2024年9月1日(日)の最後、八番目に訪れたのはSoria、サン・フアン・デ・ラバネラ教会(Iglesia de San Juan de Rabanera)です。
ここは、交差部のドーム、南北の小後陣、内陣と後陣、南扉口などの装飾が繊細で、ソリア・ロマネスクの上品さや優美さを象徴します。西扉口は、廃墟となった近隣のサン・ニコラス教会(iglesia de San Nicolás)の扉口が20世紀に移築されたもので、彫刻が見事です。
2024年7月1日から9月8日は、カスティーリャ・イ・レオン州政府の資金援助による記念碑的建造物開館プログラムのため、火曜から日曜の11:00〜14:00と16:30〜19:00に開いていました。それ以外の期間は、教会は聖ミサのとき(月曜〜土曜19:00と日曜13:00)に開くようでした。
Soria では、4か所に行きました。以下のように4回に分けて書きます。
<1> Monasterio de San Juan de Duero
<2> Concatedral de San Pedro
<3> Iglesia de Santo Domingo
<4> Iglesia de San Juan de Rabanera
目次
1. Soria へ .
2. 概要 .
3. 平面図 .
4. 内観 .
5. 外観(後陣) .
6. 外観(南扉口) .
7. 外観(西扉口) .
1. Soria へ
ソリア(Soria)は、カスティーリャ・イ・レオン州ソリア県の県都で、首都マドリードの約187km北東にあります。
教会は、サン・フアン広場(plaza de San Juan)に面していて、歴史的中心地にあります。

2. 概要
教会の外に案内板がありました。私が一部を抜粋して太字で和訳します。
ソリア・ロマネスクの繊細
歴史:賢王アルフォンソ10世の調査によると、ラバネラ(Rabanera)の名前は12世紀にソリアの再定住のためにこの地域に住むようになった人々の出所であるRabanera del Campoに由来し、この場所はかつてソリアにあった35の地区のひとつであった。
建物: ラテン十字式で、身廊、交差部と翼廊、内陣、半円形の後陣がある。主扉口は西にあり、装飾された柱頭で支えられた四つのアーチボルトで構成されている。アーチボルトは、片側がキリストの生涯の場面、もう片側が聖ニコラウスの奇跡の場面で飾られた柱頭で支えられている。聖ニコラウスは、司教姿で再びティンパヌムに描かれている。後陣には、ビザンチンの影響を受けた帆立貝装飾の窓が二つあるが、これは注目に値する。交差部はビザンチン様式のドームで覆われている。
ご存知だろうか?1908年、ロマネスク様式のサン・ニコラス教会(iglesia románica de San Nicolás)が廃墟となった後、その扉口を解体し、この教会に移築することが決定された。
この教会のオリジナルの扉口は南側で壁に塞がれている。
3. 平面図
Románico Digital による平面図です。東が右です。

4. 内観
教会の中に入ります。

案内板に、この教会を形容して「ソリア・ロマネスクの繊細(La esbeltez del románico soriano)」とあります。
La esbeltezというというのは、繊細さ、すらりとした上品さや優美さを意味するようなので、この教会をうまく表現したなあと感じます。
内部では、交差部のドーム、南北の小後陣、内陣と後陣などの装飾がとても繊細です。
交差部のドーム
ドームは、四角形の交差部から八角形のスクインチを経由して円形になります。

スクインチの装飾が緻密。

南北の小後陣
私が行ったとき、南小後陣に老婦人が2人いました。2人は祈りを捧げ終わると美しいハーモニーで讃美歌を歌い始め、教会は清らかな調べに包まれました。
彼女たちはプロの音楽家のようでした。その美声がふさわしい、優雅な小後陣です。

南小後陣は、柱の下にロゼットがありました。

こうした優美なロゼットの装飾は、南扉口のティンパヌムにも残っています。
内陣と後陣の帯状装飾
内陣と後陣には、帯状装飾が残っています。

上品で美しいです。

5. 外観(後陣)
外に出て、東に行きます。

後陣には窓が二つあります。簡素な装飾があります。

軒下の一部には帯状装飾が残っています。

持ち送りにも彫刻があります。
葉に包まれた丸い果実のような形、修道士、だと思います。

6. 外観(南扉口)
南に行きます。

この教会オリジナルの上品な扉口が残っています。

ティンパヌムは、後代に穴が開けられてしまったようですが、優美なロゼットが並んでいます。

7. 外観(西扉口)
西に行きます。

西扉口をみます。1908年に、廃墟となった近隣のサン・ニコラス教会(iglesia de San Nicolás)の扉口を解体して、ここに移築することが決定されました。
左(北)側の柱頭には、キリストの生涯の場面が彫られています。
「キリストの出現(またはノリ・メ・タンゲレ)」(『ヨハネによる福音書』20章)。
「キリストの復活」(『マタイによる福音書』28章、『マルコによる福音書』16章、『ルカによる福音書』24章、『ヨハネによる福音書』20章)。
「ベタニアでの油注ぎ」(『マタイによる福音書』26章、『マルコによる福音書』14章、『ルカによる福音書』7章、『ヨハネによる福音書』12章)。
「エマオに向かう弟子たちに対するキリストの出現」(『ルカによる福音書』24章)。

「不信のトマス」(『ヨハネによる福音書』20章)。

右(南)側の柱頭には、バーリ(Bari)の聖ニコラウスにまつわる奇跡の場面が彫られています。
聖ニコラウスは4世紀頃の小アジア(ミュラ)の司教で、ヤコブス・デ・ウォラギネが書いた『黄金伝説』には数々の奇跡が書かれています。貧しい貴族の三人の娘が身売りされるところを救った話。嵐を静めて水夫たちを救った話。荷揚げされた小麦を増やして地方を飢饉から救った話。讒訴によって処刑されるところだった三人の将軍を救った話。

こちらは、讒訴によって処刑されるところだった三人の将軍を救った話が彫られているようです。

ティンパヌムには、侍者たちに挟まれた聖ニコラウスが彫られています。聖ニコラウスは司教の聖冠を身につけて聖杖を持ち、祝福しています。
後期ロマネスク様式の整った彫り方で、サント・ドミンゴ(Santo Domingo)のファサードを思い出します。

サン・フアン・デ・ラバネラ教会(Iglesia de San Juan de Rabanera)。交差部のドーム、南北の小後陣、内陣と後陣、南扉口などの装飾が繊細で、ソリア・ロマネスクの上品さや優美さを象徴します。西扉口は、西扉口は、廃墟となった近隣のサン・ニコラス教会(iglesia de San Nicolás)の扉口が20世紀に移築されたもので、彫刻が見事です。
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