2024年8月13日(火)、最初に訪れたのはMelfi、Chiesa Rupestre di Santa Margheritaです。
ここは、13世紀末から14世紀初頭にかけて描かれたフレスコ画のある岩窟教会です。
2024年、岩窟教会への訪問はメルフィ文化観光振興会(Associazione PRO LOCO Melfi)に予約が必要でした。以下の日程で予約が可能でした。
4月から9月は10:00〜11:30と16:00〜17:30
10月から3月は10:00〜11:30と15:00〜16:30
有料(€8)でした。
目次
1. Melfi へ .
2. 概要 .
3. 内観 .
1. Melfi へ
メルフィ(Melfi)は、バジリカータ州ポテンツァ県にある町で、県都であり州都でもあるポテンツァの約40km北にあります。
岩窟教会は、メルフィの町から国道303号線をラポッラ(Rapolla)方面に約1km進んだ丘の上にあります。
岩窟教会のある場所には、大きな墓地があるため、大きな駐車場があります。

坂道を下ると、左側に岩窟教会への入口があります。

2. 概要
教会の外に案内板がありました。私が一部を抜粋して太字で和訳します。
凝灰岩を完全に掘削した岩窟教会である。歴史的には、聖バシレイオス(S. Basilio)の信奉者である東方の修道士たちによって掘られたと考えられている。
火山性堆積物からなる地質学的特徴に加え、荒々しい岩壁を飾る多数の壁画があるため、重要である。フレスコ画は13世紀末から14世紀初頭にかけて描かれた。
アンジュー文化に彩られたビザンチン様式と、カタロニア表現を絵画化している。
特別な重要性は「三人の死者と三人の生者」の場面によって示される。皇帝フリードリヒ2世の貴重な肖像画のひとつがそこに存在しているからである。
この後は、案内人から聞きとった内容を引用する時に太字で書きます。
3. 内観
岩窟教会の中に入ります。
単身廊で、柱間が二つあります。

聖ミカエル礼拝室
第1柱間の左(北)側の祭室の正面中央には、聖ミカエルが描かれています。聖ミカエル礼拝室と呼ばれています。
聖ミカエルの両側に描かれているのは、聖女マルガレタ(Santa Margherita)と洗礼者ヨハネである。

洗礼者ヨハネは、イエスの方を向き、とりなしの姿である。

聖ミカエル礼拝室の東壁(イエスの上)に描かれているのは、中世後期に流行した「三人の死者と三人の生者」である。「メメント・モリ」と呼ばれるもので、フランスの影響が指摘されている。
「三人の死者と三人の生者」に登場する三人の生者は若い貴族で、三人の死者はさまざまな境遇で輝かしい浮世を過ごした来歴を持ちます。写本の詩(the ‘De Lisle Psalter’ f. 127v)では、三人の若い貴族が狩りに出ていたとき、三人の死者に出くわします。三人の死者は彼らに「忘れるな、お前たちもいずれ我らのようになる、手遅れになる前に行動を改善せよ」と諭します。
ここでは、三人の生者は神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世とその妻子である。
フリードリヒ2世(1194年〜1250年)の古い肖像画のひとつとして注目されているようです。

聖ミカエル礼拝室の西壁には、聖ミカエル、聖母子、福音書記者聖ヨハネが描かれている。

聖ステファノ礼拝堂
第1柱間の右(南)側の祭室の正面中央には、聖ステファノが描かれています。祭壇はありませんが、聖ステファノ礼拝室と呼ばれています。

聖ステファノ礼拝室の西壁に描かれているのは、聖アンデレである。Gabelkreuzと呼ばれる型の十字架に縛られており、13世紀のゲルマン細密画のような図像であることから、ドイツの影響が指摘されている。

身廊のアーチ
身廊の二つの柱間を分けているアーチには、聖人たちが描かれています。
左(北)側には、ビザンチン様式で、聖ルチアと聖カタリナが描かれている。
厳粛に正面を向いた聖女たちは豪華な衣装を身にまとっています。

右(南)側には、聖ラウレンティウスが描かれている。
聖ラウレンティウスはスペイン生まれの3世紀の殉教者です。(ちなみに、伝説では、生きながら鉄格子の上で火あぶりされて、執行人に「こちら側は焼けたから、もうひっくり返してもよい。」と伝えたといわれています。)

主後陣
最後に、主後陣をみます。
主後陣の正面中央には、聖女マルガレタ(Santa Margherita)が描かれている。誰がいつ作ったのか詳細は文書記録がないため不明だが、エクス・ヴォート(感謝の印)につくったものの可能性がある。
ヤコブス・デ・ウォラギネの書いた『黄金伝説』の記述によれば、聖女マルガレタはアンティオキア(現在のトルコ共和国)の出身。異教の神官テオドシオスの娘でしたが、洗礼を受けます。マルガレタの真珠のような美しさをみた長官オリュブリオスは、妻に迎えようと考え、同じ神々を拝むよう言いますが、マルガレタはこれを拒絶し、拷問されて殉教します。
このあたりは、聖女殉教の定番コースでしょう。「美しい乙女が異教徒のおえらいさんに見染められて拷問→殉教」ってことで。
独特なのは、竜の腹から出てきた部分です。マルガレタが拷問を受ける中で起きた奇跡の一つで、彼女は竜の姿をした悪魔に呑みこまれ、腹の中で十字を切ります。竜は十字の印がもつ力のためにまっぷたつに破裂し、彼女は傷ひとつ負わずに出てきたというもの。
「苦難を乗り越えて胎内から出てきた」ので、聖女マルガレタは安産の守護聖人として信仰されています。

待望の子をもうけた夫婦が、エクス・ヴォート(感謝の印)として作らせたのかもしれません。
Chiesa Rupestre di Santa Margherita。13世紀末から14世紀初頭にかけて描かれたフレスコ画のある岩窟教会です。
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