サン・マルタン・ドゥ・カニグー修道院、続きです。
ロマネスク初期の造りが確認できる、地下聖堂(crypt)に行きます。
まぶしい光が溢れていたハーブ園や中庭から crypt に来ると、その違いに驚きました。全く空気が違います。静かで落ち着いていて、安らかな空気。
三廊式の細長い造りです。
奥に進むと、修道士さんがこちらを向いて話し始めました。
西暦1000年ごろ、6本の円柱に支えられた crypt が造られました。6本の円柱のうち4本を石の補強で取り囲んでいます。これは、当初の計画が建築中に修正されたことを示すそうです。
円柱には、控えめな装飾があります。
静かで落ち着くので、私は crypt 好きです。
crypt を出ると、修道院付属の教会へ行きました。
修道士は神をたたえるため、教会に集まって昼夜ミサや祭式を行います。教会内部は写真撮影禁止です。ゆっくり見てまわると、十分な広さがあるのに、素朴で親しみや温かみを感じるのが何とも不思議。
上に位置する教会と crypt の構造は似ています。どちらも身廊の両側に一つずつ側廊がある長い三廊式で、石造りの円柱とヴォールトの組み合わせで造られていて、初期ロマネスクの記念碑的建築で。。。ほんとに、こんな山の上に、よく造ったなあと思います。
教会を出て、上の回廊(cloister)があった場所に来ました。11世紀に造られた回廊の上に、12世紀末から13世紀初めにかけて別の回廊が造られたんですが、現在はテラスが残るのみです。
その、上の回廊があった場所から柱頭彫刻がある回廊の屋根が見えます。魚のウロコみたいで、いい感じです。
上の回廊があった場所から、鐘楼に向かいました。
鐘楼の手前で修道士さんが立ち止まって話し始めました。ちょうど、写真のオレンジ色のひさしがある辺りです。ひさしの下、岩に掘られた細長い穴が二つあるんです。
西暦1000年頃、この場所に修道院を建てた伯爵が、晩年に修道士になり自分で掘った墓だそうで、もう一つの方は伯爵夫人の墓と考えられているそうです。
穴だけになっているのを見て、どこか別の場所に遺体を安置したのかと思い、能天気な私は修道士さんにきいたんです。すると、遺体は略奪され、どうなったのか分からないとのこと。。。その墓穴は写真撮影禁止では無かったのですが、なぜだか撮影する気持ちになれませんでした。
鐘楼は、時を刻んで祈りを促します。1026年に完成しました。ロンバルディアからカタルーニャに伝わった初期ロマネスク建築の特徴があります。床(底辺)の形は正方形。開口部の上部は半円形で、特徴的なブラインド・アーチと付け柱(pilaster)で装飾されています。
鐘楼の屋根は、元々はピラミッド型だったらしい。1423年に起きた地震で崩れてしまい、修復時にギザギザ型に変えられたそうです。
写真の中で、停めてある車は小さい四輪駆動車ばかりですよね。すごく細い山道なので、ここに登ってくることができるのは、こういう車種だけです。私にしてみれば、これらの小型車ですら、よく昇って来れたと思います。山道の狭小さがすごいので。
ふもとの村 Casteil からこの修道院へは、1.6kmの道のり。高さ300mを登る山道です。予約をしてお金を払えば、小型四輪駆動のタクシーで登ってくることができます。実は私、利用を少し考えたんですが、歩いて登って良かった!と、強く感じました。
美しい山々の眺めを楽しむことができたし、1000年以上前に、この場所に修道院を建てることを考えた人や、建てるために石を加工したり積み上げたりした人の気持ちに思いをはせることもできたように思います。
良いとこに来たもんだ、と大満足して、足取り軽く下山しました。
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初めまして。ワタシも4年前に訪れました。ワタシも自力で登って良かったと。懐かしいです。
ニイガタノタナカさん、ご訪問とコメント、ありがとうございます。先輩経験者でしたか!やっぱり、自力で登るの、良いですよね~。
私は旅行前は、この修道院が一番の目当てだったんですが、行ってみると他にも衝撃的に素晴らしい所がいっぱいありました。もう、全部が懐かしい。。。ブログに書きます。どうか気長におつきあいください。