2024年9月1日(日)、三番目に訪れたのはGarray、Ermita de los Santo Mártiresです。
ここは、主祭壇を支えている柱頭や内陣・後陣の持ち送りが素晴らしいです。南扉口、南小後陣のバルダチンと洗礼盤も良いです。
2024年7月1日から9月25日は、カスティーリャ・イ・レオン州政府の資金援助による記念碑的建造物開館プログラムのため、火曜から日曜の11:00〜14:00と17:00〜20:00に開いていました。
目次
1. Garray へ .
2. 概要 .
3. 平面図 .
4. 外観(後陣) .
5. 外観(身廊・南扉口) .
6. 内観(南小後陣) .
7. 内観(主後陣) .
1. Garray へ
ガライ(Garray)は、カスティーリャ・イ・レオン州ソリア県にある村で、県都ソリアの約6km北東にあります。
Ermitaは、集落から250メートルほど南に行った丘の斜面にあります。

2. 概要
役場(Ayuntamiento de Garray)のWebサイトによる概要です。私が一部を抜粋して太字で和訳します。
この地方における後期ロマネスク建築の興味深い例である。後陣の外側の切石には1231年と刻まれているが、これはこの建物の完成年と一致する。
ガヤ・ヌニョ(Gaya Nuño)によって研究され、彼の大著『ソリア県のロマネスク』(El románico de la provincia de Soria)に収められている。
この場所には、それ以前にも建物があったが倒壊または焼失して消失し、11世紀に作られた洗礼盤だけが残っている。
もともとは聖ミカエルに捧げられ、その後、18世紀にローマから聖遺物がもたらされた初期キリスト教時代の聖殉教者らである、聖ネレウス、聖アクイレウス、聖ドミティラと聖パンクラティウスに捧げられた。
北壁と南壁は近代的だが、それ以前の基礎の上にある。しかし、西壁は1.30メートル東に移動されたため、身廊が短くなり、元の西壁の基礎が見える。このため、中央の後陣が不釣り合いなほど大きいにもかかわらず、短い身廊に三後陣がある形で、スペイン・ロマネスク建築の中でも非常に珍しいものとなっている。
一方、聖具保管室は1530年に増築されたものである。
後陣は良質の石積みで、窓と、複雑な葉と果実の柱頭を持つ半円柱がある。後陣の屋根はオリジナルのもので、黒っぽいスレート板が並んでいる。
この後は、Románico Digital を引用する時に太字で書きます。
3. 平面図
Románico Digital による平面図です。東が右です。

4. 外観(後陣)
後陣をみます。

窓が三つあり、縁が菱形模様で装飾されています。

内陣と後陣の軒下は、持ち送りや柱頭で支えられています。
内陣と後陣の持ち送りには、松ぼっくり、実をつけた葉、編み模様、樽、四足獣、鳥、女性の顔などが彫られています。
立派な彫刻で、腕のある親方が手がけたようです。
5. 外観(身廊・南扉口)
身廊の持ち送りをみます。

身廊の持ち送りには、実をつけた葉、ネコ科の動物の頭部、幻想的な生き物、人物の顔などが彫られています。
大きく盛り上がった目が特徴的です。
南扉口をみます。この建物で唯一の扉口です。

南扉口の持ち送りには、ライオン、怪物の顔、ケンタウロス、人物の顔などが彫られています。
それぞれの彫り方の特徴が違うので、複数の親方の手によるもののようです。
ティンパヌムには美しいロゼットが彫られています。

ティンパヌムの美しいロゼットの上には、人物の顔が並んでいます。大きく盛り上がった目が特徴的です。

柱頭には、幻想的な生き物たちが彫られています。
この扉口は、残っているナンバリングが示すように、再び組み立てられたものである。左側の石には、「NEREO / XIMENEZ / AÑO DE 1832」(ネレオ / シメネス / 1832年)と刻まれている。
6. 内観(南小後陣)
教会の中に入ります。

南小後陣には、サン・フアン・デ・ドゥエロ修道(Monasterio de San Juan de Duero)で見たようなバルダチン(東方の影響を受けた聖域)があります。
ちなみに、北小後陣にもバルダチンがありましたが、解体されて主祭壇の柱として再利用されました。詳細は後述します。

南小後陣の祭壇もロマネスク様式です。美しい。

南小後陣の天蓋を支える柱頭にも、ロマネスク彫刻があります。
左(北)側の柱頭には、チュニックを着た16人の人物が彫られています。

中央の人物は左手に司教杖を持っています。

その他の11人は両手で開いた本を持ち、4人は玉のついた杖を持っています。

右(南)側の柱頭には、舟に乗る15人の人物が彫られています。
中央の人物は、右手で祝福し、左手で司教杖を持っています。

その他の人物たちは、棒を持ったり、舟を持ったり、舟から顔だけを出していたりします。

舟といえば「奇跡の漁」(マタイ4章、マルコ1章、ルカ5章、ヨハネ21章)を思い出します。でも、中央の人物に十字ニンブスがなく、司教杖を持っていて、弟子の数も多いので、一致しません。「奇跡の漁」になぞらえているのかもしれません。
7. 内観(主後陣)
主後陣をみます。
半円形の内側は、18世紀のバロック様式の祭壇画で覆われている。

主祭壇(0.92 x 2.15 x 0.15 m)もロマネスク様式で、聖遺物用の穴がある。二つの二重基盤と二重柱頭の上に乗っており、これらの要素は、北小後陣の消失したバルダチンに由来すると考えられる。

主祭壇を支えている二重柱頭
主祭壇を支えている二重柱頭をみます。
左(北)側の柱頭には、イエスの誕生に関連する場面が彫られています。
北面には「受胎告知」(『ルカによる福音書』1章)と「ご訪問」(『ルカによる福音書』1章)。

西面にはイエスに母乳を与える聖母マリア。
両側の2人の女性たちは、産婆かもしれません。外典(『原ヤコブ福音書』19章と『偽マタイ福音書』13章)によると、産婆がイエスの生誕に立ち会います。

南面には「ご生誕」(『マタイによる福音書』1章、『ルカによる福音書』2章)。福音書』2章)。

右(南)側の柱頭には、イエスの復活に関連する場面が彫られています。
西面には、「イエスの復活」(『マタイによる福音書』28章、『マルコによる福音書』16章、『ルカによる福音書』24章、『ヨハネによる福音書』20章)
マリアたちは、イエスに塗るための香油を持っています。

続く南面には、墓石の上に座る天使が彫られています。
さらに、場面は展開し、「キリストの出現(またはノリ・メ・タンゲレ)」(『ヨハネによる福音書』20章)が彫られています。
マグダラのマリアが、復活したイエスの足元にひざまずいています。

人物の膨らんだ目、巻き毛、重くしなやかなひだを持つ布、関節、それを囲む切り込み、女性像の特徴的なヴェール。ソリアのサント・ドミンゴ(Santo Domingo)、サン・ニコラス(San Nicolás)、サン・フアン・デ・ドゥエロ(San Juan de Duero)など、12世紀末から13世紀の最初の10年間に活躍した工房とのつながりを確認することができる。
オリジナルの祭壇正面
18世紀のバロック様式の祭壇画の下には、祭壇正面が埋め込まれています。
後陣には、ロマネスク様式の祭壇の断片が保存されている。どちらの正面も、片方の破片ともう片方の破片を混ぜて再び組み立てられた。
洗礼盤
内陣には、直径1.12m、高さ0.92mの洗礼盤がある。
役場(Ayuntamiento de Garray)のWebサイトによると、倒壊または焼失して失われた以前の建物にあった、11世紀の洗礼盤です。
半円アーチと馬蹄形アーチが連続する装飾が施されています。
その下には、同心円、ロゼット、手を広げて祈る二人の人物。

首から財布をぶら下げた守銭奴、十字架、蛇などが彫られています。

壁に面している南面には、何かをつかむ人物が彫られています。

良い笑顔。

Ermita de los Santo Mártires。主祭壇を支えている柱頭や内陣・後陣の持ち送りが素晴らしいです。南扉口、南小後陣のバルダチンと洗礼盤も良いです。
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