2022年8月4日(木)、四番目に訪れたのは Saulcet 。Église Saint-Julien です。
ここは、13世紀初め以降に描かれた壁画で有名です。ロマネスク様式の建物に描かれています。
Saulcet へ
私はアルトンヌ(Artonne)から北に49分ほど車を運転し、かわいらしい村につきました。15時頃のことです。
外観をみます。
Église Saint-Julien の外観:全体
坂を下りながら南側を見ると
南扉口が大きく開け放たれていました。
東側に行ってみると、後陣は長方形。
坂をのぼって、
西側に戻ると、ポーチがありました。
Église Saint-Julien の概要
教会の外に案内板がありました。一部を抜粋して太字で和訳します。
ロマネスク様式の建物は、身廊とその両脇の側廊からなり、長方形の後陣は二つの小後陣で縁取られている。西側の、身廊と側廊の二つの柱間は12世紀前半のものである。東側は後世のもので、1200年ごろのものと思われる。
教会の名声は、その壁画に由来している。1927年に発見された壁画には、勝利の聖母、受胎告知、イエスの生誕、磔刑、聖ニコラスの殉教、聖ルイと思われる王への行列が描かれている。「三人の死者と三人の生者」の絵は、中世後期の図像的テーマを代表するものである。珍しいところでは、窃盗で絞首刑になった青年が、数週間後に聖ヤコブによって奇跡的に救われる様子を描いた「絞首刑の男の奇跡」がある。
この、「絞首刑の男の奇跡」が特に有名ですよね。
15世紀には、”caquetoire”と呼ばれる木製のポーチが追加された。礼拝後に信者が悪天候から守られながら談笑できるようにしたものである。
交差部には、四角形の下部の上に八角形を載せたロマネスク様式の鐘楼がそびえ立っている。最上部の高い石の尖塔は、14世紀に建てられた。
フロアプラン
教会の外の案内板にフロアプランがありました。東が上です。
三身廊、三後陣です。
先客がいた
教会の中に入ると、こんな小さいロマネスク教会には珍しく、先客がいました。三脚を立てて熱心に壁画を撮影しています。
私も(三脚は使いませんが)あちこち撮影しました。彼の邪魔にならないように「ここに立っても大丈夫ですか?」などと確認しながら作業しました。
やっぱり、しっかり写真におさめたくなる教会なのかな、と感じた次第です。
この彼とは、後で偶然に再会しますが、それは次の教会での話。
Église Saint-Julien の内観:全体
教会の中の、全体の様子。
狭い教会の中が、壁画がいっぱいです。
音声ガイドと案内ファイル
教会の中に、案内ファイルがありました。
案内ファイルによると、西側ポーチ“caquetoire”の中にあるQRコードを使うと、「次はここを見ましょう」とまるで一緒に歩いているように案内する音声ガイドが聞けて、案内ファイルは音声ガイドを文字におこしたものだそう。
案内ファイルに従って壁画をみます(長くなり過ぎるので、独断でいくつかの壁画の紹介をはぶきますが)。
詳細について音声ガイドを参照するときは一部をかいつまんで和訳し、青い太字で書きます。
Église Saint-Julien の内観:壁画(神の仔羊と十二使徒)
北側廊の身廊との間の西の端には、アーチの下に神の仔羊と十二使徒が描かれています。
残念ながら、19世紀に漆喰が塗られたため、使徒の数は不完全である。中央には「神の仔羊」。隣に聖ペトロと聖パウロがいる。
楽園の守護者である聖ペトロは鍵を持つ。聖ペトロに続いて、髭のない人物は福音書記者聖ヨハネ、そして聖アンデレとX字型の十字架が描かれている。
一方、剣を持つ聖パウロに続いて、大ヤコブの頭飾りは、サンティアゴ・デ・コンポステーラに向かう巡礼者の帽子を連想させるものだろう。
Église Saint-Julien の内観:壁画(栄光のキリスト)
教会の北西の角は、ボーヴォワール(Beauvoir)家の埋葬場所である私設礼拝堂であった。
この一族は、今はなきソルセ(Saulcet)城と、今も残るモンファン城を所有していた。
この部分は、その装飾が最も豊かなものの一つであるにもかかわらず、一番ダメージが大きい。丸天井には栄光のキリストが描かれ、その周りを4人の福音書記者の象徴が取り囲む。
Église Saint-Julien の内観:壁画(福音書記者聖ヨハネと受胎告知)
西側の壁には、窓の左上に福音書記者聖ヨハネの姿を描いた絵が描かれている。エフェソス神殿の大祭司が彼に飲ませた毒の入った聖杯を持つ、髭のない福音書記者ヨハネの姿である。毒を象徴する、聖杯から現れる小さいドラゴンは、ここではもう見ることができない。
その下には、非常に傷んだ受胎告知。聖母の顔は消えてしまったが、ニンブス(光背)がかなりはっきりと残っている。大天使ガブリエルは、彼女の前で聖句(phylactère)を持ち、そこには「Ave Maria, gracia plena」と書かれている。
私には文字が見えませんが、きっとそう書いてあるんでしょう。
Église Saint-Julien の内観:壁画(聖母)
北側廊を東に向かうと、北小後陣には、複数の聖母についてのテーマ(聖母の戴冠、栄光の聖母、受胎告知、イエスご生誕)が描かれています。
<聖母の戴冠>最上部の装飾は、キリストが聖母を戴冠させる様子を表しており、キリストは開いた本を持ち、そこには「Ego sum lux(私は光である)」と書かれている。
<栄光の聖母>後陣には、丸みを帯びたマンドルラで表現された栄光の聖母が飾られている。
聖母は座ったまま幼子イエスを膝の上に乗せている。マンドルラは天使に支えられ、4人の福音書記者の象徴に縁取られている。左からマタイの天使、マルコの獅子、ルカの雄牛、ヨハネの鷲が大きな燭台を持っている。
<受胎告知>左側は受胎告知で、ガブリエルが聖母を将来の救い主の母親と名指ししている。聖母の純潔は、いつものように、二人の間の花瓶に生けられた白いユリによって象徴されている。
<イエスご生誕>右側には、物語の論理的な続きとして、キリストの降誕が描かれている。ベッドに横たわり、幼子イエスを抱きかかえる聖母は、非常に傷んでいる。ベッドの背後には、メイドを思わせる人物が描かれ、右には聖ヨセフが描かれている。
物語の観点からは、この一連の壁画を左から右へ、下から上へと読み解く必要がある。
Église Saint-Julien の内観:柱頭彫刻
ちょっとここで息抜き。柱頭を見ます。
交差部のあたりに愛らしい柱頭彫刻があります。
植物モチーフが中心です。
彩色が不思議とデザインに合っていて
調和しているように感じます。
帽子をかぶったおじさんもいました。
ああ、少しホッとひといきつけました。
Église Saint-Julien の壁画、次回に続きます。
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