2023年9月14日(木)の最後、三番目に訪れたのは Noli、聖パラゴリオ教会(Chiesa di San Paragorio)です。
ここは、猫の足跡つき屋根瓦があります。地下聖堂の絵画、彫刻の断片、天井画や後陣を彩っていた陶器が、何層にも重なる聖域の歴史をささやきます。
2023年は、木曜16:00~18:00、土曜10:00~12:00と16:00~18:00、日曜10:00~12:00に開いていました。有料(€2)です。
目次
1. Noli へ .
2. 概要 .
3. 平面図 .
4. 外観 .
5. 内観(陶器) .
6. 内観(全体、オリジナルの天井) .
7. 内観(説教壇) .
8. 内観(猫の足跡つき屋根瓦) .
9. 内観(地下聖堂) .
1. Noli へ
ノーリ(Noli)は、リグーリア州サヴォーナ県にある、人口約2,600人のコムーネ(自治体)で、サヴォーナの南西約12km、ジェノヴァの南西約47kmに位置します。
リヴィエラ・ディ・ポネンテの海岸沿いの、典型的な海辺の町です。
私は、教会の南西にある駐車場に車を停め、歩いて教会に向かいました。
教会は柵で囲われています。
2. 概要
教会の内外にたくさんの案内掲示がありました。私が一部を抜粋して太字で和訳します。
ノーリ(Noli)という名は、ビザンチン帝国がリグーリア地方を支配していた時代に「新しい町」として建設(または再建設)された「ネアポリス」に由来していると思われる。
この教会は、聖パラゴリオに捧げられている。聖パラゴリオは、伝説によると、仲間のパルテオ、パルテノペウス、セヴェリヌスとともにコルシカ島で殉教した東方の聖人である。
ロマネスク様式(11世紀)のこの教会は、イタリア北西部の建築の宝石のひとつである。
この教会は、1889年から1890年にかけて修復され、その後、国の重要文化財に指定された。内部は15世紀のフレスコ画で飾られ、半円形の後陣を持つ三つの身廊に分かれている。
この後も、案内掲示を引用する時に太字で書きます。
3. 平面図
案内掲示による平面図です。
発掘調査により、教会の外で確認された初期キリスト教時代の洗礼堂に関連する建造物の壁が、内部にも続いているのが確認され、かなりの規模の宗教的複合体(洗礼堂に隣接する教会)であったことがわかる。これらの建物の建築層からは、5世紀半ば頃のテラコッタ製ランプ、コイン、アンフォラなどが出土している。
歴史が層になっています。
4. 外観
教会の南西側については、教会を囲んでいる柵の外から見ます。
三つの大きなアーチ型の開口部は、1240年から1270年の間に作られたものである。1239年にサヴォナ・ノーリ教区が設立され、教会が大聖堂に昇格した後に行われた改修工事の結果である可能性が高い。
南側では、1972年に行われた発掘調査によって、豊かなネクロポリスとかつての宗教複合施設の周壁が明るみに出た。
ファサードの原初的な配置はまだ不明である。最近の研究によれば、西側は長い間正面玄関として機能していなかったという。おそらく当初から、正面扉口は現在14世紀の扉口がある北側だったのであろう。
教会が開く時刻になると、ノーリ教区聖パラゴリオ友の会(Amici di San Paragorio Parrocchia di Noli)の人たちがやってきて、後陣の海(東)側にある門を開けます。彼らに入場料(€2)を支払うと、訪問開始です。
主後陣の盲アーチの上には、もともと12個の釉薬のかかった陶器が壁に埋めこまれており(10個が保存されている)、装飾的な機能を持っていた。これらの器は11世紀初頭に作られたもので、一部は北アフリカ産、一部はシチリア産の模倣品である。四つは単色(エメラルド色または深緑色)、六つは多色で、様々な図像や装飾モチーフが描かれている。
特に、星をモチーフにしたものと、翼を広げた鳥(猛禽類)が描かれたものがある。陶器の分離と修復により、それらが教会建設と同時に石組みに挿入されたことが確認できた。これにより、この教会は11世紀初頭に建てられたことが確実となり、リグーリア州最古のロマネスク教会に数えられることになった。保護と保存のため、オリジナルの陶器は現在教会内に保管され、特別なショーケースに展示されている。
教会の中に入ります。
5. 内観(陶器)
10個の陶器が、こちら。
星をモチーフにしたものと、翼を広げた鳥(猛禽類)が描かれたもの
力づよく、そして美しい色合いです。
教会の中には、他にも、たくさんの展示があります。
6. 内観(全体、オリジナルの天井)
身廊の木造トラス天井は、1889年にアイフレード・ダンドラーデ(Aifredo D’Andrade)がオリジナルを忠実にリメイクしたものである。
オリジナルの一部は北側廊のカウンター・ファサードにある11世紀の装飾の痕跡とともに保存されている。
11世紀の装飾が残っています。
高位の聖職者や天使などが描かれています。
見守られているような心地になれたのかも。
7. 内観(説教壇)
説教壇は、8世紀に大理石で作られた3つのオリジナルの断片を挿入することによって、19世紀にアイフレード・ダンドラーデ(Aifredo D’Andrade)によって再建された。
次の三つのオリジナルの断片がある:内陣障壁の断片(8世紀第3四半期)、蔓と絡み合う円が描かれた角柱(8世紀第3四半期)、そして、8世紀後半から9世紀初頭のものとされる、円形に菱形と十字形が絡み合った断片である。
この部分かもしれません。
それらしいところに、赤く丸印をつけてみました。
小さな断片から大きな説教壇を再建するなんて、がんばりましたな、アイフレード・ダンドラーデ(Aifredo D’Andrade)さん。
8. 内観(猫の足跡つき屋根瓦)
10世紀の屋根瓦に、くっきりと猫の肉球跡。
展示は、わかりやすくするために、わざわざ、黄色い矢印で肉球跡を強調してあります。
こんなふうに展示しちゃうの、とても良い。私は大好きです。
9. 内観(地下聖堂)
内陣の下には、地下聖堂があります。
19世紀のアイフレード・ダンドラーデ(Aifredo D’Andrade)の研究によって、現在、中世教会の屋外にある石棺や多数の床面だけでなく、近世に納骨堂として再利用さてれいた地下聖堂も確認することが可能になった。一方、その工事によって、初期キリスト教教会の内陣と後陣の一部が破壊され、その存在が近年に考古学的発掘調査によって確認された。
地下聖堂は、十字アーチ型の東向きの二つの空間に分かれており、もともとは独立した古い聖堂であった可能性があるが、現在は通路と新しい床によってつながっている。
主祭室は、ローマ時代の大理石を再利用した小さな柱が特徴的である。ここには、リグーリア地方に残る数少ない初期ロマネスク絵画が残されている。2人の人物を見ることができるが、そのうちの左側の人物は、ニンブスに頭を包まれており、キリストであることが確認されている。この絵画は、最近再調査され、福音書の「キリストと井戸のサマリア人の女」との関連が指摘された。
最新の考古学的調査により、地下聖堂の床下には、19世紀に発見されたものや、教会の南西にある外部発掘区域で現在確認されているものと同様の石棺が存在することが判明した。こうして、初期キリスト教集団に隣接する古代後期のネクロポリスの存在が、さらに証明されたのである。
聖パラゴリオ教会(Chiesa di San Paragorio)。猫の足跡つき屋根瓦があります。地下聖堂の初期中世の絵画、彫刻の断片、天井画や後陣を彩っていた陶器が、何層にも重なる聖域の歴史をささやきます。
2023年のイタリア🇮🇹巡りは、ここ、ノーリ(Noli)で終わりです。夫と私は、翌日にアラッシオ(Alassio)でレンタカーを返却して電車に乗り、フランス🇫🇷へと移動しました。
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地下聖堂の写真(一番最後の写真)の左側に移っているフレスコ画?はどの時代のものでしょうか?もしわかれば、教えてください。
私はロマネスク時代のものだと思います。また、現地の案内掲示には「初期ロマネスク(prima età romanica)」とありました。さらに、Jaca Book(Fulvio Cervini『Patrimonio Artistico Italiano LIGURIA ROMANICA』2002) にも「11〜12世紀か?(XI-XII secolo?)」と書かれています。
ありがとうございます。来月(11月)下旬にLombardia、Piemonte, Liguriaあたりを(そして、Parisへの途上にProvence、Alpesに寄れるかな)と、企んでおりますが、この教会も含め、予想以上に(ほぼ)土日のみOpenのところが多く、日程の組み立てに苦闘しています。
Lombardia、Piemonte, Liguria、それは楽しみですね。
土日のみOpenの苦闘、わかります。私は(月〜金は別の地域の見学をして)土日にこのあたりに戻ってくるという日程にしたので、大移動の連続になりました。見ごたえのあるロマネスクが多かったです。
よい旅になりますように!