2024年8月19日（月）の最後、六番目に訪れたのはPalermo、Chiesa di San Giovanni degli Eremitiです。

ここは、パレルモの建築遺産の中でも最も独特な建造物のひとつですが、同時に最も歴史的に問題の多い建造物でもあります。五つのドームと回廊が印象的です。フレスコ画の断片も残っています。

2024年、教会は月曜から土曜の9:00〜18:30と日曜の9:00〜13:00に開いていました。有料（€7）でした。

Palermo では、10か所に行きました。以下のように10回に分けて書きます。
＜1＞ Chiesa Santa Maria dell’Ammiraglio (Chiesa della Martorana)
＜2＞ Chiesa di San Cataldo
＜3＞ Chiesa San Giovanni dei Lebbrosi
＜4＞ Chiesa di Santo Spirito
＜5＞ Porta Mazzara
＜6＞ Chiesa di San Giovanni degli Eremiti
＜7＞ Cattedrale di Palermo
＜8＞ Palazzo della Zisa
＜9＞ Cappella Palatina (Palazzo dei Normanni)
＜10＞ Sala di Re Ruggero (Palazzo dei Normanni)

目次

1. Palermo へ　.
2. 概要　.
3. 平面図　.
4. 2019年の考古学調査　.
5. 外観　.
6. 内観　.
7. 回廊　.

1. Palermo へ

パレルモ（Palermo）は、シチリア島最大の都市にしてシチリア州の州都であり、パレルモ県の県都です。首都ローマの約428km南にあります。

教会は、ベネデッティーニ通り（Via dei Benedettini）沿い、Porta MazzaraとPalazzo dei Normanniとの間にあります。

2. 概要

教会の中に複数の案内板がありました。私が一部を抜粋して太字で和訳します。

サン・ジョヴァンニ修道院の複合施設は、その独特な特徴により、パレルモの建築遺産の中でも最も独特な建造物のひとつであるが、同時に最も歴史的に問題の多い建造物でもある。

1132年頃、サラセン人の敗北後、ルッジェーロ王の命により、王宮の隣に修道院が建てられ、聖ヨハネに捧げられた。その後、ベネディクト会に修道院として与えられた。この選択は偶然ではなかったであろう。当時、ベネディクト派またはシトー派の修道士はカトリック教会内で最も影響力のある修道会であり、その代表者たちはローマ教皇庁の重要な地位を占めていた。

しかし、一部の著述家によると、サン・ジョヴァンニ・デリ・エレーミティ（San Giovanni degli Eremiti）は、大聖グレゴリウス（San Gregorio Magno）が581年に創設したサンテルメーテ修道院（monastero di Sant’Ermete）の跡地に創設された。

当時すでに、この周辺地域は、主に近隣のケモニア（Kemonia）の水のおかげで肥沃な野菜畑や庭園が広がっていた。1148年のルッジェーロ2世の証書には、修道院の庭園自体がオレンジの木やバラの茂みで繁栄していると記述されている。

回廊については、文書には記載されていないため、1300年頃に建てられたようで、ベネディクト会の修道士が使用していたとことを示す文書は確認されていない。

1464年、当時修道士の数が少なかったサン・ジョヴァンニ修道院は、教皇パウルス2世の命により、サン・マルティーノ・アッレ・スケーレのベネディクト会修道士たちによって再建されたが、修道院の衰退は止まらなかった。このため、16世紀の30年代から40年代にかけて、おそらくはシチリアにカール5世が到着した時期と重なる時期に、礼拝所を根本的に改革し、修道院から世俗の教会へと変えるという決定がなされた。その結果、かつてのチャプタールームは広間に改装され、かつての教会は修道士のクワイヤにまで縮小された。

このレイアウトは修復工事が開始された1882年まで続いた。修復工事は、推定される本来の外観を復元することを目的としていた。修道院の建物のほとんどは、当初の構成には属さないと考えられ、姿を消した。特に、かつて北側と東側の教会に付属していたいわゆる修道院長邸や回廊に繋がる建造物は姿を消した。その跡地には、エキゾチックな植物が溢れる緑豊かな庭園が造られた。

この後も、案内板を引用する時に太字で書きます。

3. 平面図

案内板による平面図です。東が上です。

ドームは五つあります。身廊に二つ、聖域に三つです。

4. 2019年の考古学調査

近年の考古学調査に基づくアップデート情報が案内されていました。

2019年の夏、来訪者の動線を変更する作業中に、考古学調査が行われた。

発掘調査は二つのエリアで行われた。ひとつは教会内部の後陣のエリア、もうひとつは庭園の南西の角、境界壁の近くのエリアである。

庭園の南西の角のエリアでは、おそらく13世紀に遡る床が発見された。

教会内部の後陣のエリアでは、教会内部の最古の層であるイスラム教のネクロポリス（共同墓地）が確認された。このネクロポリスは、おそらくイスラムの支配が終わったことで使われなくなった。最初の建物は、ノルマン時代のはじめに建設された可能性があると考えられている。したがって、この考古学分析は、1882年の修復工事を行った建築家Giuseppe Patricoloが考えていたようなイスラムのモスクの存在を否定するものである。

建築家Giuseppe Patricoloは、Chiesa Santa Maria dell’Ammiraglio (Chiesa della Martorana)、Chiesa di San Cataldo、Chiesa San Giovanni dei Lebbrosi、Chiesa di Santo Spirito の修復工事も行いました。彼がバロック期を含む後代の装飾を取り除き当初の姿に戻そうとしたことで、パレルモの記念碑的建造物の現在の姿があります。

5. 外観

外観では、半円形の後陣は主後陣だけです。

ドームは、聖域の上のものが三つ見えます。（身廊の上の二つは西側に行くと見られます。）

チケット売り場で料金を払い、エキゾチックな庭園を抜けると、教会があります。

6. 内観

教会の中に入ります。

身廊の柱間は二つ。両方の上に大きいドームがあります。

聖域に行きます。

外観では半円形の後陣は主後陣だけでしたが、内観では三つあります。

南北の小後陣は、壁を窪ませて半円形がつくられています。

通路に立って見上げると、身廊のものより小さなドームがあります。

教会の南隣にある広間に行きます。

15世紀に、かつての壮麗さを取り戻そうとしたカール5世が墓地を取り壊して教会の敷地を拡張した際、チャプタールームだったこの部屋は、広間へと改築されました。

東壁に絵画が残っています。

（Zodiaque）la nuit des temps『Sicile romane』によると、威厳に満ちた聖母マリアが二人の聖人に挟まれている様子が描かれています。 ビザンチン様式のモデルに厳格に従って真正面から描かれたこれらの人物像は、おそらく13世紀に描かれたものと思われます。

7. 回廊

回廊に行きます。

現地にFAI（Fondo Ambiente Italiano）による案内板がありました。

パレルモの文化環境遺産監督局が、マッシモ劇場（Teatro Massimo）で2018年大晦日に開催されたニューイヤーコンサートの収益金を資金源とするプロジェクトの一環としてサン・ジョヴァンニ・デリ・エレミティ（San Giovanni degli Eremiti）の記念碑的複合施設の回廊庭園の改修工事を実施した。市議会会長がスポンサーを務めた。

資金難で改修工事がままならないのはよく聞く話です。だから、改修できてよかったと思いました。

回廊をみます。

規則正しく並んだ二列の円柱が美しいです。

回廊越しに、身廊の二つのドームと鐘楼の上のドームが見えます。

教会の外の案内板に、こう書いてありました。

この記念碑的な複合施設は、ユネスコの世界遺産「パレルモのアラブ＝ノルマン様式の建造物群及びチェファルとモンレアーレの大聖堂」の一部であり、ノルマン人がシチリア島を支配していた時代（1130年～1194年）に建てられた九つの宗教的・市民的建造物群のひとつである。それらは、西洋、ビザンチン、イスラム文化の融合の優れた例である。この交流により、空間、構造、装飾の新しい概念に基づく建築的・芸術的表現が生まれ、地中海地域全体に広がった。

Chiesa di San Giovanni degli Eremiti。パレルモの建築遺産の中でも最も独特な建造物のひとつですが、同時に最も歴史的に問題の多い建造物でもあります。五つのドームと回廊が印象的です。フレスコ画の断片も残っています。

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