2019年GWの旅行七日目、五番目の目的地はCastelnuovo dell’Abate。サン・クイリコ・ドルチア(San Quirico d’Orcia)から西に約23km、車で約28分の道のりです。
ここでの目的はサンタンティモ修道院(Abbazia di Sant’Antimo)。超有名で、大勢の観光客が押し寄せる場所です。
撮りたい写真があったので、撮影できる場所を事前にグーグルマップで確認して挑みました。
絵に描いたような、美しい佇まい。ため息がでます。
私が車を停めて撮影していると、後から来た人たちも次々と車を停めて撮影していました。きれいですもんねえ。
車は道の上にある駐車場にとめ、パーキング・チケットを買って車内に提示しました。
向かって左の柱頭のライオン。曲線が魅力的。
入り口の掲示
教会の中に入ります。
マトロネウムと高窓があり、三層になっています。
マトロネウム(Matroneum)は建物内部の中2階に作られた空間で、もともとは女性用に作られた場所でした。
西扉口から数えて二番目の柱に、有名なカベスタニーの柱頭があります。
獅子の穴の中のダニエル(旧約聖書の『ダニエル書』6章)はおなじみの題材ですが、こちらのは獅子が多めで強そう。いや、本来、獅子は強そうで当たり前なんですがね、ロマネスク彫刻では時々かわいらしい獅子がいるもんですから。
西扉口を入って左にみやげ物売り場があります。
その店番によると特定の場所にはガイドツアーでのみ、入ることができます。次のツアーは約二時間後ときいて、私はあきらめました。
代わりに本を買いました。こちら。
この本によると、数多くの遺物が見つかっていることから、この場所には古代ローマのヴィッラ(villa)があったようです。そこに小礼拝堂(oratory)が造られました。そして導水路によって豊かな水の恩恵が受けられたこの場所に、8世紀末頃、修道院が開設されました。
修道院の創設にシャルルマーニュ(カール大帝)が関与したという伝承があります。
伝承によると、781年、ローマから帰る途中で臣下や兵士が疫病にかかったため、スタルチア渓谷で祈りをささげました。すると天使が現れて「近くの丘に登り、空中に矢を射なさい。矢の落ちた場所の草を焼き、粉にしたものをワインに入れ、病人に与えなさい。」と言ったのです。疫病は、この奇跡のハーブ(チャボアザミ)のおかげで治まりました。
ローマで聖アンティムス(イタリア語:Sant’Antimo)と聖セバスティアヌスの聖遺物を得ていたシャルルマーニュが、この修道院の建設を助けたと伝わっています。
そういえば、今、修道院の薬局では伝統製法に基づくハーブ関連製品を販売しています。食べ物やボディケア商品はもちろんのこと、チャボアザミのエッセンスを使った「サンタンティモ・ビール」が絶賛販売中です。
シャルルマーニュ気分が味わえるかもしれません。
12世紀初め、新しい修道院教会が建設されました。新しい修道院教会を含め、ベネディクト会の形式を踏襲して造られた修道院の、当時のフロアプランが本に載っていました。
12世紀に建てられた新しい教会は、イタリアにとどまらず、他の欧州地域のロマネスク様式の特徴を持っています。
周歩廊と放射状祭室を持つプランは、フランスでよく見る特徴です。さらに欧州各地に作品を残したカベスタニーの「獅子の穴のダニエル」の彫刻があることも象徴的です。その一方で、鐘楼などはロンバルディアの建築様式の特徴を持っています。
12世紀初めに新しい教会が建設されましたが、それ以前の修道院教会も現存しています。場所は上のフロアプランでいうと「a.」の部分。カロリング礼拝堂(Cappella carolingia)と呼ばれています。ここにはガイドツアーでしか行けないんです。約二時間後と言われて私はあきらめ、本に掲載されていた写真を見て心を慰めました。
さて、教会の見学に話を戻します。
南側廊。
カロリング礼拝堂(Cappella carolingia)に通じる扉だと思うんですが、見た瞬間、とろけました。
この、ぐるぐるの中にいる鳥たち、どれだけ愛らしいことか。
あやうく、頬ずりしそうでした。
この扉の側の近く、12世紀の新しい教会の内陣の下に、地下聖堂があります。最初の小礼拝堂(oratory)だったかも知れない場所です。
地下聖堂はこうなってます。
この階段の近くに周歩廊があります。
イタリアで周歩廊って、特にこれだけの規模でしっかり放射状祭室付きともなると、数少ないと思います。
こちらの教会は、中だけでなく外にもお楽しみがあります。
まずは、東側。
石積みがすばらしい。
12世紀に造られた新しい教会の装飾も楽しいです。
教会の外のお楽しみは、尽きません。
鐘楼を見ると、いろんなのが居ます。
次に、北側。
北扉口。再利用品の寄せ集めみたいな感じですが、モトが良いから、仕上がり上々。
最後に、南側。
ファサード(西側)を通り越し、南側へ。
サンタンティモ修道院(Abbazia di Sant’Antimo)。トスカーナ・ロマネスクの至宝です。
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