セリェ(Cellers)

2019年9月の旅行二日目、二番目の目的地はCellers。バルセロナから北西に約105km、車で約90分の道のりです。

ここでの目的はSant Celdoni i Sant Ermenterという修道院。

直接現地に行くのではなく、Cellers の西8kmの場所にあるトラ市役所(Ajuntament de Torà)で待ち合わせです。事前に教会が開いているかを問い合わせたところ、丁寧な返信をもらいました。そして Ajuntament de Torà 前で9月5日の17時に文化遺産評議員が待っているとのことでした。

なんと光栄

うれしい一方、言葉が不自由なことが不安で、予め正直に「カタルーニャ語でメールしていますがグーグル翻訳に頼っており、実は話せません。できれば英語で話させてもらえると助かります。」と打ち明けておきました。

市役所の近くにあるBar Restaurant Trevolでコーヒーを飲んでトイレを借り、そのまま店の前に車を置いて、歩いて市役所へ。

16:55に到着し、ほお、これが市役所か、かっこいいなあ、と写真を撮っていると、中から人が。

出てきたのは市長。さらに文化遺産評議員も。知的で真面目そうな市長さんによる運転兼通訳、笑顔がお茶目な文化遺産評議員さんによる案内で、現地へ行く事になりました。

なんとVIP待遇

舗装していない道を通るから四輪駆動が良いとのことで、市長の車に全員乗車し、砂けむりが舞い上がるような乾いた砂の道を16分くらいかけて移動。右手に見えてきました。

ハンドル握る市長さん、助手席から修道院教会を見つめる文化遺産評議員さん

文化遺産評議員さんが Sant Celdoni i Sant Ermenter の詳細が載っている大きい本を持って来てくれてたので、写真に撮らせてもらい、読みました。

本によると、修道院に関する最初の文書記録は986年。しかし、この当時の建物の遺構は確認されていません。二番目の記録である1038年の文書には、神と聖母マリアに仕えることを条件としてGuillem、Seniofred および Galid という名の三人の修道士にこの地の教会が与えられたことが記されています。

現在の建物は11世紀に遡り、三つの後陣、地下聖堂と身廊によるラテン十字の教会を建てるプロジェクトが開始しました。しかし、12世紀にプロジェクトが放棄されると、聖堂は三つの後陣のスペースに限定されたまま、ファサードで閉じられました。

13世紀から14世紀にかけて上部が完成。15世紀から17世紀にかけて小規模な改修が行われ、18世紀には付属する建物をつなぐ工事が行われました。19世紀から20世紀にかけ、カタルーニャ地方に高まっていた建築運動によって大きく改修されました。

どうやら、19世紀から20世紀にかけての改修はネオロマネスク様式で行われたようなんです。

本に載っていたフロアプランです。

本に載っていたフロアプラン

ね、身廊の無い、変な空間でしょ。三つ葉のようなのが教会で、その西が元修道院(現在は住居)。

さて、見学です。

教会に近づきます。

門が見えました。

東側にある門から入ります

門の西(向かって左)にある建物は、現在は人が賃借しています。

市役所に事前に問い合わせると、もし賃借人が可能であれば賃借人が、もしこの教会担当の司祭が可能であれば司祭が、教会のカギを開けてくれる場合もあるそうです。私が訪ねた時は、賃借人は不在。司祭も担当している別の教会での葬儀のため不在でした。

門を入ると、右が教会、左が元修道院。

教会の主扉口の前に立って上を向きました。

ファサード上部のモノフォラと鐘

主扉口。これは近代の改築部分です。

教会のファサードにある主扉口

主扉口、オープン!

入ります。

主扉口を入るとすぐ、聖水盤。

主扉には1760年と刻んであるんです。18世紀のものらしい。

主扉口を開けて正面を向いたとたん、目の前は地下聖堂と内陣。

階段の上に内陣。正面のトンネルが地下聖堂への入口

北側に移動して聖堂内を眺めます。

内陣の手前に剣と植物が組み合わされた装飾がありますが、植物はナツメヤシだと思います。市長さんによると、イエスがエルサレムに入城した日(新約聖書『ヨハネによる福音書』12章 )を敬って、復活祭の一週間前の日曜日に聖ミサを行うそうです。

ファサードには、現在の出入り口とは別に、うめられた出入り口があるんです。

北側から、主扉口を振り返ります。ほら、壁にあとがあるでしょ。

さて、お楽しみの地下聖堂へ。もともと、修道院の名前の由来になっている聖人たち(Sant Celdoni と Sant Ermenter)の聖遺物が収められていた場所だそうです。

わお。

地下聖堂

祭壇の手前には、四角い枠みたいなの。

洗礼盤ぽい四角の四本の柱には、それぞれ、印象的な柱頭彫刻がありますが

特に祭壇の両脇にある二つの柱頭が、すばらしい。

祭壇の近くの柱頭

祭壇の近くに立って入り口を向きます

後陣を背にして入り口を向く。北側の柱頭
後陣を背にして入り口を向く。南側の柱頭。

祭壇の両脇の柱頭のうち、南の柱頭を外側からみると、すごい顔が。

どーん。

これにて内部の見学は、終わり。

外に出て、ファサードをもう一度みましょう。主扉口の向かって左に、ロマネスク装飾のあとと入り口の痕跡。

主扉口の向かって左(北)にはもともとの出入り口のあと

修道士が地上階に降りてこなくても修道院と教会を行き来できるよう、高い場所に渡り廊下があったそう。

門を出て西に行き、建物全体を見ました。

今度は、東に行って建物全体を。

教会の後陣

大満足で出発すると、市長さんが途中で車を停めてくれました。

「写真を撮りたいですか?」

一番写りの良い場所をよくご存知で

Sant Celdoni i Sant Ermenter、地下聖堂の柱頭彫刻が圧巻です。

市長さんと文化遺産評議員さんに深く感謝しながら、2019年9月の旅行二日目のロマネスク見学は終了。

予約していたセルベラ(Cervera)という町のアパートメント・ホテルに車で40分ほど移動してチェックインしました。

宿の近く、市役所(Paeria de Cervera)

Apartaments L`Ametller
Carrer Major 41, Cervera, 25200

宿の前の通りCarrer Major
アパートのエントランス

寝室二つ、風呂トイレ二つ、洗濯機つき台所一つ、リビングルーム一つで二泊総額€200。近所のスーパーで夕食と朝食の材料を買い、部屋食。

生ハムは真空パックもありますが、店員さんにスライスしてもらった切りたての方が、美味しい気がします

美味しくワインを飲みながら良い夜を過ごしました。

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