます。

西壁には二つの場面がある:上部の神聖な場面と下部の世俗的な場面である。
上部には、マンドルラを持つ4人の天使と幼子のいない聖母が描かれている。聖母の右側と左側には、ビグエラ(Viguera)の2人の王、あるいは、ダビデ王(右、竪琴と容器を持っている)とヘロデ王(左、肩にもたれかかる小悪魔によって識別される)と解釈される2人の人物がいる。
左(南)側:ビグエラ(Viguera)の王あるいはヘロデ王とされている男性は、右手に剣を持っているようです。

右(北)側:ビグエラ(Viguera)の王あるいはダビデ王とされる男性は、整った姿です。

その下には、この聖堂の改修を支援した人物の訪問に関連すると思われる世俗的な場面が描かれている。
左(南)側では、複数の人物が食卓を囲んでいます。

右(北)側では、男性が2頭の馬をひいています。

6. 内観(北壁)
北壁をみます。
北壁には、王冠をかぶり、模様のあるチュニックを着た12人の人物が竪琴と容器を持っている。黙示録に登場する24人の長老かもしれないし、ムーア人の朝貢王をなだめた一団かもしれないし、イスラエル王朝の歴代王かもしれない。
その上の段には、最後の晩餐を表現したのであろうか、食卓に座る他の人物たちが描かれている。

黙示録に登場する24人の長老にしては、少し変です。
長老たちであれば、通常は座っていますが、この人物たちは立っています。また、通常はそろって髭を生やしていますが、髭を生やしていない人物がいます。さらに、通常は正面かイエスの方を向いていますが、2人か3人のグループで会話しているようです。

7. 内観(イコノスタシス)
この聖堂はイコノスタシスが印象的です。
イコノスタシスは、信者の区域と聖職者の区域を分けます。

イコノスタシスの壁画をみます。
身廊と後陣を隔てる壁には、磔刑像の一部が残されている。その左側には、聖母とされる女性像と、もう一人の男性像が描かれている。形や顔の表現が豊かであるにもかかわらず、この一群は、聖堂内の他の壁画に比べてあまり精巧ではないため、見習いによって描かれたと考えられている。

北窓のアーチの内側には、神の子羊と香炉の天使たちが描かれています。

出入り口のアーチの内側には、天使たちが描かれています。
8. 内観(後陣)
後陣をみます。
後陣の北側には、6人の使徒が対になって会話している。おそらく、反対側の壁にも6人の使徒が描かれ、中央には威厳に満ちたキリストが描かれていた。様式的には、他のロマネスクの図式的表現と距離を置き、古い絵画の伝統と結びつけるような表現がなされている。使徒たちの上には、おそらく天使と思われる他の人物の一部が見える。

この聖堂の壁画群について、私はてっきりフレスコ画と思いましたが、違いました。
Románico Digital にこのように書かれています。
これらの絵画はフレスコ画ではなく、この地域の典型的な天然顔料を用い、何らかの有機物(おそらく動物由来の接着剤)を溶剤として描かれていることに注目すべきである。黒と白に加え、黄土色と赤が石灰モルタルの表面に使われている。
この壁画のロマネスク様式は、顔の特徴や衣服のひだを示す内側の線に基づき、輪郭がしっかりと描かれた直線的な特徴が顕著である。サン・エステバン(San Esteban)の壁画群には、他のロマネスク表現に見られるような、平行線の濃淡のグラデーションによるボリュームの追求は見られない。
この聖堂における様式は、一般的に、12世紀後半から13世紀初頭にかけてのロマネスク様式に属する、非常に直線的なものである。
サン・エステバン(San Esteban)の壁画は1200年頃に描かれたもので、ヒスパニック・ロマネスク美術の主要作品に次ぐグループに含まれる。
エルミタ・デ・サン・エステバン(Ermita de San Esteban)。岩のくぼみに建てられた独特の外観が人をひきつけます。内部には壁画がいっぱいです。
・
・
・
Vigueraの壁画が見たくて、前回の旅行でも行きたい候補だったのですが、バーで鍵を借りても庵までの距離が遠くて、道も険しいので体力的に無理だと考えて断念した場所なんです。写真で拝見してもやはり素晴らしい壁画です。フレスコ画ではないというのは驚きでした。
コメントありがとうございます。私も、ここ、行きたかったんです。
道はややすべりやすいですが、車を停めた場所からは、私の足でもわずか15分くらい。すぐに着いた感じでした。
壁画は、地元で調達できる顔料を動物の膠で溶いてモルタルになじませたもののようです。鮮明で透明感のあるフレスコ画とは異なりますが、むしろ粗野な印象だからこそ、この聖堂を荘厳しているように感じました。