2018年9月の旅行三日目、最初の目的地はSoussey-sur-Brionne。ヴェズレー(Vézelay)から東に約75km、約1時間の道のりです。
目指すはサン=ジャン礼拝堂(Chapelle Saint-Jean)。
インターネットで得た情報によれば、細く曲がりくねった急な山道を600mくらい登ったところにある森の中の12世紀の礼拝堂で、今はもう使われていないそうです。個人の持ち物だけれど、訪問可とのこと。
念の為、事前に mairie に私が訪問する予定日に開いているか、何時から何時まで開いているか、をメールで問い合わせましたが、回答はもらえませんでした。個人の持ち物ってことで mairie の管理じゃないはずだから、当然かも。
行くと決めてからも私はずっと、本当にたどり着けるのか、たどり着けても礼拝堂の中に入れるのか、ひどく不安でした。山登りして、無駄足なんてことになったら、すごく残念なもので。
Soussey に着いて、くるりと周回して駐車場を探しました。とても小さくて静かな村(Wikipédia によると人口147人)でした。
路上駐車しました。
こんな風に路上駐車したのが9:30頃。
上の写真の中で左ナナメ上へ行く道が礼拝堂への道と見当をつけ、虫除けスプレーを大量に身にまとって、登山を開始しました。
坂がもっと急になりましたが、深呼吸をしながら登りました。
礼拝堂は、まだか?(というか、ホントにこの先にあるのか?)
道がなだらかになった場所で、右を見ると、牧草地が広がっていて牛がたくさん。
目があっちゃいました。
牛を見て一息つきましたが、礼拝堂はまだ見えません。さらに上を目指して登ります。
おや?
葉っぱの間に、石積み。
礼拝堂、ありました。
ずいぶん長く歩いたと感じていましたが、登山を始めてから12分しか経ってませんでした。
見えているのは礼拝堂の北側です。
上の写真を撮影した場所から少し西に移動して撮影したのが下の写真。
さらに西側に移動して撮影。
西側、ファサード(façade)の扉口(portal)は、こうなっていました。
façade中央には神の子羊
中に入れるのかどうか、気になってしょうがなかった私。
はやる気持ちを押さえきれず。。。一人で、この鉄柵、重そうねえ。開くのかしら?と引いてみました。
すると鉄柵が倒れて来たんです。
私は、とっさに頭と手で鉄柵を受け止めました。夫にしてみれば、「たすけてー」と声のする方を見ると、妻が鉄柵を頭に乗っけてたわけで。まことに、情けない。
これから来られる方、この鉄柵は壁に取り付けてないんです。
壁に立てかけてあるだけ。
ご注意ください。
鉄柵を手前に倒して、中に入ってみました。
本当に小さい礼拝堂です。
内部を南側、正面、北側の順に動画で撮影しました。こちら。
静止画でお伝えすると、奥の、聖職者用の空間はこんな感じ。
礼拝堂の中はすごく暗かったので、フラッシュなしで、とにかく写真を撮りました。
中の様子を分かり易くするために、礼拝堂の中については、撮った写真の明るさを調整して掲載します。
手前の、信者用の空間も一部フレームに入れて撮影しました。
手前の信者用のベンチは、左右に四つずつ。これでスペースがうまってます。ほんっと、小さい。
下の写真は向かって右(南側)。
下の写真は向かって左(北側)。
南側に牛の柱頭彫刻があります。素朴で力強くて、素晴らしい。
彫刻の部分を拡大。
さらに拡大。ヒゲがある人が子供を抱いてる?
別の角度から。笑顔が幸福そうです。なんと愛らしい。
北側に羊の柱頭彫刻。こちらも、良いですねえ。
拡大。
角度を変えて拡大。ぐるぐるっと巻いてるやつとか、羊の横顔とか、もう、たまりません。
フレスコ画の跡があります。アーチの間のやつ、花模様でしょうか、かわいい。
外に出て、東側の持ち送りの彫刻を見ます。
こちらの方が登りやすそうです。
南側に行きました。屋根の上は草ぼうぼう。
持ち送りは、植物装飾や
幾何学模様
動物など、かなり味のある作風で、私が大好きなやつです。
装飾の拡大、その1
装飾の拡大、その2
装飾の拡大、その3
礼拝堂の中の柱頭彫刻も愛らしいのですが、現地では暗すぎてよく見えませんでした。撮った写真の明るさを調整して初めて詳細がわかって身もだえした次第で。
でもこの持ち送り彫刻は、現地で実物を間近に見られました。この愛らしさに、一発でやられちゃいました。
一通り礼拝堂を見た後、私は近くの草むらを調べました。泉があるはず。
これかな?
たぶん、これです。礼拝堂の西20mくらいの場所にありました。
言い伝えによれば、病気の子供を持つ若い母親が子供のオムツを泉に投げ入れたんだそうです。そして、オムツが浮かんだら子供が治ったんだとか。
礼拝堂の近くから歩いて泉に行く動画を撮影しました。こちらです。
この礼拝堂、12世紀に建築されたってことは、900年近く前です。当時の人たち、こんなに素晴らしい空間を造って、祈りを捧げていたんです。私は幸福感のおすそ分けをもらったような気持ちになりました。
愛らしい礼拝堂をひととおり見学できて、私はもう、大満足。
鉄柵を元通りに立てて荷物をまとめ、山道を下り始めました。
来る時は本当にたどり着けるのか、たどり着けても礼拝堂の中に入れるのか、すごく不安に感じながら登った道でしたが、帰りは足取り軽く鼻歌まじりでした。たんこぶは少し痛みましたが。
眺めも最高。
廃墟になって既に年月が経っており、いつまで形を保っていてくれるか分かりません。
森の中の、小さな礼拝堂でした。
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