エンカム(Encamp)

2019年9月の旅行九日目、三番目の目的地はEncamp。エル・ビラル(El Vilar)から南西に約11km、車で約14分の道のりです。

ここでの目的は、Sant Romà de les Bons と昼食。

まず向かったのは Sant Romà de les Bons。Encampの町の北東のはずれ、山の上にあります。

Google マップの画像を編集しました

12時に現地で Encamp Museums service の Robert と待ち合わせしてました。

教会の場所を示す表示。

上の写真の場所まで来たは良いが、車をどこに停めたら良いものやら。

悩んでいると若い女性が通りかかったので片言のカタルーニャ語で尋ねると「そこで大丈夫じゃない?」って感じで指差してくれました。素直に従い、右折。向かって右の建物のかげに停めました。

ここから教会へは、歩いてすぐ。

山の上のロマネスク教会に向かう道にしては、ちゃんと舗装してあると思ったら、、、
おお、これこれ。ロマネスク教会への道は、やっぱ、これでしょ。

のぼると、視界がパアッと開けました。

そこで待っていてくれたのは、優しい笑顔の Robert と、犬。

教会の北側。Robert は写っていませんが、犬が写っています。

この犬の名前は、mel。蜂蜜という意味です。人なつこくて、かわいいんだ、これが。

Robert は地元と愛犬とロマネスク教会が好きな愉快な人で、このブログを読んでくれたそう。ロマネスク教会って良いよねと話すうちにどんどん親しみがわいて、それはもう、楽しい時間になりました。

見学は、まず、教会の中から。

教会の北西側。主扉口の前に16〜17世紀に増築されたポーチがあります。

主扉口へ。

ポーチの手前から主扉口を見る

ポーチの中は、開放感があって気持ちが良かった。

ポーチの中から南西を向く

昔は地区がもっと細かくたくさんに別れていて、それぞれに教会があったけれど、統廃合が行われて教会も地名もだんだん使われなくなっているんだそう。

例えば、この教会 Sant Romà de les Bons は、かつては Les Bons という村の教会として聖ミサが行われる場所だったわけですが、Encamp に統合されて、ここでは聖ミサは行われなくなり、Les Bons という村の名称も住所に使われなくなった由。

Robert が持って来てくれた鍵。

好きなのよね、教会の大きな鍵。

主扉口も、素朴で、良い感じ。

主扉口(西扉口)。ギザギザのアーチは12世紀のロマネスク様式。

早速、中へ。

主扉口

中に入ると、樽型の丸天井。

西側を背にして後陣を向く

教会は一身廊、一後陣。12世紀の建築で、岩の上に建築されているため床は岩。

祭壇の周りの床

祭壇を背にして西側を向くと

祭壇を背にして西側を向く。ポーチにいるのは、Mel 。

西壁(主扉口の上)にある祭壇画は Sant Romà の生涯を描いた16世紀のゴシック様式。この教会は Sant Romà に捧げられています。

聖ロマヌスは4世紀初めにアンティオキアで殉教した聖人ですが、Robert は拷問されて舌を切られても話した人だよ、と言ってました。

石で造られた祭壇の中からは、1164年1月23日にウルジェイ(Urgell)の司教によって奉献された記録が見つかりました。

10cm x 15cm ほどの小さなもの

また、祭壇の中からは、さらに小さな聖遺物箱も見つかっていて、サンタ・コロマにある Espai Columba で保管され、展示されています。

話が前後しますが、私は昼食後に Espai Columba に行ってその聖遺物箱を見ました。おお、これか!なんて言いながら。残念ながら撮影禁止だったので画像はありませんが、てのひらサイズの素朴な木箱でした。

イメージをお伝えするため、よく似た別の聖遺物箱をセウ・ドゥルジェイ(Seu d’Urgell)の 司教区美術館(Museu Diocesà d’Urgell)から。

Museu Diocesà d’Urgell に展示してある別の聖遺物箱。てのひらに乗るほど小さい木箱です。

話を見学に戻します。

教会に入るなり目に飛び込んで来るのは、やはり、壁画。

16世紀のゴシック様式の壁画と、

16世紀のゴシック様式の壁画

12世紀のロマネスク様式の壁画があります。

後陣の窓の周りのロマネスク様式の壁画は複製で、オリジナルはバルセロナのカタルーニャ美術館に移設されています。

Museu Nacional d’Art de Catalunya, Barcelona で、2019年9月5日に撮った写真をご紹介。

カタルーニャ美術館に移設されている壁画(12世紀)

サンタ・コロマの壁画との共通点が多いことから、サンタ・コロマの親方の作品と言われています。

確認できるのは、向かって左から聖母マリア、聖ペトロ、聖パウロ、聖ヤコブ。

聖ペトロがすごくないですか?

カタルーニャ美術館に移設されている壁画(12世紀)、部分

この髪、この耳、このまぶた。ちからづよい表現力に、やられました。。。

なお、祭壇の下に残る壁画はオリジナルです。

素朴な祭壇
壁画(オリジナル)

天井も壁も、とにかく壁画だらけなので、細かく見ていると、実に興味深いです。

興味深い壁画

外から眺めようと教会から出ようとすると、主扉口には番犬のように Mel が。

この、耳のたれ具合が愛らしい

そうっとポーチに行って「番犬っぷりを写真に撮らせて」と頼むと目線をこちらにくれました。

番犬、Mel

見学再開です。

後陣が美しい。

教会の南東側

こうして見ると、岩の上に築かれていることがよく分かります。

教会の東側

Sant Romà de les Bons。山の中の岩の上に築かれた小さな教会です。12世紀の壁画はバルセロナのカタルーニャ美術館に移されていますが、現地の教会では部分的に残るオリジナルの壁画、素晴らしい眺望、素朴な石積みと美しい後陣が迎えてくれます。

見学を終えて車まで戻るとき、Robertたちと一緒でした。

中世の家並み

抜け道をくぐると

うれしそうに先頭を進む、Mel

そこには、たばこの葉を乾燥させている職人たち。

頼んで写真を撮らせてもらいました

アンドラには長いこと、これといった産業がなくて、たばこの生産が貴重な収入源だったんだよね、とRobert。

そんなアンドラですが、税率が低いことから、IT長者やユーチューバーなど、高額の所得を得ている人たちがどんどん移住してるんです。だって、スペイン、イギリス、フランスでは45%〜50%も納めないといけない所得税が、アンドラに住めばたった10%になっちゃうんだから。そりゃ、移住するよね。

そんな移住者たちと地元の人たちとが暮らすアンドラが、これからさらに、文化や自然に恵まれた特性をいかしてくれたら良いなと期待しちゃいます。

さて。

車を停めた場所には泉があるんですが、

人間はこっち、犬はあっち、なんだそう。

冷たくて美味しい水でした

楽しいガイドに感謝して、Robert と Mel に別れの挨拶をしました。

さて、昼食です。ここに行きました。

Borda Vella
Av. Príncep Benlloch, 22, AD200 Encamp
+376 831 308

食べたのは、こういうの(二人分です)。

アミューズ
前菜
私の主菜(写真を撮る前に、手をつけてしまった。。。)
夫の主菜

美味しかったです。おしゃれな店内で、周りのテーブルには地元のビジネスマンっぽい人たちがたくさん。

教会にも昼食にもすっかり満足し、駐車場に戻る道すがらスーパーで食材の買い物(夕飯用)をして、Encamp を後にしたのでした。

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